酒解禁は鰭酒とす

保存がきく乾し鰭

トラフグの鰭

10月に銚子産トラフグは鰭を切り取り干し上げて保存して置いた。背鰭・胸鰭・臀鰭・尾鰭で5枚の鰭が取れる。
トラフグのフグ科トラフグ属の魚は、フグの中のフグだけど、同属で鰭を利用していいのは皮に毒がない、トラフグ、カラス、シマフグの3種だけである。トラフグがいちばん水揚げ量が多いので、市販の鰭酒の鰭の多くがトラフグのものだ。
フグ科で皮に毒のないシロサバフグやクロサバフグなどでも作れる。スズキでも、マダイで作っても鰭酒の鰭にはなるものの味は数段落ちる。あえていうと、トラフグと違って鰭に厚い皮膜の層がないためではないかと考えている。
鰭の干し方は自分流で、簡単至極な方法である。
鰭を切り取り、表面のぬめりをタワシで磨く。
もちろん軽くだがタワシで磨くことで鰭の表面が傷つき、味が出やすくなるのだと思っている。
水洗いして水分を拭き取る。
これを瓶などに張り付けてかりかりに干し上げるだけだ。
干ものと言うよりも乾物といった方がいいだろう。
出来上がりを、ケースに乾燥剤を入れて冷蔵庫に保存すると半年くらいもつ。

とにかく徹底的に鰭の香とうま味を引き出す

鰭酒

さて、深みのある湯飲みを温める。
酒は灘の剣菱とか菊正宗がいいが、気分の問題で酒はそのときあるものですましている。今回の酒は神奈川県厚木市の盛升である。
鰭をできるだけこんがりあぶって、熱々の湯飲みに放り込み、沸騰した状態の酒をそそぐ。
たぶん口当たりをよくするためなのか、火を入れる人もいるが個人的には不要だと思う。
今回は鰭3つで作ったが、粋じゃないボクは熱燗を注ぎ、1分ほど(曖昧だけど)フタをして待ち、出来上がりに徹底的に湯飲みの鰭をいじめる。
いじめておいしさを引き出す。
こんな小さな鰭なのになんてこったい、と口中の天井に驚くほど強いうま味があって、口中の下の方に酒の味が通奏低音のように感じられる。
この味が口の奥で一緒になって消えて行く。
禁酒状態なのに7勺の、酒を、というよりも時間を楽しむ。


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