今季初虎で初ふぐちり
トラフグのことだけ考えて食べる「ふぐちり」
トラフグを食べるなら11月か、12月も前半までだぜ! といいたい。
12月も半ばになり、数え日が近くなるとトラフグは高騰する。
トラフグのキヨミズガイなどするもんじゃない。
今ならちょっと贅沢程度で食べられる。
目の前に煮えているのはトラフグだけが入った鍋。
食べる直前に芹と壬生菜混ぜこぜを少し投入する。
「ふぐちり」は単純な方がいい。
昆布だしだけで、野菜も最小限がボク好みだ。
初めはひたすら鍋の中の虎に集中すべし。
なぜ、こんなに煮ながら食べる虎はうまいのか、今世紀中には解明出来ない謎だろう。
やや水分が多い身は煮るとちょっとだけ膨らんで、ほろっと骨から外れる。
舌に触れると甘いのは多種類のアミノ酸からくるのだろう。
いちばんうまいのは唇、「うぐいす」だ。
4枚の鋭い刃物状の歯をかみ合わせるための筋肉と、その周辺の皮だ。
2人で食べるなら仲良く上下で分けるといい。
魚類界最強の噛み切り力を誇る。
そのパワーを生み出す筋肉は煮ると、他の筋肉よりもちょっとだけ硬く締まっている。
他の部分以上に味がある。
唇周りの皮だってぶるんぶるんとして甘く柔らかい。
いつも「愛してるよ」、と言って食べる。
ただし、今回はここに、hidden treasure が。
今回の個体が抱えていた白子である。
「うぐいす」と人気を二分するが、どっちが上なんて考えても無駄だ。
温まった白子は濃厚なうま味があり、クリーム状にとろける。
ある意味、美しすぎる味かもしれない。
ジャングルを飛ぶ美しい蝶のようなもの。
「ふぐちり」は前座で、「雑炊」が真打ちかも
さて、冗談はさておき、だしがどんどんうまくなる、のがわかってくると思う。
このだしをどれくらい残すかが鍋の勝負どころである。
終いの、ある意味トリが控えているためだ。
具があらかたなくなったら野菜の破片などをすくい取り、そこにご飯を投入。
温まったら溶き卵、そしてねぎで完成。
超おいしいトラフグのだしをそのままご飯とともに食べる。
味は勝手に想像して欲しい。
フグは毒を除去してもらえば安心安全
11月25日、八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産に「みがいて」とお願いする。「みがく」のは産地不明のトラフグである。すぐにやってくれた。1.1kgなので小型だし、毒の除去だけなので、早い。
問題は皮だ。「引いて欲しいんだけど」というと、いやーな顔をする。当たり前である。忙しいのである。
念のためにフグは毒の除去さえフグ調理師(現在、ふぐ取扱責任者)にやってもらえば、自由に誰でも料理できる。
また「みがき」(毒を除去したもの)も売られている。
料理は色々だけどいちばん簡単なのが、「鍋」で、一般的に「ふぐちり」という。
1キロのトラフグの頭部、唇(うぐいす)と、かま、皮の一部、白子だけで2人前の鍋になる。
■注意/フグは種類によって毒を含む部位が異なる。
毒を持つ肝や肝膵臓などを取り去ると、後はご自由に
白子は適当に切るだけ。
あらと皮は食べやすい大きさに切り、湯に通し、氷水に落として水分をきる。
湯通しは、あえて必要ないが、だしが澄んだ状態にしたいためにやる。
昆布だしに酒・塩のつゆで煮ながら食べる。
今回は芹と壬生菜の緑緑した取り合わせだけにしたけれど、どキノコや豆腐などを入れてもおいしい。
ポン酢や、柑橘類と醤油、紅葉下ろしなどで食べると美味。
紅葉下ろしを作るのは面倒なので、今回は「赤おろし」という赤唐辛子の瓶詰めを使った。
■舵丸水産は、一般客に優しいので、ぜひ近くにお住まいの方は一度お寄り頂きたい。フグは毒の除去まではやってくれるし、時間があれば皮引き(皮の棘の部分を削る作業)もやってくれる。