なれずし探し近江の旅09 10月7日 闇に包まれた木ノ本で食堂酒をやる

琵琶湖周辺でいちばん好きな木之本


朝一番、琵琶湖畔で魚すくいをする。
滋賀県今津から熊川宿を越えて小浜に出て、気になるところを見ながらふたたび滋賀県に帰ってきた。
かたっぱしからスーパーに寄って、直売所も巡り、人に話を聞いた。収穫がありすぎる往復で知識のゲップがでるほどだった。

いつのまにか夕闇が迫ってきていた。
桓武帝を考える上でも、ぜひ寄りたいと思っていた塩津浜港を断念。久しぶりに歩いてみたいと思っていた木ノ本、北国街道も真っ暗だった。
この日の最終地点、木ノ本駅の駐車場で、途方に暮れていたら、地元の方に駐車料金は無料であることと、ご飯が食べられる店を教えて頂く。教えてくれた方、ありがとう。

北風が冷たく、闇が重く感じるほど濃い中、駐車場から歩いて数分のところに灯りが見え、暖簾らしきものが揺れているのを発見した。
引き戸を開けると子供が椅子席にちょこんと座っている。
湿度の高い店内がいい感じで、厨房の端、奥の方で湯気がもくもくと上がって白い。
そこに晩ご飯が運ばれてきて、店のオバアチャンが前に座って話こんでいる。
ここの子供らしい。
ボクは、店の子供が店内でご飯を食べているような、飾りっ気のない店が大大大好きで、この店は大当たりだと確信した。

おでんがあればまずはおでんなのである


朝からちゃんと食い物を食っていなかったので、子供のオバアチャンらしき人に聞かれて、すぐくるはずのおでんをお願いする。
すぐに酒でもよかったけど瓶ビール。
おでんは、平天(西の本ではもっとも基本的な天ぷら)、豆腐、牛すじ。
関西以西にきたら何が何でも牛すじなのだ。
おでんのだしが、少し変わっている。鶏ガラの風味が強い。
その上、この汁たるや汁だけでもおいしくて、まるでおでん鍋の主のようだ。
牛すじのおいしさに涙ポロリで、豆腐の温かさに和み、平天に我に返る。
近年、食堂酒が好きだけど、今回の食堂酒は食堂酒の最高峰かも知れない。

まさかおでんとをお代わりするなんて


思い切っておでんのお代わりをする。
今度は、こんにゃくに玉子に、またまた牛すじ。
ここでくどくど書くと、久住昌之めいていていやだけど、いやーんになるくらいいい味である。
なんならおでんの具になってこの店のおでん鍋の中で泳ぎたい。

なぜか東近江の喜楽長だった


酒をお願いする。
冷蔵庫の中から取り出されたのを見たら、ここ木ノ本の酒ではなく、東近江市の「喜楽長」である。
熱燗をお願いすると厨房の方で湯気が上がる。

鶏肉の何か、が非常においしい。なんだろう?


冷蔵庫のおかずの中から「鶏肉とレバーの何か」、としらす下ろしをお願いする。
ごっつう熱い「喜楽長」が非常にうまい。
しかも、しらす下ろしは普通にしても、「鶏肉とレバーの何か」、が普通ではない。
実に完成度の高い味で、バランスのいい味つけにソテーしたような香ばしさがある。
もしもボクがここに住んでいて、再三再四ここで飯を食っていたら、必ずお願いする一品になること間違いなしといった味である。

ラーメンも独特で、他にはないものだった


終いにラーメンをお願いする。
テーブルに置かれるとすぐに鶏ガラの香りを感じた。
スタンダードなラーメンではない。
色合いの薄いスープにチャーシューではなく豚肉が泳いでいる。赤い蒲鉾にもやしにキャベツで麺は完全に沈んでいる。
スープを飲んで、この店の特徴が鶏ガラで、鶏なのかも知れないと思った。
麺はやや細麺でこの麺自体も悪くない。
非常にボク好みのラーメンで、終いに残ったスープまでもがうまい。

寒くて忙しい日の最後がこの店とは、なんとも「お後がよろしい」ことか。


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