トラフグ

トラフグの形態写真一覧 (スワイプで別写真表示)
70cm TL、重さ11kg前後になる。胸鰭上後方に白い縁取りのある黒い大きな斑紋がある。紡錘形で背と腹側に小さな棘を密集させている。背鰭は黒く、臀鰭は白い。歯はクチバシ状で癒合して4枚の板になっている。[21cm SL ・285g]
70cm TL、重さ11kg前後になる。胸鰭上後方に白い縁取りのある黒い大きな斑紋がある。紡錘形で背と腹側に小さな棘を密集させている。背鰭は黒く、臀鰭は白い。歯はクチバシ状で癒合して4枚の板になっている。
胸鰭上後方にある黒い大きな斑紋には白い縁取りがある。
背鰭は黒く、臀鰭は白い。
魚貝の物知り度
知らなきゃ恥
食べ物としての重要度 ★★★★
重要
味の評価度 ★★★★★
究極の美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系フグ目フグ亜目フグ科トラフグ属
外国名
Globefish,Blowfish,puffer
学名
Takifugu rubripes (Temminck and Schlegel, 1850)
漢字・学名由来

漢字 虎河豚 Torafugu
由来・語源 〈神奈川県三崎、和歌山県周参見、同県串本でトラフグ〉『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)。
『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)にはマフグ科マフグ属トラフグ。
「ふぐ」の語源
体を膨らませて海水を吸い込み、吐き出して泥などに隠れているゴカイなどを見つけるので、「吹く」。
体が「ふくべ(瓢箪)」のような形をしているため。

Temminck
コンラート・ヤコブ・テミンク Coenraad Jacob Temminck(1778-1858 オランダ) シュレーゲルとともにシーボルトの持ち帰った脊椎動物を整理、記載。『Fauna Japonica』(日本動物誌)を執筆。
Schlegel
ヘルマン・シュレーゲル(Hermann Schlegel 1804-1884年)はドイツの動物学者。テミングとともにシーボルトの持ち帰った脊椎動物を整理、記載。『Fauna Japonica』(日本動物誌)を執筆。
地方名・市場名

概要

生息域

海水魚。
北海道全沿岸〜九州南岸の日本海・東シナ海・太平洋沿岸(四国と九州南岸は少ない)、瀬戸内海、東シナ海北部。
千島列島の太平洋沖、朝鮮半島全沿岸、済州島、中国東シナ海沿岸、台湾。

生態

■ 産卵期は3月から7月。
■ 産卵は潮流の早い湾口や島と島の間の浅瀬で行われる。
■ 産卵後10センチくらいまでは産卵場付近、もしくは内湾の砂泥地などでいて、大きくなるに従い沖合に移る。

基本情報

一般にフグというのはフグ科トラフグ属を中心とする。トラフグ、シマフグ、ヒガンフグ、ショウサイフグなど、利用法はほとんど同じ。古くは関東ではマフグ、ショウサイフグ、西日本でトラフグが喜ばれていたという。
トラフグは西日本に産地があり、消費も西日本が中心となっていたが、最近、伊勢湾、駿河湾と北東に漁場が広がっているようだ。当然、東日本での消費も増えている。
魚類中でももっとも高値となる。寒い時期の魚で年末ともなるとキロあたり2万円を超すことも珍しくない。
フグ料理店でもトラフグしか使わないという店は高級店だ。刺身(関西で、てっさ)、鍋、焼きもの、唐揚げなどフルコースで味わうのが基本。天然ものは非常に高級だが、養殖が盛んになって、ときにスーパーなどにも並ぶようになってきた。
特に関西ではプラスティックトレイに薄造りというお手軽なセットもよく見かける。徐々に庶民にも手が届く魚となってきている。

水産基本情報

市場での評価 養殖物をはじめ流通量は多い。いろんな形態で入荷する。大型の天然ものがもっとも高い。養殖ものも高いが値段と流通量が安定している。
漁法 延縄
主な産地 愛知県、山口県、福岡県、長崎県、香川県

選び方・食べ方・その他

選び方

一般にはみがきをおすすめする。みがきは毒の除去、皮の処理を済ませたもの。活魚はプロなどは別としてさける。みがきは透明感があってやや飴色かがかったもの。活け締めは身に張りのあるもの、目が澄んでいるもの。

味わい

旬は冬
皮は強く分厚い。鱗は皮と一体化して棘状。骨はあまり硬くない。
よくしまった透明感のある白身。締めたばかり、鮮度がいいと弾力があるが水分が多く、あまり旨みは感じられない。これをさらしなどに巻いて少し寝かせて美味となる。
皮は無毒で表面をこそげ落として、その食感と旨みを楽しむ。
毒性 卵巣、肝臓は強毒、腸は弱毒、筋肉・精巣・皮膚は無毒。
フグの調理は一般人は原則的に行なわないこと
●詳しくは厚生省・地方公共団体の通知、条例などを参照のこと。
皮以外の部分 口の部分はとりわけ美味で俗に「うぐいす(肉)」などと呼ばれる。鰭は乾燥して「ひれ酒」に使う。鰭が使えるフグの種は限られているので注意が必要。
トラフグの背の黒い皮を「黒皮」、腹の部分を「白皮」という。フグの皮の表面には棘があってザラザラするので「鮫皮(さめがわ)」という。この「鮫皮」を包丁でこそげ取る。
フグ調理師が取りだした猛毒の卵巣、胆のう、肝臓、眼球など。フグを扱う場所ではこれを厳重に管理し、廃棄する。
白子 内蔵でも白子は宝物である。無毒なのは言うまでもないが、これは天下の美味。俗に春秋五覇のひとり呉の夫差に色香で国を傾けさせた西施の乳に例えて「西施乳(せいしにゅう)と呼ばれる

栄養

危険性など

テトロドトキシンを含む。卵巣、肝臓は強毒、腸は弱毒、筋肉・精巣・皮膚は無毒。

食べ方・料理法・作り方

トラフグの料理法/煮る(鍋、煮つけ)、汁(潮汁、みそ汁)、生食(刺身、たたき)、焼く(つけ焼き)、揚げる(唐揚げ)、皮(皮ポン酢)、白子(白子焼き)、煮る(煮つけ)、ひれ酒


ふぐちり(てっちり) 大阪ではフグ(特にトラフグ)を「鉄砲」、すなわち「当たれば死ぬ」にかけた隠語で「鉄砲のちり鍋」で「てっちり」という。昆布だしに酒と塩の味つけの鍋の地で煮ながら食べる。適度に身が締まり、甘味があって実に味わい深い。野菜はいろいろだが、ここでは下関、北九州小倉などで売られている香りの高いローマ春菊。

トラフグのあら煮 小振りなものは毒の除去をしてぶつ切りに。大型のものはあらを使う。集めて湯通しして表面のぬめりを流す。これを酒・砂糖・しょうゆで味つけする。こってり煮て、煮染めず煮汁をつけながら食べてもいいし、薄味で煮てもいい。味つけは各自お好みで。
トラフグの薄造り(刺身) 毒を除去して三枚に下ろして晒しに巻き1日寝かせる。これを薄造りにしたもの。あっさりしたなかに甘味とうま味が感じられて実にうまい。関西ではこれを「鉄刺(てっさ)」という。皮の湯引きと合わせてポン酢などで食べる。
トラフグのたたき 毒を除去。三枚に下ろして腹骨をすき、薄皮のある方をあぶる。温かい内に食べやすい大きさに切り、ポン酢を振りかける。つけながら食べてもいいし、柑橘類にしょうゆでもおいしい。
トラフグのポン酢和え いちばん安い初夏のトラフグをやや厚めに切り、ポン酢で和えたもの。フグの身の独特の食感と上品な甘味にこれまたあっさりしたポン酢がいい。ポン酢は橙(だいだい)、しょうゆ、少量の昆布だし、煮きりみりんで作ったポン酢で和えたもの。
トラフグの皮ポン酢 トラフグ類でも皮に毒がない。皮下にゼラチン質があり、とても味わい深いので、「身よりも皮が好き」ということも少なくない。別名「とうとう身」で身についた薄皮と体表の棘のついた「鮫皮」の間にある。「三河(身皮)の隣の「遠江(とおとう身)」としゃれている。
トラフグの中落ちのポン酢焼き 大型のトラフグの中落ちをポン酢もしくは橙・しょうゆ・みりん・しょうゆ味などの地につけ込んで焼き上げたもの。淡泊なフグの身と酸味が非常に好相性。薬味は唐辛子(七味唐辛子、七色唐辛子、一味唐辛子、カイエンヌペッパーなど)がいい。
トラフグの唐揚げ 小型は毒を除去。ぶつ切りにする。大型は頭部や腹の部分などを集めて置く。これに片栗粉をまぶしてじっくりと揚げる。身は鶏肉のようにしまり、魚らしいうま味と甘味があってとてもいい味だ。唐揚げはフグ類の定番的な料理でもある。
トラフグの白子のムニエル 毒を除去していて、白子が出て来たら「当たり」などという。「大当たり」と飛び上がって喜ぶ人もいる。最近、やっているのが塩コショウして小麦粉をまぶしてソテーするというもの。熱々を食べると至福の味。
トラフグ白子焼き 白子の基本的な料理法は単に焼く、なのかもしれない。素焼きでもいいし、振り塩をして焼いてもいい。できるだけ強火で短時間で焼き上げたい。ようするに生はクリームで表面だけが香ばしいといったもの。クリームの舌触りだけど、そのほの甘さ、後味のいいうま味。食べてみないことにはわからない最たるものかも。
ふぉらふぐ白子の刺身 白子を単に刺身状に切るだけ。ほの甘くて、うま味もほどほどだけど、なぜか食べた後の印象というか、口に残る味の名残がいい。高価なもので、それほどたくさん食べるものではないし、ついつい箸が伸びるという代物である。
トラフグのヒレ酒 フグのひれはトラフグやシマフグなど皮膚に毒のない種のものを強く干し上げたもの。今のところトラフグだからうまいという実感はない。あぶった鰭を器に入れて、熱燗をそそぎ、ふたをして少し待つ。ふたをあけて火を入れてアルコールを飛ばして飲む。

好んで食べる地域・名物料理

がんばの湯引き 厚めのそぎ切りにした身を熱湯で湯引きし、冷水に取り、水分をよく拭き取る。完全に火を通さず身の中心部分は生の状態にする。酢ぬた(酢みそ)か酢醤油で食べるが、必ず毒消しのために梅干しをつける。
食べ方のバリエーション
■刺身は薄造りにする。大阪ではこれを「てっさ(鉄刺)」という。
■鍋は醤油味をつけない「ちり」。大阪では「てっちり」。
■鰭(ひれ)を干して焦がすくらいに焼き、熱燗をそそぐ。「鰭酒(ひれざけ)」。
■刺身を食塩をいれた熱燗に入れる。「身酒」。
■白子を入れる「白子酒」。
がんばのがね炊き 長崎県島原地方。3月の産卵期に大量にとれるトラフグなどを使って作る。本来はアラで作るものだが、身をぶつ切りにして作ってもいい。アラ、ぶつ切りの身は鍋などでから煎り。別の鍋に酒、醤油を煮立ててアラ、から煎りしたアラ、もしくはぶつ切り、梅干し、ふくしゅ(にんにくの葉)を入れて、水分がなくなるまでいり煮にする。「がね(カニ)」の身に似た味と歯ごたえからきた料理名。

加工品・名産品

ふぐひれ(鰭) 鰭を素干しにしたもの。ひれ酒を作るためのもの。予め鰭の香りのついた清酒もある。
みがき 毒を除去。皮などの処理をしているもの。高価ではあるが、もっとも利用しやすい優れもの。

釣り情報

■ 関東では外房でのフグのかっとう釣りで希に釣れる。エサは青柳で引っかけ釣りの一種。
■ 福岡県大牟田市の森田さんから有明海でのトラフグのことで面白い話をきいた。東シナ海、天草灘のトラフグは春、3月から5月になると天草下島の牛深沖に来て産卵する。それが孵化して、稚魚は有明海にまでのっこんで来る。この稚魚が300グラムほどに成長するのが秋なのである。このトラフグの釣り漁が秋の風物詩なのである。森田さんは、刺身はともかくアラを使った雑炊がまことに美味であるという。

歴史・ことわざなど

■ 北海道や東北でも漁獲されていて、近年漁獲量が増えてきている。
■ 天然のものは山口県下関市南風泊市場が古くから集散地であり、冬が近づくと言わば風物詩のようにテレビで流される。競り方が独特で両口の開いた黒い袋に手をいれて行う。これを「袋競り」と呼ぶ。
■ 養殖フグの生産が増え、流通も複雑化しているようだ。

地方名・市場名

マフグ
参考文献 場所兵庫県明石、広島、山口県下関 
オヤマフグ
参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 場所和歌山県和歌浦・白崎・田辺 
ケシフグ
参考文献 場所大分県中津 
クロモンフグ
参考文献 場所大分県別府 
クロ
参考文献 場所大分県杵築 
シロ
備考上物のこと。 参考聞取 場所大阪府大阪市 
イカフグ イガフグ
参考文献 場所富山県、島根県浜田 
モンツキ
参考文献 場所山口県下関 
ホンフグ
参考文献 場所山口県下関、大分県別府 
ゲンカイフグ
参考文献 場所山口県下関、大分県宇佐市長洲、長崎県壱岐 
オオブク
参考文献 場所岡山県、広島県、香川県 
オオフグ
参考文献 場所岡山県、香川県 
オオフク
参考文献 場所岡山県児島郡呼松 
クマサカフグ
参考文献 場所新潟県柏崎市西山町石地 
フグ
参考文献 場所新潟県能生 
フク
参考文献 場所新潟県能生、山口県下関、福岡県 
トラフグ
参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929)、文献 場所神奈川県三崎、新潟県寺泊、和歌山県串本・周参見・塩屋 
ソコフグ
参考『さかな異名抄』(内田恵太郎 朝日新聞社 1966) 場所福岡県北九州 
ドジラフグ
参考文献 場所福岡県柳河 
クマサカ
参考文献 場所秋田県男鹿 
モンフク
参考文献 場所高知 
フクト
備考フグ類の総称。 参考文献 場所高知県 
モンフグ モンブク
参考文献 場所高知県御畳瀬、大分県別府 
マグロ
場所高知県浦戸 
フクツトウ
備考フグ類の総称。 参考文献 場所高知県浦戸 
キタマクラ
参考文献 場所高知県高知市市場 
カモエフグ カマヤフグ カマエフグ
場所愛知県 
クマサカ
場所秋田市中央市場 
フク[福]
備考山口県下関ほかフグは「不具」に通じるとして福(フク)と呼ぶ地方も多い。 場所山口県下関 
テッポー テッポウ
備考大阪でフグをテッポウ、テッポーというのは当たると死ぬという洒落。 場所大阪 
マル
備考明治期はじめ山口県他ではフグを食用にすることが禁止されていて、マル(丸)の符号で呼ばれていたという。 場所山口県他 
ガンバ
備考福岡県大牟田ではガンバ(棺桶のこと)と呼ばれている。 場所福岡県大牟田、有明海 
ホンブク[本ブク]
備考福岡県北九州市小倉ではホンブク(本ブク)。 場所福岡県北九州市小倉 
トミ
備考トミは江戸時代の宝くじに当たる「富籤(とみくじ)」のこと。めったに当たらないと言う意味。 
ダイマル
参考文献