202412/05掲載

今季初虎で鉄っさ

負け惜しみではなく、鉄っさは厚い方がいい


非常に昔昔、大阪で食べたトラフグの刺身、「鉄っさ」は最高だった。
びっくりするほどの値段で、さほど年齢の違わない大蔵省(古い言い方)に「大丈夫?」と聞いたのだ。
当時、二つ持っていた仕事の一つ分の月収と同じ支払いだった。
そこの店主らしきひとが、「フグは薄う引こうと思えば引けるけど、やや厚めに引いてこそうまい」と説明していた。
塩とすだちで、と言われて、比較的醤油系が好きなのに、確かに醤油の醸造香はいらないと思ったものだ。

ボクが作る「鉄っさ」も厚めだ。
もちろん意図的に厚めにしているわけではなく、これがやっとこさ、だけど。
でもやはり「鉄っさ」は厚いのがうまいとしておきたい。
こんなに淡泊で寝かせても少々硬めなのに、噛むという行為がこんなに楽しくていいのだろうか? と思うほど楽しい。
なぜ、脂やイノシンなどうま味成分の少ない魚に豊かな味を感じるのか、そこにも謎がある。

噛めば噛むほどおいしい。
しかもやはりわさび醤油ではなく、唐辛子系がいいし、柑橘類は絶対に外せない。
古くからの組み合わせだけど、なんて素晴らしいバランスなんだろう。
年に何度もやれない贅沢で、一見、太閤秀吉的だけど、自分で造って自分で食うので、木下藤吉郎的やも知れぬ。

もっとフグを家庭でも食べて欲しい


11月25日、八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産に「みがいて」とお願いする。暇らしく、「あいよ」と「みがく」のは産地不明のトラフグである。
1.1kgなので小型だし、毒の除去だけなので、早い。
念のためにフグは毒の除去さえフグ調理師(現在、ふぐ取扱責任者)にやってもらえば、誰でも自由に料理できる。
また「みがき」(毒を除去したもの)も売られている。
■注意/フグは種類によって毒を含む部位が異なる。

片身を刺身にする。
血合い骨が気にならないので、ただただ薄く、薄くと言いながら引くだけだ。
なのに厚めになるのはボクが不器用だからだ。
でも厚めの方がうまいと思うな、負け惜しみだけど。
薬味は赤下ろしと柚子とねぎ。
■舵丸水産は、一般客に優しいので、ぜひ近くにお住まいの方は一度お寄り頂きたい。フグは毒の除去まではやってくれるし、時間があれば皮引き(皮の棘の部分を削る作業)もやってくれる。

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トラフグのサムネイル写真
トラフグGlobefish,Blowfish,puffer海水魚。北海道全沿岸〜九州南岸の日本海・東シナ海・太平洋沿岸(四国と九州南岸は少ない)、瀬戸内海、東シナ海北部。千島・・・・
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