魚の呼び名学13 オハグロベラは醤油屋のかかあ、か?
魚類の中でも超エキセントリックなお姿をしている
オハグロベラ
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オハグロベラは本州以南の浅い岩礁域(磯)に普通に見られる、体長20㎝弱の小魚だ。
一度見たら忘れられない文様だし、顔つきをしている。
食べたらまずくはないが、食物の味は目から受けるイメージに左右されるとしたら最悪の魚である。
直木賞作家の難波利三は島根県邇摩郡温泉津町(大田市温泉津町)に1936年に生まれた。
大坂市の市井や、上方芸能、芸人の世界を描くことで有名である。
短編「雑魚の棲む路地」に雑魚・小魚の〈醤油屋のカカア〉が出てくる。
〈醤油屋のカカア〉はほかの文献に見当たらないが、文脈からベラ科の魚である可能性が高く、難波利三の出身地からしてオハグロベラである可能性が高い。
島根県益田市には〈ショウヤノババア[庄屋の婆]〉、〈ショウヤノカカア[庄屋の嬶]〉がある。
ついでに島根県東部には、〈カジヤノババア〉というのがある。
また日本海西部、長崎県平戸市にも〈しょーやのかか[庄屋の嬶]〉がある。
女性の年齢や婚姻による呼称という共通点が日本海山陰から日本海西部にかけて見られる。
醤油屋、鍛冶屋と庄屋ではあまりにも差がありすぎる。
鍛冶屋と醤油屋はどことなく「黒ずんだ」というイメージがありオハグロベラの黒を基調とする強烈な姿に合っている。
もともとの基本形の呼び名があり、それが変化したのだろう。
参考文献/『雑魚の棲む路地』(難波利三 集英社文庫 1984)、『島根の魚』(島根県水産試験場)
協力/齋藤遼さん(島根県益田市)、福畑敏光さん(長崎県平戸市)
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