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コラム

田辺聖子の大坂風すき焼きを作ってみた

学校に上がるために上京したので、東京暮らしも半世紀になる。「すき焼き」は湯島や浅草で割り下(酒・砂糖・みりん・水などを合わせたもの)で煮て作るものをよく食べに行っていた。故郷でも「すき焼き」を作っていたが、たぶん湯・砂糖・少量の酒の中で牛肉と野菜を煮て食べるというものだった。田辺聖子の『春情蛸の足』(田辺聖子 講談社文庫)の「人情すきやき譚」に大阪風の「すき焼き」が出てくるが、食べたことがない。液体で煮るのではなく、最初は焼いて作る「すき焼き」である。大阪に電話(ケータイ)して、作り方を聞いた。材料は牛肉、焼き豆腐(我が家にない)、ねぎ、春菊(ない)、白菜(夏なので買わない)、糸こんにゃく、焼き麩で、玉ねぎもいいよ、だった。まずは鉄鍋(捨てたばかりなのでないのでステンレス鍋)で牛脂を炒めて、脂を出す。ここですき焼き用の牛肉を焼く(ソテー)。上から砂糖をたっぷり振りかけて砂糖が溶けたら醤油を回しかける。いきなり牛肉を食べる。
料理法・レシピ

カルパッチョは超簡単。だれで作れる

カルパッチョくらい簡単な料理は他にないと思っている。本来はイタリアローマの肉料理で、魚料理にしたのはこの国かも。材料さえあれば、作ろうと思って数分で出来上がる。いちばん難しいのは魚の身を薄く切ることだけど、きれいに切らない方がおいしいのだから、恐れることはない。今回、ちょっと贅沢にアオダイで作ったけど、本当は生で食べられる魚ならなんでもいい。使った材料はオリーブオイルと塩とにんにくがメインであとは、冷蔵庫にあるものでいい。要するにオリーブオイルとにんにく、塩の上にアオダイを敷き詰めて、後は絵を描くように作りあげていくだけ。ハーブはあった方がいいけど、絶対にではない、トマトや果物があるととってもいい。今回は近所で手に入れたレモンバジルにトマトにキウイで、にんにくが効いたアオダイに味の彩りを添えてくれる。見た目にもゴージャスだけど、簡単というのがいいのだ。それにしてもアオダイの身の、味の濃さというか強さが凄い。特異なものではなく非常にありきたりな、上品なうま味だけど長く舌に残る。ベースの味にキウイの甘酸っぱさ、トマトのうま味で多彩な味の競演が楽しめる。まるで協奏曲のような味だ。
加工品

大坂、天満屋の「さば削り節」でみそ汁

大坂市中央卸売市場本場関連棟、天満屋で多種類の削り節を買った。削り節は冷凍保存なので、大阪旅に備えて冷凍庫の整理をした。さて最初は、「さば削り節(ゴマサバ)」だしでみそ汁を作る。一年を通じて昆布だし(日高昆布/ミツイシコンブ)をとっているので、昆布だしを火にかけて、細かい泡が見えてきたら、「さば削り節」20gを加える。あくを取りながら、沸騰直前に火を止めて、こす。これが基本的なだしの取り方だと思っている。だれにでもできる簡単な方法である。
コラム

聖子を探す旅12 神戸市、東山商店街で食べる

1928年(昭和3年)、田辺聖子は大阪府大阪市福島の商店街で生まれ、兵庫県尼崎市出屋敷、兵庫県神戸市異人館通り、同市湊川神社上、そして兵庫県伊丹市と居を移している。ある意味、田辺聖子は摂津のエトランジェである。湊川神社上(山に近い方が上、海に近い方が下)に住んでいたので、湊川の市場と隣り合わせの東山商店街にも来ていたはずだ。初日の東山商店街は雷と豪雨でうどんを食べて早々に退散する。2日目はゆっくり歩いてみる。魚屋は少ないがとてもいいものを置いてあり、野菜が安く、総菜類が多彩、製麺屋まである。不自然ではないときに声をかけると、意外に社交的な人が多く、ご飯(過去の食生活)に関してもいろいろ聞けた。学徒動員を経験した人は、今回ゼロは当たり前だけど、1945年以前生まれも2人しかいなかった。結局、今回探している情報にたどり着くのは無理とみた。
コラム

聖子を探す旅 目次

田辺聖子を巡る旅は改訂・追加を繰り返していく。・聖子を探す旅01 JR伊丹駅の前は荒木村重の有岡城本ページ・聖子を探す旅2 伊丹市町歩き・聖子を探す旅3 伊丹市の酒蔵・聖子を探す旅4 伊丹市の商店街・聖子を探す旅5 突然途中下車、谷崎潤一郎の岡本・聖子を探す旅6 王子公園駅改札口前、ぽーとでいきなりワンタン、中華丼・聖子を探す旅7 三宮は土砂降りの雨、地を裂く雷・聖子を探す旅8 苦難の果て、東山商店街でうまい酒とうどんにたどり着く・聖子を探す旅9 おごる平家の夢のあと・聖子を探す旅10 商店街巡り、板宿商店街・聖子を探す旅11 商店街巡り、板宿商店街で二度飯を食べる・聖子を探す旅12 神戸市、東山商店街で食べる
コラム

ハマダイは小さくてもうまい!

八王子卸売協同組合、舵丸水産、クマゴロウが伊豆諸島利島沖で若い尾長(ハマダイ)を釣ってきてくれた。ちなみにクマゴロウは生粋の東京人なので、ハマダイではなく「尾長」と呼ぶ。ハマダイは、サイズごとに撮影すべき成長による変化がある魚なのでありがたい。撮影だけではもったいないので、刺身にしてあぶり、焼霜造り(あぶり)にする。刺身は平凡だけど、焼霜造りがやけにうまい。皮が柔らかく、皮の裏側にうま味と脂が感じられる。こんなにおいしくていいのかしら?なんて自問自答してしまうほどおいしい。前回は幼魚のおいしさに感激し、今回は若魚もうまいとびっくりする。釣り人はできれば小さいのは放流した方がいいと思うけど、ハリを飲まれたときなどお持ち帰り願いたい。
コラム

新潟市、越後新川の生物・食物図鑑30 ハモ

新潟県新潟市西区五十嵐新川漁港周辺の生物・食物図鑑を作っていく。新川漁協に水揚げされる水産物は量的には多くないが、多彩であるし、おいしいものだらけである。新川漁港の周辺には磯や護岸もあるし、きれいな砂浜もある。多彩な生物がいて、そんな生き物とふれあえるのも魅力的だ。ハモは広い意味ではウナギの中まで、非常に細長くて、口が大きくて触るだけでケガをする程の鋭い歯を持っている。福島県以南の太平洋側、島根県以西の日本海、東シナ海にいる魚だったが、年々北に移動しています。新潟県で新しい魚だ。
加工品

大坂土産は下処理済みのマダコ

大阪府大阪市の市場にあって、東京の市場にないもの。それは下処理済みのタコ(マダコ)だろう。これを今回は木津市場で買って、自宅でゆでて食べた。いちばん大変な部分を市場任せにした、「ゆでだこ」は苦労して自分で処理してゆでたものよりも遙かにおいしい。明らかに大坂のタコ文化のすごさゆえだと思う。泉南(貝塚市・泉佐野市・田尻町あたりか?)産だというが、香りがいい。小豆を煮たときのような香りだけど、これがないと「ゆでだこ」の意味がない。タコらしいうま味と、強い食感。食感が強いのにちゃんと噛み切れて、噛めば噛むほどうまい。当然、酒の肴で、酒は同じ大阪府池田市の「呉春 特吟」。
コラム

銚子産のマイワシはてっぺんに近づいている

築地場内(東京市場)の年寄りから「入梅いわし」を聞いたのは、ものすごく前のことで、そのときボクは一眼レフのフイルムカメラを隠し隠し、場内を歩いていたのだが、そのマイワシの写真は撮らせてくれなかった。変わった魚を探していたら、「イワシがいいよ。入梅イワシだよ」と言われたのだ。この言葉が使われるのは千葉県の最東端にある千葉県銚子産のマイワシに対してである。「入梅いわし」は江戸時代、入梅時期に銚子から塩か糠漬けにされたマイワシが戸の町に大量に江送られて来ていたせいだ。当たり前だけど、全国的な言語ではない。ただ入梅の6月になると銚子産マイワシが増えてくることは間違いない。今回の銚子産は、やけにころころしてうまそうだったので買って来た。7月なのに非常に脂の層が分厚い。口入れると噛む前に溶ける。毎年、8月初めになると脂の層がもっと厚くなる。でも、今回くらいがいちばんうまい、気がする。酒の友ではなく、ご飯がすすむ、すすむ。
コラム

京都府舞鶴産小ケンサキの刺身

生まれてほんの数ヶ月程度の小さなイカはあまり味がない。イカだけはある程度以上に大きい方がおいしい。ただ、今現在、もっとも繁殖海域がわからないというか、謎なのはケンサキイカではないか?だから味とは関係なく、徹底的にケンサキイカを買っては測定している。もともと島根県以西はケンサキイカが多かったが、徐々に北上しているのがわかる。さて今回のケンサキイカは外套長さ8㎝から9㎝ほどで、平均すると40gの小イカである。刺身にしても味がないので、皮をむいて1秒くらい湯に通したもの。面白いもので少しだけ熱を通した方が味がある。もちろん成イカの甘さも、イカらしい風味もないが、柔らかい中においしさを感じる。日本酒にはこのような穏やかな味の肴もいいのである。酒は大阪府池田市の「呉春 特吟」で、イカ以上に存在感がある。
漢字・学名由来

魚の呼び名09 徳島県貞光町の「お医者はん」

徳島県美馬郡貞光町(現つるぎ町)、貞光川はボクは家にいるよりも長くいたところだ。ここで魚の名は、地元の子が川で遊ぶ限り、覚えざるおえないものだった。「じんぞく」、「じゃこ」、「どぶろく」などなど。図鑑と照らし合わせて、覚え始めたのは後のことだ。これがボクの水産生物とヒトとの関わりを調べ始めた、始まりである。ナマズに近い仲間(ナマズ目アカザ科アカザ属)にアカザという淡水魚がいる。日本固有種でナマズのような姿をした小さな赤い魚だ。食用とする地域は非常に少なく、ボクの町でも食べていた人はごくわずかだ。ほとんど存在価値のない魚なのに認知度が高いのは、赤くて目立つのと不用意に触ると刺され、ひぇっと声が出るくらいに痛いからだ。
コラム

久しぶりのビワマスを大坂木津で買う

6月、せっかく琵琶湖に行ったのに目的が人だったので、魚が買えなかった。琵琶湖に行くと、どうしてもコイの仲間に目が行き、ビワマスを買う以前にクーラーが満杯になっていたのもある。久しぶりに木津市場(大阪府大阪市浪速区敷津東)を歩いた。昔々の迷路が続く木津の市場は大阪らしくてよかったが、建物が変わり、なんとなく大坂度が落ちた、コロナの影響もあって、今回は大坂度以前に外国人度が高かくなっている。そんな中にも「地味だけどいいもん、置いてますね」という店があって、そのひとつが今回の『鮹仙』だ。木津市場場内で、最初に通り過ぎたとき、これ、当たりだなと思ったものの値段を聞かずに通り過ぎた。二回目に値段を聞いた。妥当なので買った。ビワマスは年々漁師さんの扱いがよくなり、サクラマスとはズレがあるので、存在感を増している。琵琶湖産なので刺身で食べられるのも魅力的である。刺網で揚がり、活けじめなので、早速、刺身にする。サケ科の高級な種はあまり味に差がない。横並びではあるが、今回のものは鮮度も含めて最上級である。久しぶりにサケ科ならではの風味と強い甘味を堪能した。そして最後に、味の濃淡の農が残るのだけど、これが「こく」だ。
コラム

大阪名物、クマゼミの大合唱!

1960年前後、故郷、徳島県美馬郡貞光町(現つるぎ町)で、朝、木戸を開けると、裏山がじゃーーじゃーじゃーっ、というか、しーやぁーーしーやぁーーっ、という低く、重い音を建てていた。「あれは、『おたゆうさん』じゃ」と教わるまで、山の音だと思っていた。声の主、「太夫(たゆう)」とは、ボクの故郷ではクマゼミのことで、セミの中でも特別な存在だった。市街地や家の周辺にもいるのが、ニイニイゼミやアブラゼミで、太夫さんは山に登らないといなかった。子供にもとれるのがニイニイゼミ、アブラゼミで、ミンミンゼミやクマゼミはとれなかった。昼日中はとれるというので、奥(山側にある家)のアンニャにとってもらったことがある。大阪市内市街地ではアブラゼミはほとんどいないのに、クマゼミは木の枝のしだれるほどにとまっている。クマゼミの大合唱は大阪名物のひとつである。木津市場の前で、小学生が虫取り網を持って木を見つめている。とった数を競いあっているのだ、という。見ている間に2匹いっぺんに捕まえた。ボクの故郷のクマゼミとなんとなく声も違うように思えるが、どう見てもクマゼミである。車の行き交う街路樹にも普通に止まっていて、これじゃ「足軽」じゃな、と思ってしまう。蛇足になるが、神奈川県小田原周辺や東京都の多摩地区でも、少ないながらクマゼミの声がする。逆にたくさんいたアブラゼミの声を聞かなくなり、ミンミンゼミが増えていたりする。これも温暖化のせいかのかも?
漢字・学名由来

魚の呼び名08 和歌山県周参見の、おけいさん

ミギマキはタカノハダイ科の魚である。国内海域にいる、この科の魚はタカノハダイ、ユウダチタカノハ、ミギマキで、特徴は、岩礁域(磯)にいることと、関東・新潟から九州まで、台湾くらいまでと生息域が狭いことだ。3種類ともマイナーな魚ではあるが、食用魚で流通する。もっとも流通量が少ないのがミギマキである。さて、和歌山県周参見(現すさみ町)でミギマキを「おけいさん」という。『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929)に〈「昔おけいという女あってこの魚の色彩の鮮明な如く常に濃艶なる装をしてゐたゆえ名づく」といふ。〉とある。ミギマキは口に紅を差し、黄色と黒のツートーンで目立つ。華やかでもある。昔いた、「おけい」という女も派手で色っぽくて目立つ存在だったので、魚の名となった、ということである。「じょろうだか(女郎鷹)」は、女郎(遊女)のように派手なタカノハダイ(鷹の羽鯛)という意味、「みこちょ」も「巫女」からで、目立つからだろう。ちなみに紀州(和歌山県と東紀州・三重県西部)での呼び名が現在まで多く残っているのは、宇井縫蔵(1878年/明治11、 和歌山県田辺生まれ。和歌山県や旧紀州藩の生物を調べ、後に郷土史の研究もする)がいたからだ。また、宇井縫蔵の『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929)の名を分類し分かりやすくしたのが渋沢敬三である。■呼び名目次へ・楽しい魚の呼び名・目次
加工品

大坂、縄幸の焼きあなご

大坂市中央卸売市場本場『縄幸』の「焼あなご」 を軽く焼き直して、わさびと生醤油で食べる。「焼あなご」 には醤油やみりんなどで味がついているが、基本的に様々な料理に使うことを想定しているので、薄味である。別皿に醤油入れて、適宜浸しては食べる。見た目の膨らみどおりに脂がある。味つけはほどよく、実にわさびが合う。ボクは山椒大好き人間なので、振ってはいるが、わさびだけでもよかったかも知れぬ。3本しか買わなかったことに未練残る。今回の大坂旅で買った、大阪府池田市の「呉春 特吟」と出合うとなおうまい。酒と交互に食べて、後口がいいというか、後味が上品というか、重たさがないのがいい。そこがウナギとの違いである。大阪は地焼きのウナギでも有名だが、「焼あなご」により強く大阪を感じるのはボクだけだろうか。大阪土産は「焼あなご」 でいいかも。
漢字・学名由来

魚の呼び名07 お仙さんは江戸時代のアイドル

江戸時代の和歌山県で、なぜお仙さんはスズメダイに殺されたのか?以下はボクの勝手な推理である。スズメダイのことを和歌山県各地、島根県西部、山口県、九州北部と広い地域で、「おせんごろし(お仙殺し)」、「おせんころし」と呼ぶ。「おせんじゃこ(お仙雑魚)」というのもある。「やえだ」、「やはん」、「もなぶり」など和歌山県だけでもスズメダイの呼び名が少なくないのに、なぜ「お仙」が出てくるのだろう。『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929)に、〈水族志曰く「足代浦(現和歌浦近く)漁人云おせんといふ女この魚を食し骨硬し咽腫て死す故に名づくこの魚硬ければなり」と。」〉『水族志』(紀州藩藩医畔田翠山 1827)には、スズメダイの骨が硬い(これは真実だ)ために間違って骨を飲み込むと危険だ、とはあるが、なぜ「お仙」なのか、がない。骨が硬くて危険ということでは、同じ和歌山県田辺市などでイサキの「かじやごろし(鍛冶屋殺し)」がある。「鍛冶屋」は職業であり、力仕事なので屈強なという意味もあるので、「屈強な鍛冶屋でもイサキの骨は硬いので喉に刺さって死ぬ」、という意味でわかりやすい。「お仙」はあまりにも唐突である、がなぜ「お仙」なのか?江戸は明和年間(1764-1772)に持てはやされた、「明和三大美人」のひとりに谷中(現東京都台東区谷中)、笠森稲荷門前の水茶屋「鍵屋」で働いていた「笠森お仙」がいる。明和期はちょうど田沼意次時代、封建制度下にあってもリベラルな時代でもある。ちなみに産業や文化が飛躍し、人々が豊かになるのは、自由主義的な時代であってこそで、松平定信の停滞期を挟んで、黄金の文化文政期となる。江戸時代は急激に情報社会となった時代でもある。江戸時代前半は上方(京都・大坂)の、後半は江戸の文化が日本列島の隅々に伝達される。人気抜群だった「お仙」には、鈴木春信の浮世絵もある。当時の超人気作家、太田蜀山人(南畝)がとりあげたのも大きいだろう。だからスズメダイで殺されたのは、「明和三大美人」のひとり「お仙」と考えている。魚の呼び名にも使われるほど「お仙」は、人気抜群のアイドルだった。ということで、和歌山県の他の呼び名の誕生した年代は完全に不明だが、「おせんごろし」は江戸時代明和期以降だと思われる。■呼び名目次へ・楽しい魚の呼び名・目次
コラム

小田原に行ったら「ごった煮」

漁港などに行くと、「ごった煮」が出てくることがある。兵庫県淡路島では小振りの「あこう(キジハタ)」入りの、ちょっと贅沢な煮つけを食べているが、あれは明らかにお客用であって、売り物にならない魚を集めて作るのが「ごった煮」である。水産生物は選択的にではなく、なんでもかんでも選り好みせず多種類食べる方が自然にも優しく、温暖化にもいい。今回の魚は小田原魚市場、二宮定置で分けてもらったもので、イトヒキアジ、「すみやき(クロシビカマス)」、タカベ、タマガシラ、イボダイの魚類と、サルエビにニヨリミミイカの7種である。比較的薄味で煮てみたら、種ごとに味が違っている。思った以上にそれぞれが個性的である。醤油味の中に種それぞれの味が浮かんでくる。意外や小さなタマガシラの身自体の味がよかった。タカベはタカベの味で小さいのに脂があり、同じく「すみやき」にも脂が感じられる。イトヒキアジはアジ科特有の強いうま味があるし、身離れがいいのも魅力的だった。イボダイは小さくてもやけにうまい。ニヨリミミイカは小さすぎて行方不明になってしまったものの、サルエビの風味が煮汁にも他の魚にも影響を及ぼしている。甲殻類は最小限でもとてもインパクトがあるのだ。まことに「ごった煮」は楽しいのである。
コラム

井内水産の骨切りハモで落とし、とあぶり

やはりハモの本場は大坂、そして京都だと思う。大坂の方がより庶民的、かつ日常的な気がするが、祭り月(6月後半から7月)に大坂・京都に行ったら、ハモは欠かすことが出来ぬ。さて、骨切りしたハモは大阪府や兵庫県ではスーパーでも売っているし、魚屋にお願いすればやってもらえる。できにはばらつきがあるが、格好の土産物そのものだと思っている。今回は大坂市中央卸売市場本場内、井内水産にお願いして、1尾骨切りをしていただいた。水洗いして骨切りをやっていただけると、あとは簡単である。まずは骨切りしたハモを食べやすい大きさに切る。湯に塩を加えて一切れずつ落としていく、白くなってきたら氷水に取り、粗熱をとったらすぐに取り出す。氷水内での時間はできる限り短く、がコツだ。水切りして盛り付ける。梅肉を添えたが、市販の梅肉白(赤く着色していない)と普通に市販されている梅肉を合わせて、みりん、砂糖を加えて練ったもの。やはり、今季3度目の「落とし」だが、プロの骨切りにはかないませぬ、ちゃんと身が開いて美しい。当然骨が当たらず、旬を迎えたハモのわずかな脂を感じる。湯に落とすので「落とし」、湯の中でちりっと開くので、「ちり」だけど、どっちゃでもええ気がする。
コラム

聖子を探す旅11 商店街巡り、板宿商店街で二度飯を食べる

田辺聖子とは関係なくなってしまうが、しばし。神戸市中央市場(兵庫県)で、神戸名物というか神戸らしい食べもののことを聞いた。だれでも知っている「豚まん」、「神戸牛」に「ぼっかけうどん」と「すじ焼き」だという。後者ふたつは、ともにどちらかというと、庶民的というか、日常的なものであるような……。板宿町(神戸市須磨区)の地下鉄を上がった途端に「ぼっかけうどん」の文字を発見する。いきなり名物を食べてもいいのだろうか?しかも立ち食いとは。ここでやめると食べないで帰ることになりそうなので、思い切ってその店『山陽そば』で「ぼっかけうどん」の券を買う。思った通りのうどんではなかった。神戸市のうどんつゆは節でとり、砂糖を甘味に使っているなど、関西特有のものである。四国などでのさっぱりした軽食風のうどんではない。そこに「ぼっかけ」られているのがどうやら、煮込んだ牛すじとこんにゃくらしく、思った以上に脂っこい。煮込みはおいしいし、うどんも悪くないけど、四国人には重すぎる味である。そこに天かすはいらなかった。けっこううまいけど、青ねぎがなかったら胃に触る味かも。考えてみると神戸の食は、やけに上品で洋風なもの、中華の影響を受けたもの、それと肉体労働者的なものがミックスされて出来ているようだ。
コラム

7月のザルガイは初めてで、まさに美味

4月に手に入れたザルガイは殻長55㎜とちょっと小振りだった。今回、鈴木項太さん(項明水産)に送って頂いた、7月半ばの個体は殻長85㎜もある。同じ一色(愛知県西尾市一色)のものなので、個体群は同じかも知れない。7月半ばの個体は持ち重りがする。湯引きしてみたら、あっと驚くほど肉厚だった。ザルガイ科特有の強い甘味と強い食感があり、貝らしい風味もある。一個一切れではなく、半分に切るべきだったかも、と考えて仕切り直しをすると、半分でちょうどほどよい大きさで、おいしさがじわりじわりとくる。トリガイ、いしがきがい(エゾイシカゲガイ)、本種がザルガイ科の流通3種だけど、トリガイ以外は手に入れるのが至難である。三種三様においしい。三種とも食べているときは、それこそがいちばんと思うということは、味の実力にほどんど差がないということだ。
コラム

ホシエイの肝のおから

奈良県中心部、奈良盆地の郷土料理に「おから」がある。アカエイの肝でおからを炒ったものだが、大層おいしいのでアカエイを手に入れたら必ず作る。余談になるが奈良県は、京都府に負けない海なし県特有の、深みのある郷土料理の宝庫である。また、アカエイを煮た汁でおからの味つけをする地域も少なくない。当たり前だが、ホシエイで作ってもうまかろう。今回のホシエイの肝はKais Kitchen、カイくんが水揚げ後、すぐに取り出したもので、刺身用である。アカエイの肝で作ったものは何度食べてもうまいものだが、ホシエイだって負けていない。おからをただの油で炒めると比較的あっさりとして軽い味である。ごぼうやにんじん入りで食卓にあるだけでうれしい。これをホシエイの肝で作ると、際立って強い味ではないが、口の中に大きなうま味が広がって膨張する。まさに肝そのもののうま味であるが、フォワグラの味に負けないといったもので、しかも後味が軽い。いくらでも胃袋に納まるといった味である。ご飯の友としては少しうますぎるけど、なぜか燗をつけた伊丹酒、「老松」に合う。面白いもので伊丹とか西宮・灘の酒は、今でも基本燗をつけて飲む酒だと思っているが、相思相愛のものが出合うべくして出合ったといった、いい時間となった。
漢字・学名由来

魚の呼び名06 「平家」は赤い魚

赤い魚のアヤメエビス、マダイ、キントキダイ、チカメキントキ、クルマダイが「平家(ヘイケ)」、もしくは「平家魚(ヘイケウオ)」、「平家鯛(ヘイケダイ)」だ。「平家の赤旗」という。平清盛の伊勢平氏は栄耀栄華を極めたが、源頼朝、東国武士との大戦にやぶれて、滅んでいく。このとき源氏の陣営は「白旗」をかかげ、平家の陣営は「赤旗」をかかげたことによる。平家と言えば「景清(平景清)」も赤い魚のことをいう。アヤメエビスは種子島で「平家」。マダイは江戸時代の物類称呼(越谷吾山著 安永4/1775)に〈豊前にて○へいけと称す〉がある。キントキダイ科を「平家」というのは和歌山県である。同じくキントキダイを「平家鯛(へいけだい)」というのは和歌山県と島根県。参考文献/『日本魚名の研究』(澁澤敬三)、『魚名集覧』(渋沢敬三)、『日本水産魚譜』(檜山義夫、安田富士郎)、『全日本及び周辺地域に於ける魚の地方名』(高木正人)■呼び名目次へ・楽しい魚の呼び名・目次
コラム

大ヒゲダイの刺身6日間

ヒゲダイは関東近海では明らかに水揚げ量が増えている。ただ、流通量は未だに少なく、手に入れるのは至難である。我がサイトのデータも少ないので、今回の7月の個体は貴重である。さて、7月の個体は脂こそ少なかったものの、身に張りがあり、うま味豊かでもあった。データを見ていくと、9月くらいから身に脂が混在して、脆弱になり、12月には脂が皮下に層を作る。ただ本種に関しては脂ののりだけで味は判断できない。さて、大形だったので撮影に丸一日かけた。青木太一さんによってていねいに血抜きされていたので、翌日から刺身で食べたが、おいしいけど味がなかった。透明感のある身で実にきれい、食感もいいけど、食べ頃ではなかった。
漢字・学名由来

魚の呼び名05 「トシゴロ」は「年頃」なのか?

ほとんど食用になることのない小魚、ネンブツダイ、オキゴンベ、アズマハナダイの呼び名に「トシゴロ」がある。ネンブツダイを「トシゴロ」と呼ぶのは神奈川県三崎。アズマハナダイも同じく神奈川県三崎である。オキゴンベは新潟県新潟市で「トシゴロ」だ。3種に共通するのは小さくて、とても美しい魚だ、ということだけだ。生息する水深も生息場所も異なる。となると、「トシゴロ」は「年頃」かも知れない。「年頃」とは、女性に対する言葉で、「年頃の娘」などという。美しい盛りと同じ意味を持つ。ただ、ネンブツダイを「トシゴロ」と呼ぶ神奈川県三崎で「トシゴロウ」と呼ぶ人もいたらしい。こうなると、「敏五郎」、「利五郞」など男性のことになる。男性にもきれいな着物を着るのが好きな人はいるはずだし、また小柄な男性もいるだろう。■写真はアズマハナダイ。参考文献/『日本魚名の研究』(澁澤敬三)、『魚名集覧』(渋沢敬三)、『日本水産魚譜』(檜山義夫、安田富士郎)、『全日本及び周辺地域に於ける魚の地方名』(高木正人)■呼び名目次へ・楽しい魚の呼び名・目次
コラム

魚は近所のスーパーで 鳥取県産ウルメイワシの開きでフライ

魚は触ったこともない、ほとんど食べない、という人の方が、魚を食べ慣れている人よりも数十倍多いと思っている。そのような人にこそ魚に馴染んで欲しいという話をしたい。要するにゼロからスタートする方が、余計な知識がないので、魚を深く、日常的に知ることができるということだ。けっして魚料理のハードルは高くない、とにかく作ってみなはれ! という話でもある。さて、まずはスーパーで調理済み(下ごしらえ済み)の魚を買って欲しい。今回は近所のスーパーで鳥取県産ウルメイワシのでっかい開き(生)をなんと税込み260円で買ってきた。今現在、水産生物の大量撮影をしているので、起きれば撮影し、疲れたら寝、という、そんな日の夜酒にフライにした。それにしても大きな開きで、2尾とも揚げて、サッポロの黒ラベルを飲む。夏なのでカレー風味をつけたら、実にうまい。どうみても2人前なので、1人前、130円というのもうれしい。兵庫県神戸市、『ブラザーソース』のウスターソースじゃぶじゃぶかけて、缶飲みする。2、3時間寝ては、撮影していたので、なんだか気が高ぶって眠る気にもなれないとき、でっかいフライを食べてもいいのか?これが結果、すやすやと眠れたのだから言うことない。
コラム

湖東は「いが餅」なのか? 「いがまんじゅう」なのか?

滋賀県湖東の人と話をしていると時空を超える。百済ゆかりの人たちがいて、食関係の話を聞いているのに5世紀から6世紀にかけての話になるし、日野町では昨日のことのように「石山本願寺の戦にご先祖が行ったときに」なんて話が飛び出す。また小さな山城が無数にあって多くの国人が群雄割拠していたそうで、一山越えると習慣や食べものが違うという。さて、琵琶湖の東、旧蒲生郡は愛知川を遡って伊勢に繋がる地域と、日野川を遡って伊勢に繋がる地域とに分かれる。今回の滋賀県旅はこの2つの地域を巡る旅であった。当然、片っ端から和菓子屋をめぐる。立ち寄った、湖東のどの和菓子屋にもおなじ和菓子があった。餅の周りに米粒がついていて中はこしあんというものである。これが愛知川周辺は「いが餅」であって、日野川周辺では「いがまんじゅう」と呼び名が違っているようなのだ。ちなみに過去の画像を見ていると甲賀・湖南地方にも同じものがあり、「いがまんじゅう」である。まったく同じ菓子を滋賀県内のあまり離れていない地域で、「餅」と「まんじゅう」に分かれるのだ。まあ、いずれにしてもこの2つの地方の「いが」は絶品であることだけは確かである。
コラム

ホシエイの煮つけと煮凝り

アカエイは過去に何度も皮つき、皮なしで煮つけているが、どっちでもいいかな、と思っている。「でなければいけない」という凝り固まった考え方は料理の世界で、あえて言えば低級なことだ。ボクはできるだけ「どっちでもいい」と思いたい人間だけど、アカエイの皮つき、皮なしに関しても「どっちでもいい」と思っている。ただホシエイはそうもいかない。アカエイの皮にも少しだけえぐみがあるが、ホシエイはそれが強いように思えるのだ。ホシエイに関してもいろいろ試行錯誤しているが、昨年来、皮を剥いて煮ている。しかも今回は、神奈川県二宮町『Kai’s Kitchen』、カイくんに処理してもらったものなので、屋上屋を架す以上に万全である。血抜きして皮を剥くと、無個性な味になりそうだが、決してそうはならなかった。アカエイ科ならではの軟骨の食感と、身の甘さと、微かに感じられる独特の風味がある。アカエイ科、ガンギエイ科などはどちらかというと素朴な味といったものだが、今回に関しては上等であっさりした味なので箸が伸びて困る味となった。煮つけというある意味、日常的な、普通の味なので、そこから一段上の味になっても仕方がない気もする。ただ、上品でいながら味わい深いのでいくら食べても食べ飽きない。室温が27℃超えなのに、やけに熱燗に合う。
コラム

ユリウツボはやはり落としかな

ウツボの同定はボクにはとても難しい。徹底的にウツボ経験を積むしかない。小田原魚市場の生け簀にたくさんのウツボが泳いでいたが、中にやけに攻撃的なやつがいた。ウツボと比べると一回り以上小さい。見たことがあるが標準和名が出てこない。欲しい、けどだれが落としたものか?しるべをたどると鮑屋の吉村さんにたどりついた。そして分けていただいた。ありがとうございました。さて、ユリウツボの皮はウツボよりも柔らかい。ハモのように湯に通すとほどよく柔らかくなり、冷え冷えにして、噛むとぶるんとして豊かなうま味が感じられる。身の方は淡泊そのものだけど、しっかり甘味がある。梅肉(梅干しの果肉をすり鉢ですったもの)をつけて食べると、不快指数が急激に下がる。ウツボよりも骨が弱いのか、ボクごとき下手くそな包丁ではあまり骨が当たらない。もちろん焼いても、煮てもうまいけど、夏は「落とし」こそうまし、だと思う。
コラム

小田原のぎりぎりクロダイサイズは大当たりだった

ハズレの可能性が大きいのでわざわざ買ったクロダイが、不幸にも大当たりだった。32㎝・905gなので「かいず」はとうに過ぎている。「くろだい」でいいだろう。注/関東では若い個体は、「ちん」、成長するに従い「ちんちん」、「かいず」、「くろだい」と出世していく。小田原では何度もクロダイを買っているがほとんどハズレがない。7月なのでぜひともハズレをひきたいと思ったのに大当たり、小田原ではハズレをひくのが難しい気がしてきた。相模湾では厳冬期にはほとんど水揚げがなく4月くらいからとれ始めて、落ち(深場に移動する)10月になると数が減り、水温が下がるとともにまたとれなくなる。旬は明らかに8月後半から9月、10月である。逆にもっとも不安定なのが5,6、7月だと思っている。ちなみに30㎝以下のサイズは年間を通しておいしい。ハズレなかったので喜ぶべきなのだけど、ここまで大当たりだと、相模湾のクロダイの旬がますますわからなくなってくる。ただ選別は買受人の『さんの水産』さんにお任せしたので、本能的にいいものを選んだ可能性がある。活け締めした当日からしてうま味があり、脂も十二分にある。クロダイの刺身はうまいなー、と改めて感じた。
漢字・学名由来

魚の呼び名04 シマイサキ「カレススキ」は枯れ薄?

シマイサキは本州以南、九州までの川の河口域や漁港周り、浅い岩礁域で波の穏やかなところにいる。墨流しのような地味な文様で体長25㎝前後までがほとんどの小魚である。定置網などで揚がる食用魚だが、あまり歓迎されず、流通するにしても水揚げ漁港周辺くらいといった魚だ。流通する範囲が狭く、自分でとって自家消費することの多い魚なので、非常に呼び名が多い。鰾を使って鳴くので、その鳴き声にちなんだり、墨で書いたような文様なのでそれにちなむものが多い。さて、富山県富山湾、生地では「カレススキ」、滑川で「カワススキ」、魚津・氷見・東岩瀬で「カワススギ」である。1941年から翌1942年の『魚名集覧』(渋沢敬三)によるものなので、魚名の採集は大正時代から昭和初期にかけてのものだ。音からして共通の呼び名があって、それが変化したと考えられる。「カレススキ」だけをみると、「枯れ薄(ススキ)」で体の文様を見て、茫洋とした大地に続くススキの原を思わせるためか? と思った。「カワススキ」は「川スズキ」ではないか、と考えたがスズキの方がむしろ川を好む気がする。それでは「皮スズキ」で、スズキよりも小さいのに皮が硬いためか、と思ったが違うだろう。「カワススギ」は川で「すすぐ」で「川で洗濯をしていると、よく見かけるため」、もしくは煤で汚れているように見えるので、「すすぎ(洗い)」たいのか、と考えた。最初は、『船頭小唄』にもある、「カレススキ」がいちばん詩情溢れる名なのでこれが基本的呼び名だといいな、と思った。ただ、本種の習性などを考えると、魚津・氷見・東岩瀬と地域的にも広い「カワススギ」が基本に違いないと考えるようになった。本種は港や川の河口域で波の静かなとき、まるで鏡のような水面の下で、ほとんど動かず止まっているのをよく見かける。川(河口域)は生活の場所で洗濯をしたり、農作業の後に泥を落としたりするところだ。そんなところにいる魚という意味ではないかと考え至る。■呼び名目次へ・楽しい魚の呼び名・目次
コラム

摂氏27℃の部屋でヒゲダイのすき焼き

室温27℃、湿度50%で食べる、「魚のすき焼き」がおいしのはなぜ、だろう。山椒を大量にかけながら、サッポロの黒ラベルを缶飲みしながら、食べる。ヒゲダイの頭部に近い部分の皮つきの身を自分好みに煮ては食べる。身自体に味があるし、中骨でとっただしで割り下を作ったので、つゆだってうまい。材料は何にもなかったので玉ねぎと糸こんにゃくだけ、なのにうまい。昔、大阪府泉佐野市で「魚のすき焼き」の話を聞取したとき、新物の玉ねぎが出始めたときが、「おいしいんや」と教わっている。新物の玉ねぎとは、まだ皮の色づかない「新玉ねぎ」ではなく、収穫した玉ねぎを干して、皮が茶色になったものだ。泉佐野だからハモ、マゴチを使ったんだろうけど、これをヒゲダイでやる。不快指数の高いときに、熱々の「魚のすき焼き」は夏バテしそうなときのブレーキになる。ちなみに最初は生な玉ねぎを食べ、終いにはヒゲダイのうま味を吸収したくたくたの玉ねぎを食べる。翌朝のご飯のために、残すべきだったのに、残せなかった。蛇足だが、大汗をかき、山椒をたっぷり振りながら魚のすき焼きを食べると、不思議なことに体が爽やかによみがえる。
コラム

十六ささげに猛暑突入の時季を知る

八王子総合卸売センター、八百角で「十六ささげ」を買って夏だな、と実感する。「十六ささげ」、「「三尺ささげ」などと呼ばれている、さやを食べるささげが来ると、猛暑だとか、熱暑だとか、蒸し暑い、とか感じる今日この頃である。長篠(愛知県新城市)でバアチャン(15年前に92歳)に聞いた話では、「梅雨が明けると近所からいただき、……お盆近くになると八百屋に大量に並び、……夏の暑さももう少しで終わる(と感じる)」と言う話を聞いた。「十六大ささげ」は暑さの始まりを告げ、旧盆に盛期を迎えるとそろそろ猛暑もおさまるなどという、昔は、暑い最中に微妙な季節の移り変わりを感じさせてくれるものだった、のだ。今や夏の微妙な変化などまったく感じられない。
料理法・レシピ

相馬市産マイワシの赤酢煮

マイワシを手に入れたら、どのような料理にするにしても、まずは刺身にして脂ののりを確かめる。今回の福島県北部沖(たぶんボクの大好きな原釜漁港から)のマイワシの脂の層はくっきりして厚みがある。刺身を口に入れると口溶け感からくる甘味がある。
コラム

聖子を探す旅10 商店街巡り、板宿商店街

明らかに所謂グルメ的ではない田辺聖子の食べものの、表現の特徴は曖昧模糊とした部分がないことだと思う。単純に好きなものを好きなように気楽に食べるのが、好きだというのがわかる。田辺聖子など日常の買い物からして、デパートや高級スーパーではなく、市場・商店街をもっぱら利用していたというところがいい。神戸における田辺聖子の食品調達は新開地から湊川周辺だった。今回の板宿町までは距離があるが、典型的な神戸市の商店街を見ておきたいというのもある。神戸は大震災の影響もあり、「昔ながらの面影が凄まじい勢いでなくなってしまった」、とは王子公園駅で会ったオッチャンの言葉である。それでも田辺聖子の時代の商店街や市場が少なからず残っているところが神戸の魅力でもある。神戸市の総人口は149万人くらい。この食をその昔は商店街や市場が担っていた歴史がある。さて、板宿駅を出ると、正面に板宿本通のアーチ型の看板がある。ここで重要なのが本通りは南北に道があるということだ。北、山に向かうことを「上」もしくは「上がる」といい、南、海側に向かうことを「下」、「下る」という。板宿の商店街を何度も何度も上がり下りする。
漢字・学名由来

魚の呼び名03 「ワタナベ」さんと呼ばれる魚たち

「ワタナベ」と呼ばれる魚は、サバ科のスマとベラ科のテンスである。両種に共通するところはまったくなく、地域も離れている。スマを「ワタナベ」と呼ぶ地方は千葉県外房と相模湾周辺だ。これは渡辺家(渡邊、渡部)の代表的な家紋が三つ星(黒い●が三角形に並ぶ)で、スマの胸鰭の下の黒い斑紋を思わせるためだ。胸鰭下の丸く黒い斑紋は3つとは限らないが、とても印象的である。神奈川県佐島と小田原で同じ話を聞いているので、意外に知っている人が多いのかも。
コラム

産地不明の大チカメキントキを刺身などで

チカメキントキも年間を通して身質の変化を見ているので、基本的に産地不明は買わない、のだけど買った。抱卵個体なので、過去のデータからして7月後半とか8月初旬に産卵する個体が多いのだと思われるが、それを確かめたいのもある。旬のわかりにくい魚で、年間を通して味がよい。刺身と焼霜造りを作ったが、刺身がやけにおいしい。部分部分、造りを変えて3種盛りで楽しんだ。
コラム

国内の食用魚は最低限に見積もって千種

仕事の打ち合わせをしていて、いかにも食通的な話をする人が「日本中の魚を全部食べてみたい」、と言うので、「国内にどれくらいの食用魚がいると思いますか?」と聞いたら出てこない。たぶん、比較的知名度のある普通の食用魚は300種くらいではないかと思うが、地域性のあるものも含めると1000種くらいだ、と思っている。サイトの情報を精査するとそうなる、のだから意外に正確だと思う。念のために、かの魚検定1級の、その男性に、「10種類の食用魚を正確に説明できますか」と聞くと、1種類も説明できない。一緒にいた女性の方が「北海道でニシンを食べました」、というと、その男性は「幻の魚ですよね」という。こんなに魚オンチなのに魚検定1級なのか、とビックリする。水産系の大学に水産生物の基本的知識(水産学)を教えるカリキュラムがなくなり、マアジもマイワシも知らない水産系の学士が膨大に生産されている。今、魚関係の怪しすぎる学校がたくさん出来ているらしい。要するにより各論化して、象を目の不自由な人が触る、といった状況になっている。0.1くらいでもいいから視力を身につけてはいかがだろう。くどいようだが、「せめて国内産魚類10種くらいは正確に説明できるといいのでは?」といったら会話が途切れてしまった。
コラム

丁稚羊羹の本場は湖東かも

滋賀県といえば「丁稚羊羹(でっちようかん)」だと思う。ボクが初めて「でっち」という言葉を覚えたのは大村崑が出ていた『番頭はんと丁稚どん(反対に、丁稚どんと番頭はんと覚えていた)』だ。おとぼけ、間抜けな感じだが、どこか憎めず、よくよく考えているようだか、考えていないんだか。菊田一夫の生涯を読んで、丁稚どんはバカでは務まらないと知る。さて、なぜ滋賀県に「丁稚羊羹」が多いのか?やはり近江商人との関わりだろうな。とすると湖北でもなく、どりらかというと湖東だ。今回の日野町など近江商人の中でも日野商人というのまである。日野町『かぎや』の「でっち羊かん」は「丁稚羊羹」の中でももっともおいしいかも。
コラム

新潟市、越後新川の生物・食物図鑑29 マダイ

新潟県新潟市西区五十嵐新川漁港周辺の生物・食物図鑑を作っていく。新川漁協に水揚げされる水産物は量的には多くないが、多彩であるし、おいしいものだらけである。新川漁港の周辺には磯や護岸もあるし、きれいな砂浜もある。多彩な生物がいて、そんな生き物とふれあえるのも魅力的だ。一般的に「鯛(たい)」はタイ科の魚のことをさす。新潟県ではチダイ、キダイ、クロダイ、ヘダイなどがとれるが、「鯛」の中の「鯛」とはマダイのことである。赤く非常に美しい、1mを超える大形魚で、タイ科の中でもっとも大きくなる。祝い事や正月などに欠かせない魚で、古代より尊ばれてきた。新潟県など日本海側では近年、漁獲量が増えている。
コラム

シマアオダイの酢洗いで、悲しい酒を

シマアオダイクラスになると、刺身にしたときの端っきれだって、無駄に出来ない。釣り上げてから5日目、我が家に来てから4日目に中途半端な上身を集めて、赤酢で洗う。我が家の酢洗いには赤酢を使い、基本的に『ミツカン』の「三ツ判山吹」を使っている。非常に使いやすいし、手に入れやすいからだ。これで洗うと、適度に身が締まり、味にこくが出る。単に刺身を赤酢で洗ったものと、皮霜造りにして洗ったものの二色盛りにした。皮霜造り(皮に湯をかけたもの)の方がおいしい。赤酢のこくのある酸味に皮の豊かな味で、非常に完成度の高い、文句のつけようがない味だ。酢を使っているので、吟醸酒ではなく「金紋 御代栄 本醸造」(北島酒造 滋賀県湖南市)を合わせてみた。湖南の酒は比較的ボク好みのものが多いのもあって、いい時間が過ごせているな、と感じる。これぞ孤立無援の悲しい酒というやつかも。それでは皮を引いた方はダメだったかというと、なぜか、不思議なことに、こちらの方がボク好みなのである。おいしいのは皮つきの方だけど、最近、この不完全さがいいのである。シマアオダイのただただおいしい、素直すぎる味が、赤酢と出合って端的に味わえている気がする。人間歳を重ねると、変わるん、だなー。
漢字・学名由来

魚の呼び名02 「オイラン(花魁)」と呼ばれる魚たち

「おいらん」という呼び名で呼ばれている魚は我がデータベースに現時点で7種ある。調べるともっとあるだろう。江戸時代、元和3年(1617)に作られた吉原遊郭(現中央区人形町)で生まれた言葉だ。遊女の中の最高位で、たくさんの長いかんざし(簪)をさし、引きずるほど長い豪華絢爛な着物を着ている。これが日本各地に伝わり、魚名にもなる。長いかんざし、は魚の棘をさす。またかんざしをさした頭が大きく見えるなどもある。引きずるほど長い着物や、その豪華絢爛さは細長い形態と、その鮮やかな体色を現す。オニカジカが「おいらん」と呼ばれるのは、鰓蓋骨から伸びる長い棘があるためで、これをかんざしに見立てたもの。ヤリヌメリは左右の棘をかんざしに見立てて、極端に大きい頭部からでもあるだろう。しかも刺激的な臭いがすることがある。サケガシラ、スミツキアカタチは細長い体が着物を思わせるためだろう。ヤナギムシガレイ、ヒレグロは泳いでいる姿が裾の長い着物を引きずる様子を思わせるためだと思われる。オイカワは「おいらんぶな」と呼ばれるが、明らかに産卵期の雄を指している。赤と緑、青に染まっているのが、花魁を思わせる。■呼び名目次へ・楽しい魚の呼び名・目次
コラム

夕顔に夏を感じる、曇り空

ほぼ1年振りに夕顔を買う。今年も夏が来たのだ、と思う。昔々、地方の直売所めぐりをしていて、クリームグリーンの巨大な物体を横目で見ては通り過ぎていた。これが夕顔という野菜だとは知らなかった。山形県尾花沢の国道沿いの農家で試食させてもらって、あまりにもおいしかったので、大きなボーリングのピンのようなものを買って来て、1週間に亘って食べた。岡山県和気町では切ったものが大量に売られていた。これも夕顔だったが、切る前の姿は丸い。和気町は「干瓢(かんぴょう)」の産地で、夕顔から干瓢を作ることを、ここにいたバアサマに教わった。
コラム

夏はなめろう、かも

魚を大量に買い、計測撮影しているので、ときどき刺身がいやになる。もちろん脂の乗り具合を皮下の層で見るので、刺身も作るが、ばっかり食べても、味がわからなくなる。気分を変えて、マアジ、マイワシ、「わらさ(ブリ)」の「なめろう(みそたたき)」を作って、前回は愛媛県宇和島の大カイワリでも作った。マアジは脂が乗りすぎるくらいにのっていたし、意外に「わらさ」がおいしかったが、ここ1週間はカイワリがダントツのうまさだった。今回初めて辛みに柚子こしょうを使ったのが正解だったと思う。あまり辛いものに強くはないが、夏だ「なめろう」だ、柚子こしょう多目入れなのだ。と、もう10年近く前に買って忘れていたトリスのハイボールを飲んだ。けだしカイワリのうま味成分の多さは特筆すべきものがある。大カイワリの半身の3分の1をたたいたのに、飽きが来ない。ちなみに今回「なめろう」としたのは、酢をつけつけ食べたからだ。酢を使う地域は他にはないと思う。昔、千葉県外房では情け容赦なく、酢をかけて出してくれた。その内、酢を小皿にもらうようになったが、この日は、かける気にはなれなくて、小皿の気分だった。「みそでたたいて、酢を使うのが外房のなめろう」なので、「なめろう」としたが、できればそれぞれの地域名で食べて欲しい。
漢字・学名由来

魚の呼び名01 「カゲキヨ(景清)」と呼ばれる魚たち

「かげきよ」は歌舞伎十八番、「景清」の主人公、平景清の衣装が赤を基調として武張っていることから、赤い魚で棘や鰭が大きいなど目立つ魚の呼び名となる。分類学的にはキンメダイ科、イットウダイ科、キントキダイ科にまたがる。キンメダイ科/キンメダイイットウダイ科/アカマツカサ、イットウダイ、エビスダイキントキダイ科/チカメキントキ、キントキダイ、クルマダイ「景清」は平家物語の登場人物、平景清(藤原景清、悪七兵衛景清)をモデルとしているが、「曾我兄弟と助六」と同様に史実とはなんら関わりがない。助六同様、様々な歌舞伎の演目になんの必然性もなく登場する。享保17年(1732)に二代目市川團十郎によって歌舞伎十八番「景清」が初演され、人気を博す。江戸で人気が出ると、国内隅々、村芝居などで演じられるようになり、広がって行く。『平家物語』で源氏と戦い、勇敢な武士であったということで非常に大胆で武張った装束を着る。その装束の色が赤だ。余談になるが、歌舞伎十八番の特徴は人を驚かすような大胆な衣装ではないか?独特の化粧である隈取りも市川團十郎が考えたこと。歌舞伎はこの衣装や化粧とともに日本全国に広がる。「平景清」は、以後、江戸時代に生まれたヒーローとして人口に膾炙する。この江戸時代のヒーローである「平景清」を思わせる魚、という意味の呼び名なので一次的魚名ではない。18世紀以降の呼び名ということになる。■呼び名目次へ・楽しい魚の呼び名・目次
漢字・学名由来

楽しい魚の呼び名・目次

・魚の呼び名 初めに、呼び名採取の世界・魚の呼び名01 「カゲキヨ」と呼ばれる魚たち・魚の呼び名02 「オイラン(花魁)」と呼ばれる魚たち・魚の呼び名03 「ワタナベ」さんと呼ばれる魚たち・魚の呼び名04 シマイサキ「カレススキ」は枯れ薄?・魚の呼び名05 トシゴロは「年頃」なのか?・魚の呼び名06 「平家」は赤い魚・魚の呼び名07 お仙さんは江戸時代のアイドル・魚の呼び名08 和歌山県周参見の、おけいさん・魚の呼び名09 徳島県貞光町の「お医者はん」■呼び名区分などは『日本魚名の研究』(澁澤敬三 角川書店 1959)を参考にした
郷土料理

マダケの時季も終わりかな

6月19日、滋賀県近江八幡市の直売所でマダケを買った。マダケの出盛りは短い。毎年、5月半ばくらいには小振りのマダケを買っているが、今年は初物が6月も半ば過ぎとなる。歳をとるごとに慌ただしくなり、時間の余裕も、季節を感じる余裕もなくなる。今季初マダケは遅すぎた。そして今、市場の八百屋に、少ないながら入荷してきているが、ぽつぽつとであり、そろそろ終いだろう。マダケは国内では関東周辺とか新潟県以南に自生しているのだと考えている。東京都多摩地区では淡竹(ハチク)よりも見る機会が多い。四国、徳島県美馬郡貞光町(現つるぎ町)にいたときは商売屋に生まれたためか、見てもいない。上京してから埼玉や多摩地区の直売所などで見つけて、食の好奇心の塊そのもののようなボクはすぐに飛びついた。食べ方も直売所直伝である。
コラム

久しぶりにドカ弁

滋賀県東近江市のコンビニ駐車場で目的地を再確認していたら、目の前のジイサマが手を振っている。窓をあけると、「遠いところから来たんや」せっかくなので、しばしジイサマと話し込む。水産生物を調べるということは、人から話を聞くこと、なのである。湖南市生まれのジイサマに朝ご飯の話、サンマの話、なれずしの話と来て、昼飯は? で話が盛り上がる。昼は麦飯と梅干しだけ、だったという。これくらいの(手の平を広げて1つ半くらい)金色のアルマイトの弁当箱にぎゅうぎゅうの麦飯を詰めて、昼前と午後に食べていたという。たぶんそのときの弁当箱の大きさは長方形の最長部分の長さ25㎝、深さ10㎝くらいか。めもを取りながら、久しぶりに弁当箱飯を作ろう! と思った。我が家の弁当箱は大分県日田市の古い金物店で買ったもので、中型である。大と特大もあって、全部買うべきか悩んだ末に諦めた。居合わせたオヤジサンが梅干しを乗せた部分あたりがへこんだ蓋の、特大の弁当箱を持っているからやる、と言われたがバスの時間があって諦めた。
コラム

7月の大カイワリはうまいのか?

魚のおいしさを堪能するためにも魚を買うが、年間を通してよしあしに関わらず魚を買うのは水産生物の季節変化を知るためだ。それでやたらにお金がかかるのだけど、お金がないと書くと脅迫めいたメールやメッセージを送ってくる人間がいる。今どき、年間を通して魚を買ってみればいかに経費がかかるか、わかると思うが、このような人たちを避けるすべがない。以上は愚痴である。さて、6月30日に愛媛県宇和島から大形のカイワリが来た。カイワリは3月下旬くらいに生殖巣を膨らませ始めた個体がいて、4月、5月になると生殖巣大きく膨らませた個体がやってくる。この時季が漁の最盛期だし、旬である。6月になると痩せた個体が来るようになり、ハズレが増える。それでは愛媛県佐田岬の南、太平洋に面した宇和島のカイワリはどうなんだろう?カイワリは大小にかかわらず味がよく、産卵後、味の落ちる期間が短い。今回の個体は精巣が縮んでいて、産卵後の個体である。表面の鱗が硬く、皮も硬めだ。刺身にすると背の部分は全体に赤い。少し硬いものの、とても味わい深いのはうま味が豊かだからだろう。脂もあり、少ないないながら口溶け感がある。カイワリとしては安目だったが、値段以上の味と言ってもいいだろう。
コラム

魚は知識と技術で格安になる。シマアオダイの兜料理

八王子卸売協同組合、舵丸水産、クマゴロウが釣り上げてきたシマアオダイは高級であるし、めったに手に入らない魚でもある。今回の756g サイズを例えば東京都豊洲市場で買えば、1尾3000円くらいはするだろう。これを高いか、安いかは、買った人の技量で決まると思う。今回、1尾で兜焼き(塩焼き)、兜煮(煮つけ)、刺身2回、刺身酢洗い、皮霜造り、カルパッチョ、たっぷりでゴージャスなあら汁を作った。これで1品あたり380円ほどだ。ちなみに八王子卸売協同組合、舵丸水産では三枚下ろしに頭部梨子割りくらいはやってくれる。あえて言えば最近のスーパーは素晴らしい。シマアオダイクラスを手に入れるのは難しいが、魚を1尾買うと懇切ていねいに下ろしてくれるところが増えている。単なる高級魚ならスーパーに頼ってもいい。ちなみに魚経験は多いほどいいが、できるだけ包丁など道具を買うのは後回しにすべき。まずは魚屋、スーパーに頼りなさい、なのだ。さて、頭と腹骨周りだけで2品なので、ほとんど無駄がない。もしもシマアオダイを料理店で食べたなら、刺身1人前で1000円強、高級店なら刺身3、5切れで1500円くらいはする。兜(頭)を使った料理だって安くはないはずだ。贅沢するならお金持ちは料理店で高級魚を食べるといいし、庶民は魚屋・スーパーに頼るか、腕を磨き高級魚を1尾丸々かって多品目作るしかないだろう。しかもシマアオダイは流通のプロや魚類学を学んでいる人間には在り来たりな魚だが、普通の人には非常に珍しい魚なのである。さて、鯛の兜焼き(マダイの頭の塩焼き)、兜煮(マダイの頭の煮つけ)はなぜ、定番料理になり得ているのか?マダイはクセのない上品な味わいで、頭部の骨が柔らかく、頭まわりの身がたっぷりだからだ。フエダイ科アオダイ属の本種はマダイ以上にに骨が柔らかく、頭まわりの身が多い。
コラム

滋賀県湖東のういろうと水無月

できるだけ季節を大切にしたい。季節を感じたい。季節感が急速に失われていく現今、和菓子には未だに季節感がある。ついでに言えば我がサイトの重要な部分である、地域性も残っている。滋賀県湖北・湖東地方は「ういろう」だらけ、というか国内屈指の「ういろう」地帯だ。湖西・湖南地方では今のところ、「ういろう」を見ていないし買っていない。「ういろう」には黒白あって、「白ういろう」に小豆をのせたものが「水無月」だ。6月、滋賀県湖東地方は「水無月」だらけだった。旧暦の6月が水無月なので、新暦では7月半ばから8月半ばが水無月である。ということで、新暦の6月は水無月だはないけれど、まあそのあたりは気にしないでおきたい。梅雨入り後、分厚い雲の下、左右に田植え後の田んぼを見ながら、和菓子を求めて車を走らせる。立ち寄った和菓子店全部に「水無月」があった。「水無月」には「氷室開き」との関係とか、いろいろ説があるものの、とにもかくにもボクのような和菓子好きは、6、7月には「水無月」を食うべしだ。
コラム

鹿児島のムロアジは味があるし、脂もある

鹿児島県鹿児島市、田中水産さんにムロアジをいただいた。大形で体長41cm・783g もある。6月28日に到着して早速撮影して刺身にする。ムロアジの旬はわかりにくい。今回の個体は大きいためか鱗が硬く、皮も硬い。白子(生殖巣)は小さくて産卵期はまだ先のように思える。ただ、刺身にするとあぶらがあり、でしかもうま味豊か素晴らしい味だったが、最旬とはいえない。2019日6月27日の神奈川県小田原から連れ帰ったムロアジより、今回の個体は脂という意味では劣っている。やけにうま味が豊かなのは、脂ののりがピークにはないためかも。ひょっとしたら、鹿児島県は小田原などと比べると脂ののりがピークに達するのは遅い可能性がある。
コラム

聖子を探す旅9 おごる平家の夢のあと

田辺聖子からずれてしまうけど、最近、ネガフィルムを整理していて、場所のわからない複数の写真を見つけた。古い護岸が見え、運河のような景色とメモから、兵庫区の中央市場あたりではないか? と思うようになった。兵庫県神戸中央市場のある埋め立て地の西側一帯が大輪田泊なので、神戸市ではもっとも古い港で、平安時代から築堤が行われていたはずだ。
コラム

新潟市、越後新川の生物・食物図鑑28 マコガレイ

新潟県新潟市西区五十嵐新川漁港周辺の生物・食物図鑑を作っていく。新川漁協に水揚げされる水産物は量的には多くないが、多彩であるし、おいしいものだらけである。新川漁港の周辺には磯や護岸もあるし、きれいな砂浜もある。多彩な生物がいて、そんな生き物とふれあえるのも魅力的だ。カレイやヒラメの仲間で、菱形の体に目が右の方だけにあって、右の方の体は茶色で、左側は白い。不思議な姿だけど、生まれたときは普通の魚と同じで目は左右についていて、大きくなるにしたがい、左目が右側に移動してくる。右側を表といい、左側を裏と言ったりする。北海道から九州北部の浅い砂や泥のある海底で暮らしている。新潟県では「くちぼそ(口細)」と呼ばれているのは、口がちっちゃいからだ。
コラム

滋賀県に行ったら丁字麩かな?

念のために、ボクのデータベースは水産生物だけではなく、伝統的な野菜や加工品も含む。いろんなメッセージをいただくが、水産生物は我がデータベースの半分でしかなく、水産生物だけ調べていても水産生物は、まったくわからないということも明記したい。さて結構、麩が好きで、旅に出ると贅沢に生麩を買うこともあるし、常にあるもの、常備している焼き麩を買うこともある。特に焼き麩は全国に散らばっていて、様々な形態がある。滋賀県東近江市永源寺で、帰宅後の夜飯(よめし)用のミンチカツを買っていたときのことだ。揚がるのを待っていたら、滋賀県東近江地域の肉屋につきものの「丁字麩」が目に飛び込んできた。滋賀県では直売所に寄るたびに1袋買ってしまっているのが丁字麩であるが、今旅は、人に話を聞くための旅なので、慌ただしくて買い忘れてしまっていた。ミンチカツが揚がるまでの時間が、ボクには自分を取り戻すためのいい時間だった。
コラム

名残のハモは去年9月、初ハモは本年6月末日

年年歳歳、6月には初ハモ、9月に名残のハモとなりにける、なのだ。あまりにも不器用なボクが、あまりにも不器用だと思い知るのが6月のハモで、さんたんたる仕上がりになり、これが8月になると結構やれるじゃないか? と思い、9月にはしゃりしゃりとリズム感よくハモが我が手中にあり、って感じになる。今季初ものはぎりぎりの合格点だとは思うけど、完璧ではない。落とし(ちり)も結構問題があるががんばった結果、及第点ではある。開いてていねいにていねいに骨切りをする。できるだけ、皮半分まで切れ目をいれ、身がひらっとするように切る。これを塩を加えた湯に落として身が開いたら氷水に取り、水分をきる。そのまま少し冷蔵庫で冷やし込んだもの。梅肉は梅干しをつぶし、すり鉢ですって、みりん少々を加えて、またすり、なので在り来たりすぎるものだ。ボクのハモの骨切りの腕はスカタンそのものだけど、山口県産活け、 全長90cm・1.04kgのハモがよかったので、助かった。思った以上に脂があって、口の中でちゃんとほろりと崩れて甘い。
郷土料理

茶漬け用に買った境港の並アジが並じゃない

境港は鳥取県最大の漁港で、川のような境水道の対岸は島根県である。巨大な魚市場があるが、この市場に並ぶ大方は島根県産の魚貝類なのである。だから今回の境港産のマアジも鳥取県の海域ではなく、島根県の例えば島根半島で揚がったものだろう。ちなみに今でも思い出す、すごいマアジがあって、それは島根半島の東端、美保関漁港に揚がったものである。さて、茶漬けを作るために、1尾だけ買って、刺身にしたら、いきなり全部を茶漬けに仕込むにはもったいない、そんな刺身であった。念のために冷凍庫で冷え冷えにした器に盛って、食卓に置いたら、それでも表面が溶け始めた。まさかこれが今季一番のマアジだとは、思いもしなかった。脂が豊かなだけではなく、強いうま味がある。まさかまさかで半身の半分を刺身で食べてしまった。これ、並アジ(通常流通)でいいの? と思うほどの、見事なマアジだ。
コラム

東近江市永源寺で買った親鶏ですき焼き

子供の頃から、親鶏が好きだ。ボクの生まれた徳島県美馬郡貞光町(現つるぎ町)の家から道路を挟んだ向かいが肉屋だったが、この硬い「かしわ」はなんとなく我が家に来るもので、昼ご飯のお汁(おつい)に入っていたり、親子丼(汁掛け飯)にしたりした。もちろんすき焼きは、ライスカレーと同じくらいご馳走だった。卵を産まなくなった鶏を「親鶏」というのだと思うが、買うのではなく親戚当たりからのいただきものだったのだ、と思っている。若鶏とは違ってとても硬い。硬いけど味がある。東京ではやけに店構えのいい、鶏肉専門店では手に入るが、近所のスーパーには売っていない。関西では鶏肉専門店にあるのは当たり前、スーパーでも手に入るし、肉屋にもある。だから関西に行って、見つけるとついつい買ってしまう、それが親鶏だ。今回は滋賀県東近江市永源寺のスーパー『八尾亀』で買った。これと東近江市『麸重商店』の丁字麩ですき焼きを作った。ちなみに関西の肉屋では卵(きんかん)は別売りで買わなくても済むが、『八尾亀』ではキンカン入りのパックだった。それにしても子供の頃からの親鶏好きはなおらない。甘辛く煮ながら食べるのだが、噛み噛みするのが楽しくてたまらない。いい味が割り下の地にいっぱい出て、それを丁字麩が吸い取る。焼きとうふも加えたが、丁字麩には敵わない。親鶏を買いに、関西に行ってもいい、くらい親鶏が好き、だと改めて思う。■鳥与 滋賀県近江八幡市安土町
コラム

鹿児島のスマ、うまかー!

鹿児島県鹿児島市、田中水産さんにスマをいただいた。うまかー! だった。スマは今食べ頃なのである。それにしてもこんなに脂ののったスマは久しぶりである。やはり、6、7月のスマはいい。今回の個体は全身がカチンカチンに硬くて鮮度が抜群によかった。鹿児島からなので日数がたっているが、水揚げしたてのようだ。スマ特有の皮下に厚みのある脂の層があるのだからたまらない。クロマグロの大トロの脂は上質でも胃の腑に強い負荷をかけるが、スマの脂は一向に腹に堪えない。酸味はマグロ類よりも弱い。だから口溶け感からくる甘味が強く感じられる。面白いもので日本酒よりもビールが合う。スマを頬張りながらぐいぐい飲めてしまう。
郷土料理

クサヤモロの煮節と東近江日野町の焼きとうふ

水産物を調べているが、水産物だけを食材として調べても、なんのもならない。余計に水産物がわからなくなる。野菜や加工品など水産物以外のものと水産物を合わせて料理するから、水産物がわかってくる。水産物だけを考えて作るよりもおいしいし、また常日頃のものとなる。さて、滋賀県東部の東近江市や日野町では年間をとおして「焼きとうふ」が売られている。これを使った郷土料理もある。中になまり節(キハダマグロやカツオの)と焼きとうふの煮物がある。これをクサヤモロの煮節で作ってみる。市販のなまり節を使ったものよりもうまい! とまでは言えぬものの、実にうまい。滋賀県東部の焼きとうふそのものがおいしいのもあるし、クサヤモロの煮節から出ただしがうまいのもある。二つの素材が合わさってともに別のおいしさを作り出している。毎日食べても飽きぬ味というとわかりやすいだろう。
コラム

淡路のマサバで酢じめ、マリネ

淡路島の釣りサバ(マサバ)は有名であるが、まだ6月、体長35㎝・643g とやや小振りで脂はあまり感じない。1ヶ月後だと値が上がり始めるはずなので、このへんで1尾買うというのもある。ついでに言えば、ボク自身が脂脂といって脂ぎっていたときを過ぎているので、触った感じ、ボク好みだなと思ったのもある。念のために、人生いつまでも脂が乗り乗りの魚を好む、とは限らないのだ。釣り物で淡路は扱いがいいので、鮮度抜群である。さて、赤酢じめとワインビネガーでのマリネの二品を作った。ミツカンの「純酒粕酢三ツ判山吹」は刺身の酢洗いなどに常備しているものだけど、あまり酢じめに使ったことはなかった。我がデータベースでも十数回といったところ。久しぶりでもある。酸度が低く(ボクの感想だけど)こくがあり、香り高い。酢の鋭角的な味ではなく、マサバのうま味を引き出してくれる。七割方酢でしめたので、柔らかく、まず初めに少ないながらマサバの脂の甘さがあり、うま味が感じられる。柔らかいのは少ないながらも脂があるためだ。背の青い魚特有の微かな酸味が生の部分にある。粕酢での酢じめは我が家の定番になりそう。酒は「喜楽長 権座 純米吟醸 生酒(喜多酒造 滋賀県東近江市)」だ。
コラム

神戸市岡本、フロイン堂でいろいろ

さて、神戸市岡本駅、谷崎潤一郎という文字が突然浮かんで、突然下車した。なんの当てもなく下車するなんて移動日だからこそ、できることだ。さすがに大正末年の面影はなく、駅の周りをぐるりと一回り。駅南側に見つけた建物に見覚えがあった。昔、魚貝類と無関係のいろんな仕事をしていたことが、こんなときに役立った。食パンで有名な『フロイン堂』である。通りすがりなので、食パンは無理として、店に並んでいるものをいくつか買った。田舎パン、カレーパン、バゲット、バターケーキだ。田舎パンとても味わい深く、ディスクにのせて、ちぎっては食べたが、ボク好みの味だった。
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温暖化を感じる魚13 クロホシフエダイ

温暖化で急激に種を増やしているフエダイ科フエダイ属の魚である。昔から本州伊豆半島西岸以南に生息域を持っていたが、幼魚が多かったのではないかと思っている。現在では幼魚は宮城県でも見つかっているし、漁業的な対象となる成魚は房総半島・山口県以南に生息している。またインド洋・西太平洋の熱帯・亜熱帯・温帯域で見られる。フエダイ科の魚には深場にいるものと、浅場にいるものに分かれる。フエダイ属は浅場、汽水域にもいる魚である。フエダイ属は非常に種が多いが本種がもっとも北に生息域を持っていた。本種の地方名を見る限り、駿河湾以南は本種を指す呼び名があり、伊豆半島以北には呼び名自体がない。
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新潟県五泉市茶碗蒸しの「のっぺ」

密閉された茶碗蒸はお椀形のものが多いが、東北地方に点々と長方形のものが存在する。新潟県ではこれがお初である。お椀形よりもレトロな懐かしい感じがして好きだ。また、冷たいまま、このまま食べられるのでとても便利である。
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いつもおいしいアオダイの旬は?

舵丸水産のクマゴロウが利島沖で釣り上げてきたアオダイである。東京都、鹿児島県を代表する魚で、東京を始め関東の流通のプロの間では古くから知られていたが、未だ本種は一般にはマイナー魚そのものである。常に高値で取引され、引く手あまたの魚であるが、「青鯛」という地味な名前なので、目立たないのかも知れぬ。伊豆諸島に多く、これから水揚げ量も増えるし、味もよくなる。味がよくなると書いたが、正確ではないかも。年間を通して味が落ちないので旬がわかりにくい。これから食べる機会が増えるだけ、とすべきだ。まあ、ボクにとっては今年、3度目の刺身だが、自分で下ろして自分で食べたのは、今年初めてである。3度とも、まさに思わず踊り出してしまいそうになるほど美味であった。当然、この日の刺身も5切れ切って、5切れが消えるのが早かった。東京で白身の筆頭を本種としている料理人がいるが、なんど食べてもおいしいことから、安心して使えるのだろう。さて6月26日のアオダイは脂こそそこそこだったが、鮮度抜群なので食感が心地よく、多様なアミノ酸が生み出す、甘味が豊かだった。呈味成分だけではない、複雑だけど嫌みのない、甘味に思える旨味だ。今回は今までやらなかった料理を作るために手に入れたのに、刺身で大方終わってしまいそうで、恐い。酒は「喜楽長 権座 純米吟醸 生酒(喜多酒造 滋賀県東近江市)」だけど、本種の刺身にもやたらに合う。
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パスタのためにトリガイを買う。トリガイのカッペリーニ

1チャンネル2秒くらいしか見ないので、テレビは見ているんじゃなくて、いらいらしたときの、いらいら解消でしかない。ある日、イタリアの映像だろうか? パスタを片手で器用に食べているところだった。曖昧な記憶だが、『鉄道員』(違う映画かも)という映画でパスタを食べている光景があったはず。白黒画面で、ごっつい体つきの男性が、片手でまるで鉄棒を握るようにフォークを持ち。くるくると巻いて器用にパスタを盛んに口に運んでいる。見ていたらパスタが食べたくなった。八王子卸売協同組合、舵丸水産でパスタ用の魚貝類を探していたら、安いトリガイを見つけた。たぶん、売れ残りだし、時季も遅いからだろう、思った以上に安い。この内臓とひもなど、普段ぬたや湯引きに使わない部分を使ってカッペリーニを作った。貝類のパスタは我が家では定番料理で、簡単でおいしい。
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新潟県村上市『東まんじゅう』の中皮など

新潟県で菓子屋巡りをしていると、やはり特色は中皮(ちゅうか)かな? なんて思う。もうひとつ感じるのは和菓子店なのに洋菓子を売っている店が少なくないこと。今回の『東まんじゅう』は下越でも最北にあるが、やはり中皮がある。レモン風味の白あんと、こしあんの2種。あんも生地もどちらかというと素朴である。『東まんじゅう』で買ったのは中皮こしあん、白あん(レモン)、田舎まんじゅう、抹茶まんじゅう、城山の月である。
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バングラデシュではプイシャク

ボクの先生、バングラデシュ人のエムディがアカツルムラサキ、アオツルムラサキはベンガル語(?)でプイシャクだ、と教えてくれた。エムディは赤の方がうまいという。ツルムラサキ科の野菜でほかにも種類があるのか、などよくわかっていないけど、食文化的には熱帯・亜熱帯のものだ。近年、とりあえず、言葉を教わり、魚貝類に使えそうな料理を教わりたいと思っているので、次はプイシャク料理を教わりたい。ベトナム人のオネエサンにも、ベトナムでも食べているのか、聞かなくてはならない。多国籍になって、市場は二倍楽しくなった気がするのはボクだけか。
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クサヤモロの煮節と淡竹煮

八王子総合卸売センター、八百角で淡竹を買い、舵丸水産から勝手にクサヤモロを連れ帰り、煮節にしたことは前回書いた。ボクは季節が感じられる料理、昔から普通に作られてきた普通の料理が好きだ。カツオなどの生利節と竹の子、里芋などを煮るのは昔々からの家庭料理であるが、ときどき無性に作りたくなる。家庭料理の基本は簡単で、たいしてコツがいらなくて、短時間で出来ることだ。これをクサヤモロの煮節で作る。淡竹と煮節、醤油とみりん、酒だけの簡単な料理である。煮節・なまり節は山椒と相性がいいので、乾燥した有馬実山椒を加えている。たぶん、醤油が一般化した江戸時代には同様の料理が作られたであろう、普通の料理である。淡竹のよいところは「竹の子(孟宗竹)」よりも味があることだと思う。甘味は控えめながら、竹の子らしい風味が豊か。しかも一緒にたいた素材のうま味に素直に煮染まってくれるのもいい。淡竹を煮染めるほど、煮節からたっぷりうま味が出る。やや甘めに煮た、煮節が口の中でほどよく崩れながら、口の中にもうま味を放つ。不思議なことに煮節だけ食べてもおいしくはない。淡竹と交互に食べるからうまい。たっぷり食べられる、やや塩気の薄い味つけにしたが3日くらいは食べ続けられる。
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温暖化を感じる魚12 スマ(やいと)

サバ科スマ属スマは回遊性の肉食魚で最大で体長1m前後になる。インド洋、太平洋の熱帯域から温帯域に非常に広い生息域を持つ。国内では北海道でも発見されているが、山口県・房総半島以南に多い。スマという標準和名を知っている人は意外に少ない。今、全国的に標準和名を表示することが多くなっているが、それでもスマという人は少なく、もともと東京の呼び名だったスマは東京ですら使われなくなっている。岸上鎌吉(1867年11月29日~1929年)は標準和名「ヤイト」を提唱している。胸鰭の下に丸い点が並ぶのが灸(やいと)の痕に見えるためで、非常に呼び名としてわかりやすい。多くの地域で今現在も、「やいと」なので、この動物学黎明期の和名をそのままにしておけば混乱はなかったのだ。また、市場などでよく、「やいとがつお」、「すまがつお」と呼ばれることがあるのは、見た目がカツオに似ているため。また、古くはカツオ科(今現在はサバ科)の魚だったためでもある。
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新潟県村上市「がんこばあさん」、豆腐寄せ

醤油味のだしにクルミを混ぜ入れて寄せたものは秋田県、山形県、新潟県で発見している。これににんじんやヒジキ、豆腐などを加える。新潟県では村上市でしか見つけていないが、他の地域にもあるのだろう。今回の「豆腐寄せ」は「道の駅 朝日みどりの里 農産物販売所」という直売所で買ったものだが、この村上市と旧岩船郡には面白い産物や食品が無数に見られる。やけに面白い地域なので通ってみたい気もするが、非常に遠い。
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聖子を探す旅8 苦難の果て、東山商店街でうまい酒とうどんにたどり着く

1928年(昭和3年)、田辺聖子は大阪府大阪市福島の商店街で生まれ、兵庫県尼崎市出屋敷、兵庫県神戸市異人館通り、同市湊川神社上、そして兵庫県伊丹市と居を移している。ある意味、田辺聖子は摂津のエトランジェである。湊川神社上(山に近い方が上、海に近い方が下)に住んでいたので、湊川の市場と隣り合わせの東山商店街にも来ていたはずだ。初めて歩く、東山商店街は非常に長く、また路地が木の枝のように伸びて、そこにも商店が並んでいた。雷と土砂降りの雨で、夕闇迫る商店街には人がまばら、ほとんどの店が閉まっている。途中、店仕舞い中の豆腐店『原商店』の方にご飯を食べられるところを聞く。商店街を奥に行くとロータリー(?)に行き当たり、そこに「うどん屋」があるという。店を選んでいる余裕はないし、だいたい食べ歩きなんてやったことがない。予めネットで調べたことがないので、旅先の食事は博打に近い。この日は伊丹市からして歩きに歩き、雨に打たれてまた歩きで疲れと、空腹で行き倒れてしまいそうだった。商店街を上ると奥の方に灯りが見え、「手打ちうどん」とある。砂漠でオアシスといった思いがこみ上げてくる。
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ウマスギ! 山口県萩の瀬つきのあじ

昨年のお盆前以来の山口県、「瀬つきのあじ」が来ていた。山口県日本海側、長門・萩の中型船による巻き網でとったもので、脂質も10%以上という規定がある。ブランド化のよいところは漁業者だけではなく、出荷体制がブランド化以前よりもよくなることである。6月22日、舵丸水産にたどり着いたとき、すでに残り少なくなっていた。「兵どもが夢の跡」とはこのような惨状をいうのだろう、いいものから持っていくのは人の情というもので、残り物に福はなしだ。それでも1尾だけ選んで持ち帰った。山口県にとって理想的な値だったといっておきたい。ちなみに残りは少し値を下げて売られていくか、開きにするなどの処理がなされる。魚屋でひらいたものや、水洗いしたものを見つけたら、非常にラッキーだと思うべし。念のために、漁師さんと話をすると、仲卸で1㎏1000円だったら5㎏で5000円なんて話になる。例えば仕入れ値半分の500円(せいぜい7割くらい)だとして2500円はボロ儲けだろう、という。実は全部売り切ることはまずなく、ときにまったく売れないこともある。水産物はリスクの塊だというと、漁師は不機嫌になる。「瀬つきアジ」は売れ残るリスクが低いのは仲卸(魚屋)にとってもありがたいはずだ。消費者はこのような魚屋の機微を知ると、生活にプラスになる。ボクが食べたかったのは「アジフライ」だけど、念のために昼ご飯に刺身を作る。味見のつもりの刺身だったけど、実にウマスギ、踊り出したくなる味だった。クロマグロの大トロは口溶け感があって、甘く、口の中が濃厚な何かに満たされる。脂ののったマアジも口溶け感があって甘く感じるが、それ以上にアジ科特有の強いうま味が、甘味と口の中で徒競走をするがごとくだ。思わず、酒が欲しくなったが、ご飯、ご飯で、イケないことに一合飯となりにける。
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銭州釣行の、エサのクサヤモロの煮節

八王子総合卸売センター、八百角の店頭に淡竹(ハチク)が並んでいた。魚屋に行く前に中くらいのを2本、バアチャンにお願いして確保する。淡竹はあまり大きくても小さくてもだめだ。八王子卸売協同組合、舵丸水産に行ったらクサヤモロが2尾並んでいた。寂しそうだったので連れ帰ってきた。これを煮節(生節)にする。煮節にはクサヤモロ、ムロアジ、マルソウダガツオなどいろんなものが使える。煮節の出来上がりはあんまりきれいではない。でも塩気の強い湯で煮上げたムロアジ属の魚は非常にうまい。マアジ属のマアジはおいしいことを誰でもが知っているが、ゆでたり、煮たりして、豊かなうま味が楽しめるのはムロアジ属なのだ。出来上がりを、尾の方を三分の一だけマヨネーズをつけて食べた。夜酒に食べたら、やけにおいしい。非常に豊かなうま味があり、小骨がないので食べやすい。さて、代金ゼロの生節で淡竹をたき、滋賀県日野町の焼き豆腐をたく。料理に関しては次回。
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新潟県村上市「大滝豆腐店」、手づくり豆腐

今回は道の駅で買ったが、「大滝豆腐店」は新潟県村上市から山形県鼠ヶ関に抜ける道、国道7号線沿いの板屋越という集落にある。村上市から北上すると商店もなく、昔はやけに寂しいところだった。1980年代、真夜中、ポンコツおんぼろシビックが故障したら、だれも助けてくれそうにない、なんて心細かったのが思い出される。今考えると、ただ通り過ぎただけ、だったのがちょっとだけ心残りだ。確かこのあたりは「しな布」で有名ではなかったか?今回の「大滝豆腐店」の豆腐は「栄養豆腐」とも言うのだと思うけど、この大きなチューブ型の豆腐を見つけると必ず買っている。「充填豆腐」には直方形の牛乳パックに入ったものもあるし、普通の豆腐型もあるけど、このチューブ型がいちばんかわいいし、おいしい。たぶんチューブと充填機がセットになって日本各地に普及したのだと思う。青森県、山形県、岐阜県で見つけて、すべて「栄養豆腐」だったが、今回はまったく同じ物なのに「手づくり豆腐」でしかない。イラストがやけに懐かしい。
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温暖化を感じる魚11 アカハタ

ハタ科アカハタ属の魚だ。ハタ科の中でも小型である。古くは本州中部以南という曖昧な生息域だが、現在は、本州以南に生息している可能性が高い。アカハタ属はハタ科の中でももっとも種が多い。南に行くほど種が多くなるが、アカハタはもっとも北に生息域を広げていた。関東では昔、地物のハタというと本種とマハタ属のマハタだったことがある。現在は北上しているが、昔、関東では伊豆諸島には非常に多く、まとまってとれる魚だったが、相模湾北部に、いることはいるがとても少なかった。駿河湾、遠州灘、紀伊半島なども産地だったが、最大の産地は九州だった。
コラム

番茶と青柳の違い

1ヶ月に1㎏くらいの緑番茶を飲む。煎茶は200gほどで、ここに自分で焙じた番茶も加わるので総量は不明だ。700㏄の薬缶に3杯の緑番茶と、450㏄の急須1杯の煎茶、1.5ℓの焙じた番茶なので、ボクの体の多くはチャノキでできている。
コラム

魚は近所のスーパーで 長崎県産天然ブリ切落としで2品。まずはポキ

赤道直下、ポキは小さな怪しい店でたむろしていた無国籍な人たちに教わる。フィリピン人の発音ではポキでミクロネシア生まれの男性は、どちらかというとポケだった。(逆だったかも)通訳は沖縄に出稼ぎに行ったため、日本語が話せるフィリピンの優男だが、ボクの特技は言葉がしゃべれなくても仲良くなれることなので、通訳以上のことが読み取れた。ポキは生で食べられる魚(なんでもいい)を細かく切って、ごま油とねぎなどでマリネする。ねぎとごま油が基本だけど、ねぎは熱帯では非常に高いのでティティレム(?)という葉を使うこともあるらしい。ポキはルール無用の混沌とした料理なので、あれがいいとか、ベストだとかくだらないことは考えない方がいい。作ったものは総て正解である。長崎県産天然ブリ・切り落とし(236g・税込み431円)で2品だけど、まずはポキを作った。ねぎとごま油と、ミニトマトだけの非常にシンプルなものだが、醤油を利かせると、結構うまい。今回はバゲットのスライスですくってはスエーデンのウオッカ、アブソルートの水割りをやり、またすくっては水割りをやる。醤油を使っているのに、なぜかスピリッツに合うが、たぶんこれは醤油多めで塩分濃度が高いからだろう。ミクロネシアかどこかの島生まれの男性にもらったトウガラシ(熱帯に多いキダチトウガラシ)のペーストを、楊子の先くらいの量つけると、ぐんとおいしくなる。量を間違えると地獄に落ちるけど、最小限でツンとくるくらいだとやけにうまい。考えてみるとブリである必要があるか、といえばない。ブリを堪能できたかというと、できなかった。生で食べられる魚だったら、マダイだってメジナだっていい。白身よりも赤身の方がいいけど、赤身でなければならない、ともいえない。ご飯にも合うのは、ポキ誕生に日本人も関わっているからだ。蛇足だけど、キダチトウガラシのペーストは非常に危険である。むしろタバスコやわさび、コショウなどの方が安全だと思う。
コラム

和歌山のアジは有名だけど

和歌山の「あじ(マアジ)」は関西では有名だけど、関東ではだれも「和歌山」に反応しない。大阪(大阪府大阪市)のすし屋さんなどで、「アジ 加太(かだ。和歌山市)」などとあると、さぞやと思うが、東京の人間には和歌山はみな和歌山でしかない。例えば最南端の串本で揚がろうと、箕島(有田市)で揚がろうと同じだ。だから今回の荷に「和歌山」だけではない情報があったはずだけど、舵丸水産(東京都八王子市)では、「和歌山がわかるだけで充分でしょ」となる。たぶんこれは豊洲市場でも同じである。和歌山県産は兵庫県淡路島産の半分以下の知名度しかない。「釣りアジ」なので、それ相応の値段であるし、単に和歌山県産だけとしかわからないのは残念だけど、ここ数ヶ月でもっとも上等な「あじ(マアジ)」だった。二日間に渡って刺身で食べた。その日に食べたら、不思議なことにあまりおいしくなかった。というか期待が大きかっただけに、落胆した。食感が強く硬いのである。翌日、食べたら激変していた。舌に触れた途端、ほどよい脂を感じたし、口溶け感もあった。しかも2日目なのに食感が心地よい。要するに下ろしているとき、2日目がいいと気づくべきだったのだ。我ながら修業が足りぬ。それにしても1切れの味が実に豊かである。満足度が高い。新潟県村上市「大洋盛 紫雲」がやたらにうまいが、「あじ(マアジ)」の刺身がうまいからかも。
コラム

神戸市板宿本通『MARUI』のメロンパンとサンライス

我がサイト最大のテーマのひとつが地域性だ。地域性のある食べものだけではなく、言語も集めている。水産生物はそのほんの一部でしかない。ただ、昔、和菓子の名は集めていたけど、パンの名は集めていなかった。集めるきっかけとなったのが愛媛県伊予市だ。昔、愛媛県伊予市で好きでもないのに好奇心で「メロンパン」と「サンライス」を買った。関東の「メロンパン」と似ても似つかない、アーモンド形というか、昔の洋食屋さんのチキンライスの形をした「メロンパン」だ。ところが別のトレイに表面が少し硬い、例えば別の種類の菓子が張りついているような、パンがあって、明らかに関東の「メロンパン」に見え、後に食べたら間違いなく関東の「メロンパン」だったものが、「サンライス」だった。同市散髪屋(理髪店)で散髪してもらっていて、その話になって、神戸も同じですよ、と教わった。実際に神戸のパン屋さんに行くと、関東の「メロンパン」は「サンライス」で、神戸の「メロンパン」はカステラ生地のアーモンド形で白あん入りだ、というのを確認するようになった。ただパン屋によって少しずつ違いがある。
コラム

宮城県産小ダイで2品。次は「塩焼き」

さて、まだ魚料理を作ったことのない人へ。けっして魚料理のハードルは高くない、とにかく作ってみなはれ! という話である。やたらに通ぶる人に限って魚をやけに選択的に食べていたり(魚を限定的に食べる行為は最低である)、たいして食べていなかったり、する。そんな偽物にはなって欲しくない。数打てば当たる、というか魚は日常的なものでしかないので、普段から食べるべしという話だ。ついでにもしも真の魚通がいるなら(まだ会ったことがないけど)、魚を食べた経験が多い人と=(イコール)である。ときに、この人、魚通かも知れないという人に会うけど、魚が好きで、日常的に食べているだけ、という人が多い。ひとりでも多くの人に、このような人を目指して欲しいものだ。マダイと言っても、今回のものは小ダイなので、非常に安い。安いけど、どんな料理にしてもそこそこおいしい。それがマダイのよさでもある。例えば、1尾で430円くらいなので、これで4人前(4回分)の料理を作り、おいしい時間を過ごせるのだからほんまに安い。さて、塩焼きは家庭料理の基本のキである。家庭料理は基本さえ学べばあとは自分流にアレンジするなり、しないなり、好きにすればいい。脂のないときなどバターや、マヨネーズ、オリーブオイルで食べてもいい。さて、小ダイの二枚下ろしなので片身は骨なし、片身は骨ありで、骨のある方を塩焼きにした。焼き上がったら冷めるまで待つ。焼きたてよりも、冷めた方が好きだからだが、焼きたてが好きならアツツといいながら食べるといい。まずは手で食べるところだけほぐす。これを肴にちびりちびりと5勺ほどの酒を飲む。酒は新潟県村上市「大洋盛 金乃穂」で、夜酒だけど、仮眠のための酒だ。それにしても冷めたマダイの塩焼きとは、なんとおいしいものか。皮の香りが冷めているのにするし、香りなのに甘く感じられる。そして端的な、わかりやすい身のおいしさ。半分だけ食べて、残りは翌日にご飯に炊き込むはずだった。困ったことに朝、仕事をしながら、お茶を飲みながら完食する。
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新潟市、越後新川の生物・食物図鑑27 マアジ

新潟県新潟市西区五十嵐新川漁港周辺の生物・食物図鑑を作っていく。新川漁協に水揚げされる水産物は量的には多くないが、多彩であるし、おいしいものだらけである。新川漁港の周辺には磯や護岸もあるし、きれいな砂浜もある。多彩な生物がいて、そんな生き物とふれあえるのも魅力的だ。マアジは北海道から九州までの沿岸に生息している。稚魚や若い個体は水深2mくらいの浅場にいて大きくなると沖に出る。成魚は寒い時季になると水深100mほどの深場に落ちていく。国内でもっとも人気のある食用魚で、マアジの嫌いな人はめったにいない。日本海側でマアジの産地というと、島根県や山口県が有名だが、新潟県でも素晴らしいものが上がる。新川漁港では水揚げもあるし、漁港で釣ることもできる。
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温暖化を感じる魚10 フエダイ

フエダイ科フエダイ属フエダイなので、科・属の和名のもととなった魚でもある。フエダイ科全体を代表する魚のようだが、フエダイ科には膨大な種が存在する。沖合いの深海に近いところにいるもの、サンゴ礁にいるもの、汽水域にいるものもある。その中にあってフエダイは浅場にいる種の代表といった存在でしかない。フエダイ科の魚は熱帯域に多く、先にも述べたように魚類の中でももっとも繁栄しているグループである。一属であるフエダイ属でも未だに新種が発見されているので「約」がつくが、国内に26種以上生息しているはずだ。本種は魚類学的に長い混乱期があり、和名は非常に古いが、現在の学名がついたのは宮崎大学の赤崎正人によって1983年である。また、昔の多くの図鑑や魚類検索で「本州中部以南のサンゴ礁や浅い岩礁域」という曖昧な生息域がのっているが、これも発見された海域での話であり、漁業的には鹿児島県以南の魚だった。徐々に北上しており、2026年現在の生息域は日本海は青森県深浦以南、太平洋側では茨城県以南だ。ただし漁業的には太平洋相模湾、山陰以南である。フエダイ属には西太平洋の温帯域から南半球までの広い生息域を持つ種が多い中、本種は中国大陸までの狭い海域にしかいないのも特徴である。比較的浅い岩礁域やサンゴ礁域にいる魚だが、非常に大きくなる。体長70㎝近くなるというと、マダイなど1m近くなるではないか、と思われるかもしれない。ただマダイは左右に平べったいがフエダイは厚みがある。例えば体長60㎝前後を実見するとびっくりするほど大きく感じる。紫がかった暗色の体に背中の後半に小さな白い点があるので、産地によっては「白星ふえだい」とも呼ばれている。
コラム

朝ご飯は、はぐらうりの醤油漬けと麦飯

麦飯と「はぐらうり」の醤油漬けというのも、夏、そのものだと思う。トラブル続きのけだるい朝に、かりこりとしゃきしゃきとした「はぐらうり」が体の火照りをとってくれる気がする。お茶の友として、そしてご飯の友とする。この場合、麦飯でなければ、もちろんボクだけの話だが、と思う。ウリ科の味の共通点は、ほの甘いところだと思う。あまり味がないのも特徴だけど、青い味というか名状しがたい味だ。しかも醤油との相性が抜群にいい。味よりもむしろ心地よい歯触りだとか、音だとか、がいいのかも知れない。「歯がぐら」つくようになった老人でも食べられるほど柔らかい瓜なので、「はぐらうり」だという。確かに食感がいいのに柔らかい。「はぐらうり」は雨除けのハウスくらいはあると思うが、基本、露地栽培だろう。無理矢理促成栽培することはない、はず。だから季節をテーマの中心としている我がデータベースでは、貴重だと思っている。
コラム

栃木県茂木町『関菓子店』のおふくろまんじゅうなど

栃木県芳賀郡茂木町に和菓子屋が多い。そのどれもが魅力的であんこや皮などが申し分なくうまい。さて、関菓子店の名物は「おふくろまんじゅう」みたいだ。茶饅頭で、生地に黒糖を混ぜており、つぶあんで、実に素朴だ。
加工品

室温摂氏26℃、冷たい素麺はあじ煮干しがいいかも

久しぶりに「あじ煮干し(マアジの幼魚の煮干し)」でとっただしで作ったつゆで食べる冷たい素麺がやけにうまい。マアジの煮干しは浅い味のだしになる。カタクチイワシの強くて、喉元を過ぎても残るというのではなく、あっさりしているのだ。ボクの故郷、徳島県美馬郡つるぎ町半田の杉本手延製麺の太めの素麺が、「あじ煮干し」のつゆにからむと、思いのほか深い味になる。みょうがを刻み、ちょっと贅沢だけど走りのすだちを絞り込んで、すすると名状しがたい味である。我が家で使っている煮干し類の基本はカタクチイワシ、ウルメイワシ、マアジだけど、マアジのよさをわかっていなかったかも。大阪に行ったら、煮干しを買いだおれするのだ。
コラム

2026年6月15日、今季もまた初タカベは下田産

八王子卸売協同組合、舵丸水産に静岡県下田産、並タカベ(体長20㎝弱)が来ていた。今や上タカベ(体長20㎝以上)は豊洲に行かないと見られない。それでも今回の体長18㎝は充分な大きさだし、決して安くはない。東京都民にとっては庶民的な味だったのに、いつの間にか手の届かない存在になっている。さて、タカベといえば塩焼きで、念のために作り方は下記に。残念ながら今回の個体は炎が出るほど脂があるわけでもなく、満足度はほどほどなれど、やはりうめーな、なんて落語の八っつぁん、くまさんのごとき言葉が飛び出してくる。落語の主人公が今の値段を聞いたら、べらぼうめ! なんて言いそうである。それでも食べないと夏が来た気がしないのがタカベだ。50年ほど前、神楽坂とか八重洲で炎を見ながら焼けるのを待っていたのが、ボクの人生の初タカベだけど、そんな景色も今は遠い昔のこと。昭和は遠くなりにけり(矢野誠一のまねなのだ)。タカベの味は独特の脂の味だと思う。鋭角的な例えばウニを思わせるような、硫黄系の風味のある脂が作り出す味というか、あれこれ言葉が出てくるが、説明すればするほど実の味から遠ざかる。小魚なのに強い味である。ついでにこの脂は皮近くに多いので、皮が矢鱈においしく、身もおいしいという感じ。初物は小さめだったのでビックリ仰天するほどの味ではなかったけど、その内、豊洲にいってビックリ仰天するくらいの値のタカベを買って、ビックリ仰天したい。もちろん合わせたのはサッポロの黒ラベル。
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秋田県横手市十文字町、近田久さんの菜切り包丁

いろんなことが重なって道具類を整理した。持っている包丁を並べてみると、ボクの人生からすると二度と包丁を買うことがないだろうな、と思うほどの数だった。中に菜切り包丁(東京都下町では「なっきりぼうちょう」で、地域によって呼び名が変わると考えている)があって、秋田県横手市十文字町の朝市で買ったものであることを思い出した。朝市に店を出していた鍛冶屋の近田久さんから買ったもので、農機具である鍬や鍬は並んでいなくて、包丁だけを売っていた。並んでいたのは菜切り包丁と出刃包丁で、まあまあしつこく買ってくれと言われた末に、菜切り包丁を買う。刃渡り16cmほどの小振りのもので、2017年に買って一度も使っていなかった。せっかく発見したのだからと研いで、使ってみたらよく切れる。ただし数回使うと研ぎ直さなければならない。
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大分県産クロコショウダイは脂乗りすぎ

八王子卸売協同組合、福泉で見つけたクロコショウダイは、我がデータベース、2個体目である。産地は大分県佐伯産で、体長36cm・1.8kgであった。成魚の北限は三重県熊野市というイサキ科コショウダイ属の仲間である。熊野市の前に成魚が上がったのが愛媛県愛南町で、豊後水道を挟んだ大分県佐伯市の四国側、北緯はほぼ同じだ。珍魚の定義は難しいけど鹿児島県本土以北では珍魚だけど、沖縄県で揚がったら食用魚でしかない。さて、2014年、鹿児島県鹿児島市の田中水産、田中さんに送ってもらったとき、刺身にしたら文句なしにおいしかった。卵巣が膨らんでいて、脂がさほど乗っていなかったためかも。それでも豊かな脂が口の中で溶けて濃厚だけど、素晴らしい味だった。ところが今年、2026年に食べたら、素晴らしいというよりも、味が強すぎた。前回の11月の抱卵個体以上に脂が強く、口に入れると硬いのに口溶け感がある。口溶け感からくる甘味も強く、魚らしい味はいちばん後にくる。今回は生殖巣が膨らんでいなかったというか内臓脂肪がつまっていた。脂という意味では最旬かも。
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魚は近所のスーパーで 宮城県産小ダイで2品。まずは「からめ煮」

今回はあくまでも魚を普段食べない人のための話であるが、もっと小売店、スーパーマーケットや魚屋をちゃんと活用すべし、という話でもある。小売店で魚(水産物)を買うことは魚を学ぶことにもなる。もしもそこから上に踏み出したいなら踏み出してもいいけど、それ以前にたくさん水産物を食べるべきだ。ついでに魚(水産物)は上等なものでもダメなものでも、徹底的に食べてみないとわからない。取り分け、いいものだけを食べていると、水産物オンチになってしまう。かねがね天然の水産物をもっと日常に取り入れるべきだと思っている。その方が自然に優しいし、体にも、水産物の勉強すれば家計にも優しい。ついでにいうと、普通に暮らしている人は、魚を下ろす必要もないと考えている。例えば魚のための包丁・まな板だって不要である、という話もしたい。包丁などできるだけ買うな、と言いたい、要するに包丁を買うくらいなら、魚を買って〈魚経験〉を増やせ、だ。包丁を使う部分はスーパーがやってくれる。その親切度に違いはあるが、料理法まで教えてくれて、下ろしてくれる小売店が増えている。もちろん切り身になっていたり、水洗いしていたりというものは昔からあった。この社会インフラ(ちょっと大げさだけど)は、全国的に整い始めている。日本中のスーパーマーケットをまわっていると、それがひしひしと感じられる。魚料理はできるだけ小売店に頼り、できるだけ手間をはぶけ、だ。今回は近所で売っていた宮城県産の小ダイ(たぶん体長25cmくらいのマダイ)税込みほぼ430円を料理してみる。水洗い(鱗と内臓を取る)して、二枚(頭部を落として左右いずれかの身を切り取る)に下ろしている。骨つきと、骨なしがある。この骨なしをこってり「からめ煮」にしてみた。煮染めるのではなく、とろとろの煮汁をまとわせたといったものだ。思ったほど難しくないので、作りたい方は、下記に。さて、こってこての煮汁だけど、マダイの身を割ると煮染めていないので中は白い。これを煮汁をからめて食べる。マダイの身の味わいはそのままで、皮目の独特の風味すら感じられる。面白いもので、料理法としてはご飯の友だが、酒の友という人も多そうである。ボクはこの半身の半身を夜酒の友とした。430円の4分の1で、夜酒が飲めたことになる。合わせた酒は、「最近、灘の酒売っていないね」、という好奇心だけで買った「白鶴大吟醸(白鶴酒造 兵庫県神戸市)」。大吟醸なのに非常に安く、可もなく不可もなくという味だった。
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聖子を探す旅7 三宮は土砂降りの雨、地を裂く雷

1928年(昭和3年)、大坂市福島生まれの田辺聖子は大阪府大阪市福島の商店街、兵庫県尼崎市出屋敷・三和市場、兵庫県神戸市異人館通り、同市湊川神社上、そして兵庫県伊丹市と居を移している。ある意味、田辺聖子はエトランジェである。1924年(大正13年)、神戸市元町生まれ陳舜臣が一時住んでいたのが異人館通りだ。神戸っ子の陳舜臣は、無国籍な神戸そのものの明るさと潔さがある。大好きなふたりの作家が暮らしていた異人館通りは通ったことはあるが、通り過ぎただけだ。だいたい観光地が嫌いなので、無理に行かなくてもいいかも、と三宮駅で考えていたら、急に当たりが暗くなる。北の方を見るとモクモクと雲が沸き立つ。そこにどーん、と重い地響きがきて、真横にいたオバチャンたちが「雷はんや」と騒ぎ始める。雨が落ちてきたと思ったら、車のボンネットがとんとんを音を立てる。驟雨沛然、ならいいが一向に雷はんも小さな雹混じりの雨も止まない。がんばって雨が上がるまで待ち、生田神社を抜けるとまた雨が落ち始めた。
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カルパッチョは、オコチャマに作らせたい!

魚ポチ、フーディソン(魚ポチ)の星野健一郎さんから愛知県蒲郡市で大形のコモンハタが揚がったと連絡が来た。今回のものは若いとき事故にあったようで寸詰まりだが体長53㎝・4.7kgもある。漁港の競り場には、もっと大形が写真には写っていたので、改めてコモンハタの大きさを再認識した。できるだけ大形のコモンハタを探しているのでありがたい。さて、刺身にもしたし、いろんな料理にしてみたが、最後に2回2種類のカルパッチョを作った。カルパッチョは本来、イタリア、ヴェネチアにあるハリーズバーで出された肉料理で、画家のカルパッチョに因む名だと、30年くらい前の専門料理(柴田書店)にあったはず。誌面を思い出しながら書くと、にんにくの香りをつけ、オリーブオイルを塗った皿に生の牛肉の薄切り並べて、上からとんとんとたたき馴染ませる。上から白いマヨネーズソースをかけるというもの。要するに非常に単純な料理だ。イタリア料理だというと大層なものに思ってしまうかも知れないが、魚貝類を使うと和食になる。イタリア風和食である。たぶんだけど料理店の、イタリア風和食カルパッチョよりも、自宅で作るイタリア風和食カルパッチョの方がうまい。しかもオコチャマが作るとなおうまい。魚貝類で作ると和食となるが、このイタリアのカルパッチョの基本的な作り方には従う、もちろんぼくはだけど、こととしたい。ちなみにカルパッチョはボクの師匠、当時小学生(今は高校生)にも教えたが、家の定番料理になっているという。たぶんオコチャマの方が発想が自由なので上手に作れるのだと思う。上に乗せるものは、本家本元とはなんの関係もないので自由自在、勝手にしやがれ! といった感じで作るといい。本格的なんてアホな言語は捨てて作るべし。カルパッチョの作り方は下記に。今回は上に乗せるものを変えて2種類作った。最初はディル、紫玉ねぎ、甘夏、ピンクペッパー。コモンハタの身は薄く切りつけてもうま味がある。そこに、ひと味足すとぐんを味がよくなる。基本的にはオリーブオイルと塩と果物だと思っているのだけど、肝心の果実である甘夏は酸味と薄皮の微かな渋味で、十二分においしいとは思うものの、ボクは甘いのが好きなので、もの足りない。
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今季初ウメイロは刺身から

八王子卸売協同組合、舵丸水産、クマゴロウが銭州で大釣りをして帰ってきた。持ち帰った魚を見ると、ウメイロは数知れず、「おなが(ハマダイ)」だって大きいし、気になるメイチダイらしき魚も連れ帰ってきた。そこから選んで持ち帰ったのがボクにとっての今季初、ウメイロとなる。昔、夏になると白身魚がなくてこまっていたときに伊豆諸島から来るウメイロは多くの都内料理人にとって救いの神だったはず。ついでに言わせてもらうと、ウメイロはとってもかわいいのである。小さいという意味ではなく、コケティッシュというべきか? つぶらな目を見ているとついつい手が出てしまう。このウメイロも目立たぬ程度だが、入荷量が増えている。さて、ウメイロの刺身は東京では、今や夏の定番といったものかも知れない。東京を代表する魚となったのは、かなり昔のこと。伊豆諸島、小笠原から築地に魚が送られてくるようになった途端に知る人ぞ知る、となった。ただし量的には少なかった。それが入荷量が増えたのは流通が発達するとともに、知名度が上がったためだ。ちなみにこの知名度というのは流通のプロの間のことであって、消費者にとっては未だにマイナーな存在でしかない。今や夏の魚の代表格となったウメイロをまずは生で食べてみるといい。刺身はいつ食べても、何度食べても感激一汐の味だ、としかいいようがない。丹精な味わいで欠点がない。5月以降の個体は脂がのっていて、口溶け感からくる甘さがある。非常にうま味豊かで、後味がいいときては手放しでウメイロを食べていることに喜びを感じる。
基本情報

温暖化を感じる魚09 キジハタ

ハタ科アカハタ属の比較的浅い岩礁域にいる小型のハタだ。生息域は琉球列島を除く本州以南の日本列島から朝鮮半島、中国大陸、南シナ海・トンキン湾まで。日本列島から真南に熱帯にまで生息しているのだはなく、生息域は西の中国大陸方面に伸びている。キジハタという標準和名は相模湾と駿河湾東部での呼び名を採用したもので、鳥のキジを思わせる文様があるからだ。ただ、この地域ではそれほど重要な魚ではなく、馴染みのない魚であった。むしろ「あこう」と呼ぶ地域の方が本種を珍重していた。これが関西から瀬戸内海にかけての地域である。
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久しぶり! 「目光」の唐揚げでビール

アオメエソ科のアオメエソ・マルアオメエソ問題には苦しめられた。あのようなものは大量に集めて、同じ船の50個体くらいを比較して、個体間でどれくらい変異があるかを調べればわかりそうなものだが、種をなくすというのは魚類学者にとってはもっとも難しいことのようだ。さて、今回のものは茨城県北茨城市のものなので旧マルアオメエソで、今やアオメエソだ。南の個体でついた標準和名が、北でついた標準和名を消したことになる。でも、北の呼び名、「目光」が全国で使われるようになっているので、南北名前では1勝1敗ともいえる。持ち帰ったらささっと鱗をなぜるように取り、頭と内臓も取る。水分をよくきり、片栗粉をまぶして二度揚げする。揚げ上がりに塩と五香粉を振る。もちろんコショウでもチリペッパーでもいいし、なにも振らなくてもいい。ということで、「目光」の定番料理、唐揚げにかぶりつきながら、ビールを逢魔が時に飲む。頭を取ったらら3尾で40gほどなので軽いおやつといった感じだし、まだ明るい内のビールは仮眠をとるため、なのでなんとなく自由な、よい時間が過ぎていく。それにしても1980年代、茨城県日立港で、船が出なかったので魚を買った苦い経験がある。そのときにオマケでもらった「目光」が、安すぎるという意味での未利用魚ではなくなっている、そんなことも思い出す。
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台風一過、三重県産大カツオを4分の1

6月4日は、台風一過で八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産にめぼしいものはなかった。でも、このとき豊洲仲卸から、「これいらないか?」と魅力的な画像が送られてきた。こんなとき、東京豊洲と八王子の経済力の差を感じてしまうが、魚のないときの魅力的な魚の値は法外なものだった。。我が家でも災害が、もちろんボクのだらしなさからくる災害が起きていて、できるだけ手抜きの出来るものを探した。あったのは大形のカツオで、千葉県産と三重県産があり、三重県産のカツオを安いと言うだけでの理由で買った。もとは10㎏あまりで、これを4分の1にしてもらい持ち帰る。朝ご飯はカツオを乱切りにし、朝ご飯とする。ご飯をチンしていて思ったのは、白飯の時は過ぎているのに、白飯だということ。あわただしいので麦飯に切り替えるのを忘れたのだ。三重県産は脂はないよ、と言われたが、ボクにはどんぴしゃりのカツオだった。近年、脂脂したものよりも軽い酸味とうま味がけれんなく楽しめる、のが好き。にんにくとしょうが、走りの青ゆずを張り込んで、刺身定食にする。たっぷりカツオを食べて、5勺弱のご飯をくらって、時計を見ると午前9時となっていた。
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聖子を探す旅6 王子公園駅改札口前、ぽーとでいきなりワンタン、中華丼

1928年(昭和3年)、大坂市福島生まれの田辺聖子は小説、エッセイを読む限りでも、お上品なマダム的な店ではなく、福島の商店街、尼崎出屋敷・三和市場、神戸の湊川・新開地の市場が好きだったようだ。少しでも多くの市場を見てみたいと、岡本駅から王子公園駅で途中下車して、気がついた。そうだ、今日は水曜日だ。聖子を探す旅は市場旅でもあると、わざわざ市場最寄りの改札を出て、曜日が浮かび、同時に中華料理店があったという次第だ。12時前、その店は実に狭くカウンターだけの席はほぼ埋まっているように見えた。のぞき込んでいたらオカミサンらしき方が「席ありますよ」と指差して、おいでおいでする。手前のお客が少し体を反らせて、どうぞ、と言っているようだった。前日の夕方に軽く食べて、伊丹でしょうが天を1個だけなので、お腹と背中がくっついている。見たところ地元の人ばかりなのでへっこんだ腹が期待で膨らむ。いろいろ考えている余裕がないので、目の前の張り紙のいちばん上の中華丼とワンタン(小)にする。隣のオッチャンは小柄なのに天津飯大盛りなんて注文して、あいよ、という感じでカウンターの中のオヤジサンが大量のご飯を丼に盛り付ける。作り慣れて適当に力がぬけた感じがいい。オッチャンが1人で料理を作り、小柄なオカミサンは幅の狭い厨房を一二の三とタイミングをとって左右に入れ違う。それを見ているだけで待つ間が楽しくなる。ビールをお願いすればよかった、かと思ったけど、最近、昼酒はききすぎて困る。さてワンタン(小)がやってきた。空きっ腹なので急いで口に運ぼうとしてあまりの熱さに、レンゲが近づいただけでアツツとなる。ものすごく熱い。でも、フーフーを10回くらいして口に入れたスープがものすごくおいしい。
コラム

酒の肴は磯つぶの醤油煮

突き出しに煮た巻き貝は、とても一般的である。でも煮た巻き貝で夜酒を飲むことはめったにない。その日、深夜とまでは言えない、夜にほっと一息、酒を飲みたいけど、少しだけ何か、というときの何かがなかった。そこで「磯つぶ(エゾバイ)」の醤油煮、「煮つぶ」を肴とする。酒が主役に飲むのが夜酒だと思っているので、肴はさほど存在感を感じないものの方がいい。この場合の存在感は味だけではなく、ボリューム、歯ごたえも含んでいる。「煮つぶ」は存在感が強すぎる。しかもいちいちわずらわしいので酒に集中できない。失敗とまでは言えないが、突き出し(お通し)ならいいが、夜酒には向かないな、と思う。それでも「磯つぶ」の醤油煮は身(足)が柔らかく。わたには甘味がある。この、わたの甘味を伴う、ほくほくした感じがいい。次回は酒の初手に食べよう。酒と合わせるちょっとした「食べもの」の、ちょっとしたことに思い巡らせながら、新潟県佐渡の酒、「北雪」を5勺だけ。
郷土料理

兵庫県香住浜貞商店の焼にぎすと豆腐をたく

昔、大阪府、兵庫県や岡山県の山間部で淡水魚の「はえ(オイカワ)」を焼き、弁慶(藁を束ねたもの)に挿して干したもの(焼き枯らし)をたきものに使っていた。この「はえの焼き干し」が手に入らなくなったところに、日本海のニギスを浜で焼いた「焼にぎす」が入ってきて、代わりに使ったみたら「はえ」以上にうまかった。以後、「焼にぎす」が山間部だけではなく都市部にも広がったという話を、大阪市での水産の集まりで聞いている。兵庫県美方郡香美町で「焼にぎす」を作っている『浜貞商店』のパンフレットに「焼きす、豆腐、ねぎの炊き合わせ」がある。現在では「焼にぎす」だが、古くは単に「焼きす」だったことがわかる。横道に逸れるが、最近、なんでもかんでも標準和名にすべき、とか標準和名が正しい名だとかいう愚か者がいるが、やはり本来の「焼きす」がいいと思っている。さて、消費地での話では、田辺聖子の小説、『朝ごはんぬき?』(田辺聖子 新潮文庫 1979年単行本 1982年文庫化)に「焼にぎす」のことが出ている。ちなみに田辺聖子は食通ではないが、食に関しては実にリアルである。食通以上に食のわかる人と言ってもいいだろう。1970年代、神戸市の普通の通念がこの会話に出ている。主人公、お手伝い兼秘書の明田マリ子が、小説家、秋本えりかの夫、土井氏に。「買物をしますが、何かお好きなもの、ありますか。———でも、お口に合うようなお料理ができるかどうかわかりませんけど……」「うーん。そやな。では……」と土井氏は起き上がった。「キスの焼いたのを串にさして売ってますなあ。あれを甘辛う煮(た)いて、そのおつゆで焼豆腐をたいて下さい……」明田マリ子はこの日、新しいスーパーではなく、その奥の市場で買い物をする。会話の中の「キス」はシロギスである可能性もゼロではないが、当時からシロギスは高級だった。とても市場で気軽に買えるものではない。明らかに、日本海から来ていた「焼にぎす」である。兵庫県神戸市湊川に住んでいた田辺聖子が通っていたのが湊川の市場である。この市場や商店街で作り方などは、市場で聞いた可能性が強い。この「焼にぎすと焼豆腐のたいたもの」を実際に作ってみる。まずは「焼にぎす」を酒・みりん・醤油・水で甘辛くたく(関西の料理なので煮るではなくたく)。「焼にぎす」を取り出して、今度は焼き豆腐をたく。ねぎなどはお好みで加え、炊き上がりを皿に盛る。浜で焼いたニギスから脂と濃厚な味が出る。甘辛くたいた「焼にぎす」のおいしさに驚くかも知れないが、本命は焼き豆腐で、味に滅法奥行きがある。また、内臓の入ったままたくと、こくのある味になるが、苦みが出るので万人向きとは言い難い。取った方が苦みが少なくて、ご飯などに合う。
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宮城県名取産シリヤケイカの刺身

比較的漁獲量が多く一般的なコウイカ類(体の中に貝殻の痕跡である甲を持っている)の中では本種は少しだけ評価が低い。昔、江戸湾(東京湾)にたくさんいたので東京都・千葉県西部で「真いか」と呼ばれていたのだけど、安くておいしいので庶民の味方だったはずだ。大方のイカが高止まりしていて、海は大荒れというときには、現(うつつ)に生きるボクにも、シリヤケイカは救いの神のようだ。シリヤケイカはコウイカ同様、刺身で食べることが多い。コウイカと比べられることが多いが、劣るのは食感だと思う。少し柔らかいのだ。ただし、イカらしいう複雑なうま味成分からくる甘味と、イカらしい風味が楽しめる上に、あえて言うと柔らかいのが好きならシリヤケが好きという向きもあると思う。
コラム

神戸市東山商店街のミンチカツ

ボクの生まれた徳島県美馬郡貞光町(現つるぎ町)の商店街に1960年代、「ミンチカツ」があったのか、どうか記憶にない。ボクの家の前、狭い道路の向かい側が肉屋で、ときどき10円、のちに20円のコロッケを買って食べていたが、「ミンチカツ」は食べた記憶がない。ときどき泊まりに行っていた徳島市の親戚のおばちゃんの家は助任橋そばだったけど、ここで初めて「ミンチカツ」を食べた。「コロッケもうまいけど、ミンチカツの方がええなー」と思った。上京して江戸川区小岩に住んでいたとき、「ミンチカツ2つください」、と言ったら、「メンチカツ2つだね」と言われた。学校の隣の居酒屋でも「メンチカツ」だった。なぜ、関西とか徳島では「ミンチカツ」で、関東では「メンチカツ」なんじゃろう? と思ったものだ。そして今回の神戸旅、神戸市兵庫区東山商店街、『ほたかビーフ』で買ったのが、「ミンチカツ」と「牛カツ」だった。

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