甘エビもエビで、リスク大1 パスタ

エビは頭からダメになっていく


市場に通うということは市場の呼吸・体調のようなものを感じることでもある。魚屋にも忙しい時期と、閑古鳥が鳴くときとがある。読みのきかないときと、読みの当たるときがある。市場だけではなく魚屋というものは悲喜こもごもなのである。だから最近の個人経営の魚屋には魚の種類が少なくなり、これが魅力低下に繋がっているのだ。
よく市場流通は高いといわれるが、実は安いのである。なぜならば生鮮品を扱うということは大きなリスクを伴う。このリスクを流通の様々な段階で軽減しているからだ。
さて、魚屋でもっとも危険な商材はなにか? 生のエビである。冷凍エビは多少値が張ってもリスクは少ない。昔、海辺の民宿で甘エビ食べ放題という不思議なことをやっていたのをテレビで見ている。まん丸い顔をした下品な女性が、「こーんなにたくさん、こーんなに安く食べられますよ」なんてやっていたが、ぜんぜん安くはない。むしろスーパーで買った方が安いし、市場の仲卸でブロック買いするとその半値以下で二倍量が食べられると思ったものだ。海辺までの交通費、宿泊代、しかもアイスランド産の甘エビを素晴らしい魚貝類が揚がる海辺で食べる、なんて不気味でしかない。
さて、八王子総合卸売組合、マル幸で、生の甘エビ(ホッコクアカエビ)の頭部を落としていた。売れ残りである。
今、国産の甘エビは非常に高い。大損害だけど、マル幸は上物を売るのが身上なので、トップクラスの甘エビは必須アイテムなのだ。ちなみに生の甘エビの味は格別である。いかに冷凍技術が進んでも、冷凍エビは生のエビと比べると、味は半分以下でしかない。
売れなかったら加熱用特売に回して安く売るしかない。これが魚屋の日常である。
こんな潔さが、マル幸のよさでもある。

濃厚な味を凍頂ウーロン茶で


甘エビは思った以上に使える素材なのである。頭部を落としてほぼ1㎏を買い求めてきて、小分けにして冷凍、日日、いろんな料理を作る。
まずはパスタだ。ホッコクアカエビのタラバエビ科の特徴は甘味である。多彩なアミノ酸がねっとりと混ざり合って作り出す甘みで、牛乳やバターととても相性がいい。
ペンネを鍋に放り込みゆで始める。ゆで時間に合わせて殻を少し残して剥いた甘エビと玉ねぎ、パプリカをニンニク風味をつけた油の中でつぶしながらソテーする。ゆで上がり時間が近づいたらたっぷりのバターと牛乳を加えて乳化させる。加減を見てパスタのゆで汁を加えたり、塩を足したりする。
コショウを振り込み。パスタと合わせて、出来上がりだ。
白ワインが欲しいところだけど、ぐっと我慢して凍頂ウーロン茶。


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