マガキ
代表的な呼び名カキ
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珍魚度・珍しさ | ★★ 少し努力すれば手に入る |
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魚貝の物知り度 | ★ 知らなきゃ恥 |
食べ物としての重要度 | ★★★★★ 非常に重要 |
味の評価度 | ★★★★ 非常に美味 |
概要
生息域
汽水域、内湾。
日本全土、東アジア全域。
最近ではフランス、オーストラリアなど世界中で養殖されている。フランスなどでの生食用カキの多くはマガキ。
生態
マガキは交代的雌雄同体。
性転換し、生殖は別個体が交代で雌雄の役割をする。
産卵期は6月から8月、一部秋に産卵する個体もある。
受精後、プランクトン期(トロコフォラ、D型幼生)を経て2〜3週間ほどで固着生活にはいる。
また岩など硬いものに好んで付着する性質を持つと思われているが、本来は干潟泥質に浮かぶように成長。またそのカキに別個体が付着していく。このたくさんのカキ殻の大きくなったものをカキ礁と呼ぶ。
殻長20センチを超える。左の殻が軟体を入れる器になって、ものに付着する。楕円形で成長脈が重なったように見え、板状になる。
基本情報
一般的にカキと呼ばれることの多いマガキは日本全国の海岸線に普通。殻付き、むき身などで秋から春にかけて最盛期を迎える食材でもある。
本種、イワガキ、スミノエガキの3種が国内で主として食用となっている。中でもカキ類だけではなく、二枚貝の中でももっとも生産量の多いのがマガキある。
冷凍されたものも多く出回っており、年間を通して利用されている。
また最近三倍体を作り出すことに寄って周年の出荷も試みられている。季節感がなくなるのは残念であるが、ほぼ養殖されていることを考えると致し方ないだろう。
カキフライ、鍋物、中華料理など、マガキはどんな料理にも引っぱりだこである。栄養学的にも優れた食材で、疲れをとったり、肝臓の働きを助けるグリコーゲン、微量元素である亜鉛などが豊富だ。
珍しさ度 食べるためであればいつでもどこでも手に入る。ただ貝殻がついた生きたものを手に入れるにはそれなりに努力が必要である。
水産基本情報
市場での評価 10月から3月いっぱいの入荷は非常に多い。近年年間を通して手に入る。また国産の他に韓国などからの輸入もある。値段はやや高い。また各地にブランドもの(特定の高級品を出す)がある。天然ものは非常に少なく、ほぼ養殖もので占められている。
漁法 養殖
産地(漁獲量の多い順) 広島県、宮城県。岡山県、岩手県
養殖は初夏に稚貝を採取し、翌年冬、1年で出荷するもの。また盛夏に採取して翌年夏を越して2年目の秋、3年目の秋に出荷するものに分かれる。
養殖が盛んなのは瀬戸内海、三陸。県別では広島県が全体の5割以上を占め1位、次いで宮城県、3位が岡山県となっている。養殖マガキの総生産量は3万5千トン前後。
選び方・食べ方・その他
選び方
殻つきと、パックのものが。殻つきは生で食べると食感と後味のよい旨みが楽しめる。パック詰は身の膨らみが強く、中の液体が透明なものを選ぶ。また生食用はカキを収穫、一定期間無菌状態の海水で体内の細菌を出したもの、加熱用はそのまま出荷。鮮度の違いではない。パック詰めは用途に合わせて購入。
味わい
殻つきと剥きガキで流通する。また剥きガキには生食用と、加熱用がある。
生食用は紫外線で殺菌した海水のなかで一定時間生かして置いたもの。その分、旨みは少なくなっているが安全である。
加熱する料理には加熱用を使うべき。
濃厚な旨みがある。食感はあまりなく、独特のクセがあり、これが好まれている。貝殻は火にかけるとパチパチとはぜる。
栄養
タンパク質、脂質こそ少ないものの鉄分、カリウムなどの無機質、各種ビタミン類が豊富。またなによりも消化性多糖類であるグリコーゲンが豊富なことから疲れ回復にもききそうだ。
海のミルクなどと呼ばれて栄養の宝庫です。疲れを取り、運動での疲労感を鎮めるグリコーゲンが豊富。肝機能を高め、高血圧、糖尿病を予防する働きのあるタウリンは魚の5倍も含まれる。ビタミンB群、葉酸は貧血を予防し、中性脂肪のつくのを抑え、肌の健康を保つ。
危険性など
貝類、ホヤなどは貝毒の麻痺性貝毒(サキシトキシン、ゴニオトキシン)、下痢性貝毒(ディノフィシストキシン)などが発生すると非常に危険である。死に至る可能性もあるので海域での貝毒の発生情報を得たり、また貝毒が発生すると出荷規制することから流通するものを買うべきである。
食べ方・料理法・作り方
好んで食べる地域・名物料理
かき雑煮 カキを主な具材とした雑煮。みそ仕立てとしょうゆ仕立てがある。[広島市周辺]
加工品・名産品
釣り情報
クロダイ釣りのエサのひとつ。
歴史・ことわざなど
カキの養殖の始まり ヨーロッパでは紀元前1世紀。日本では1673年(延宝元年)に広島で小林五郎左衛門が始めたのが嚆矢。1500年代戦国時代もしくは室町時代後期とも言われている。詳しい文献を知っている方情報求む。
横須賀のマガキ その昔は大きな湾を持つ地域で天然の出荷が行われていた。例えば戦後になっても東京湾横須賀などでは関西に向けてマガキの出荷がなされていた。現在では天然マガキの出荷は厚岸やサロマ湖など北海道のものがほとんど。(横須賀市東部漁協)
貝塚 近年まで東京湾でも天然ガキの出荷があったように古代から重要な食用貝であった。東京湾沿岸に多数のカキ殻の堆積した貝塚があることでもその食用の歴史は縄文時代までさかのぼれる。特に東京湾岸での貝塚にはマガキを剥くという行為に他の土地にはない特色があるのも忘れてはならない。文献としては古事記にも見られる。
カキの釜飯 昭和14年〜15年。浅草の釜飯の店でカキの釜飯が出てくる。『如何なる星の下に』(高見順 講談社文芸文庫)
昭和の食堂 「昼になると、私は、国鉄本庁直営の食堂から、お菜を買ってくる。直営だけあって至極安い。たとえば、アジの天ぷら九円、アサリのかきあげ十円、ロールキャベツ十四円、シュウマイ十五円、カキフライ十七円、いちばん高いものでハンバーグステーキの二十八円なのだ」『いわしの頭』(中村武志 新潮社 1955)