旬は晩春〜夏。
鱗は薄く細かく取りやすい。皮は厚みがあるが弱い。骨はあまり硬くない。
透明感のある白身で血合いが大きい。熱を通すと硬くしまる。
料理の方向性
生でも焼いても、煮て揚げても味のいい魚である。特に鮮度のいいものは生食して美味。たたき、なます、なめろう、刺身、酢じめなどいろいろ試していただきたい。単に焼いてもうまいがやや硬く締まる。
ホソトビウオの料理法・調理法・食べ方/生食(刺身、ぬた、たたき、なめろう)、揚げる(フライ、唐揚げ)、焼く(干物、塩焼き)、煮る(煮つけ)、汁(みそ汁)
ホソトビウオのたたきなます(なます) 単に刺身では淡泊にすぎるというか、血合いなどがきれいではない。刺身は産地周辺でと思った方がいい。三枚に下ろして腹骨・血合い骨を取る。これを比較的薄く切り落としていき、食べる。香辛野菜と合わせてもいいし、酢みそを添えてもいい。
ホソトビウオのみそたたき(なめろう) 胸鰭を切り取り、腹鰭を抜き取る。水洗いして三枚に下ろして、細かく切る。香辛野菜であるねぎ、大葉(青じそ)、みょうが、みそを加えて包丁で細かく叩く。包丁が切れないと団子になる。皮をつけたままでも、引いて使ってもいい。
ホソトビウオのタルタル風 ホソトビウオの身を細かく切り、玉ねぎ、ピーマン、オリーブの塩漬けなどをオリーブオイルで和えて塩コショウ、オリーブオイルで味つけする。これをトマトのコンカッセの上にのせただけだが、実にいい味になる。
ホソトビウオのフライ 水洗いして三枚に下ろして腹骨、血合い骨を取る。塩コショウして小麦粉をまぶし、卵・小麦粉・少量の油・水をあわせてた衣をくぐらせて、パン粉をまぶしてやや強火で揚げる。さくっと揚がって、身に独特の風味があり非常にうまい。
ホソトビウオの唐揚げ 小振りのものを選んで作るといい。水洗いして腹開きにして、水分をよく拭き取る。片栗粉をまぶしてじっくりと二度揚げにする。丸ごとかぶりつけて、さくさくと食べられる。実にビールに合う。
ホソトビウオのみそ汁 ここでは1本丸ごと使ったが、たくさん下ろしたときにはあらを集めて使ってもいい。水洗いして器に入る大きさに切り、湯通しする。冷水に落としてぬめりや残った鱗を流し、水分をよくきる。これを水から煮出してみそを溶く。昆布だしを使ってもいいが、水でも十二分にうまい。とてもご飯に合う。
ホソトビウオの塩焼き 水洗いして振り塩をする。1時間以上置き、じっくりと焼き上げる。胸鰭は取った方が焼きやすいが、貧相でもある。じっくりと焼き上げると少し硬く締まりすぎるが捨てがたい味。
飛び子 すしネタなどになる「飛び子」はもともとは本種の卵巣。
焼きあご とれたばかりのホソトビウオを焼いて、干し上げたもの。琥珀色の濃厚で香ばしさを感じるようなだしがとれる。これでみそ汁や煮ものに使ってもいいが、ラーメンのつゆにすると絶品である。[満村水産 長崎県平戸市]
飛び魚の焼き干し 山形県飛島で作られているもの。とれたばかりのホソトビウオを開いて炭火で焼き干したもの。庄内地方の中華そばのスープにも使われているが。その人気の一端を担っている。
あごだし 長崎県産の焼き干しと昆布を水につけ、1時間以上置く。火にかけてじっくりと長時間かけてあたためる。飴色の濃厚なだしがとれる。
あご煮干し 島根県石見地方、隠岐などで作られているもの。初夏に大量にとれる「あご(ホソトビウオ)」をゆでて干し上げたもの。上品でいながらうま味の強いだしがとれる。
あごだし 初夏に大量に揚がるホソトビウオをゆでて干したものを、だしの取りやすい大きさにくだいたもの。[隠岐の島づくり株式会社 島根県隠岐郡隠岐の島町]
煮干し 内臓と頭を取り去ったものをゆでて干し上げたもの。非常に上質でうま味の強いだしが出る。品質も上々だ。[フードはまおか鮮魚 石川県珠洲市]
塩あご 長崎県平戸で揚がったホソトビウオに塩味をつけ、一夜干しにしたもの。とても酒がすすむ。
とびうお出雲干し 初夏、島根半島に寄せてきたホソトビウオを開いて干し上げたもの。脂があっておいしい。[渡邊水産 島根県出雲市]
ぬか漬け 石川県輪島市など。塩漬けにして、糠に漬け込んだもの。そのまま切って食べる。[石川県輪島市]
あご野焼き 島根県名物の「あご野焼き」。新鮮なホソトビウオのすり身を使い、炭火で1本1本焼き上げる。松江市内『青山蒲鉾店』
あごはんぺん 背の青い魚ではあるが、上品であっさりした味に仕上がっている。[出雲国大社食品 島根県出雲市]
あごの天ぷら トビウオ類のすり身を揚げたもの。甘味控えめであっさりしたなかにうま味が感じられる。[出雲国大社食品 島根県出雲市]
純・あごかまぼこ トビウオのすり身を主な原料とした蒲鉾。なめらかな食感で甘味控えめでうまい。[長岡屋 島根県松江市]
トビウオのすり身 初夏になると日本海側の町のスーパーなどに並び始める。これを昆布だしに落としてお吸い物やみそ汁に、味付けして揚げると「天ぷら(薩摩揚げ)」になる。
盆だて 「八月六日ころまでに、嫁が実家に、そうめんを重箱いっぱいと、とびうおの塩干ものを重箱のふたを逆さにした上にのせて持って行く。実家では半分を受け取り、残りを返す」。(大阪府大阪市旧南河内山村 トビウオ種不明)
盆 お盆には塩干しとびうおの焼いたものと、じゃがいも、焼き麩、湯葉、かんぴょうの煮ものを食べる。(大阪府大阪市旧南河内山村 トビウオ種不明)
塩乾 〈私ら市場関係者は、取引を簡明にするため、魚体の大小を区別している。成熟魚(大型 かくとび)を角飛、次を中飛(ちゅうとび)、小型は蠅飛(はいとび)〉。蠅飛がホソトビウオだ。『干もの塩もの』(石黒正吉 毎日新聞社)
長野県安曇野 昭和五年の母の家計簿に「六月三日は、葡萄酒一本(一円十五銭)、飛び魚十本(五十銭)、パインアップル一缶(四十五銭)。長野県南安曇郡豊科町(現安曇野市)。『私の信州物語』(熊井啓 岩波現代文庫)