甘辛い「いか豆腐」はスルメイカで作りたい
平凡な人間の平凡な料理を作るのは意外に難しいのだ
ご飯のおかずにも酒の肴にもなる料理が、とても好きだ。
そこにあるだけで心が豊かになる料理、できるだけ平凡な、なにげない料理が好き。
テレビやキワモノの雑誌で究極のとか「めっちゃ(この言葉嫌いだけど、いつどのように生まれたんだろう)」とか、「レジェンド(こんなバカなことを言われたら人生終わり)が作った」とかではなく、なんとなくそこにある料理こそ食べたい料理なのだ。
だいたい特別に思える料理は凡人でも出来るけど、平凡な料理は非凡な人間にしか出来ない。そういう意味でボクは非凡になりたい。
そんなこととは関係なく、サイト内のシステムが変わったので、ボクが日常的に作る料理も載せることにした、というのもある。
「いか豆腐」もそのひとつだ。
ご飯にも合うし、酒、取り分け甘口の日本酒にも合う。
鍋止めしてぐっと甘辛い調味料が均質に混ざり込んだ豆腐と、長野県の『勢正宗』などと合わせると、かけがえがない気がする。
ちなみにスルメイカと里芋は東京都多摩地区・奥多摩地区の秋祭の料理だが、ボクはこの里芋スルメイカと、豆腐スルメイカを代わりばんこに煮ている気がする。
甲乙つけがたいものだが、ふたつとも、「うま味豊かなで、イカの風味たっぷりなスルメイカの味」を素直に受け入れる、からうまいのである。
今回のスルメイカは大漁だった時期にはバラになっていたはずの若い個体なので、煮ても軟らかい。
今回は若いイカ2はい、豆腐2丁を煮て、鍋いっぱいになったが、一度に食べてしまいそうで恐かった。
実は冷めて翌日、別の味に変身するのである。
冷たく冷やした煮つけは、スルメイカがやたらに味わい深く、豆腐だって1個あたりの満足度が増し増しとなっているのだ。
2日続けて「いか豆腐」のある生活を送れた。
これがボクの幸せって、ことかも。
バライカが1本売りに大変身している
八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産でスルメイカを買った。小振りで外套長(刺身にする部分と鰭を足した部分)20cm・150g前後なので、昔ならバラ(同じ方向に並べないでバラバラに並んでいたもの)になったかも知れない。
これをちゃんと並べた状態で送ってくる、そこに深刻なスルメイカの不漁を感じとれる。
それにこんなサイズなのにまあまあ高い。それでも、この日の値段は近年の平均価格からすると安いのである。だからついつい手が伸びる。