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山陰でホソトビウオを「ニュウバイトビ(入梅飛)」などという。ツクシトビウオの角飛と同じ、6月くらいからまとまってとれるもので、産卵を控えて生殖巣を膨らませている。山陰などでは真子をパック詰めで売っていたりする本州日本海側は青森県くらいまでで産卵回遊の2種のトビウオが揚がる。まとまって揚がるので煮干しや焼き干しなども作られている。島根県松江市の名物「あご野焼(焼き竹輪)」などもあるし、各種練り製品の原料にもなる。国内のトビウオの食文化といえば昔はこの、産卵回遊群がもたらすものだとばかり思っていた。この考え方は鹿児島屋久島に行くまで心の隅から離れなかった。屋久島行以前には鹿児島市内で「七島とび(トビウオの塩干)」を発見している。干ものというよりも塩の塊のようで、明らかに冷蔵庫以前の時代からの加工品である。屋久島では種類の多さに圧倒され、当然のことだが、日常的にトビウオが食べられていることにも驚かされた。今年は、長崎県平戸市の漁師、福畑敏光さんに夏から秋の「小トビ漁」のトビウオ類を送って頂き、長崎県でのトビウオの世界の、幅の広さに驚かされた。漁の後半にさしかかったときに送ってもらったところ、すべてが小振りで、ホソアオトビ、バショウトビウオ、シロフチトビウオ、アリアケトビウオの4種類が入っていたのだ。8月25日から10月半ばの漁期にはもっと多彩な種の比較的若いトビウオ類が入る模様である。これを平戸市では練り製品を作り、干ものにし、焼きあごにする。いろいろ試してみたいが、まず今回は煮干しを買ってみた。実はこの煮干しこそ、カツオ節を生む母体であり、国内水産加工業のなかでも重要な鍵となるものだと考えている。ボクは子供の頃から煮干し文化圏にいたので、いい煮干しを見るだけで嬉しくなる。今回の林水産の煮干しなど香りからして素晴らしい。同定してみると、ホソアオトビとシロフチトビウオまではわかったが、あとは同定不能だった。想像になるが、ツクシトビウオとホソトビウオの若い個体、ホソアオトビ、シロフチトビウオ、アリアケトビウオが平戸の煮干し原料だと思うのだが、できれば加工前に確かめたい。
慣用句、「猫に鰹節」を小学生のとき教えられて、「いんじゃこ(いりこ)」と思ったことがある。ときどき家に巣くう猫にやる御馳走は「いんじゃこ」だったからだ。徳島県美馬郡貞光町(現つるぎ町)の商店街のボクの家に「いんじゃこ(徳島県西部では最低限いりこで、煮干しと言わないはず)」は常にあったが、カツオ節は見た記憶がない。寒い時季に教室に入ったらストーブがたかれていてとても温かかった。「杉玉鉄砲(細い竹とひごで作る水鉄砲のミニ版で杉の実を飛ばす。寒い時季のもの)」などの話をしていたら、同級生の息に「いんじゃこ」の匂いがした。ボクは典型的な学習障害児童だったので、好きなことしか興味がなく、勉強などはまったくしなかったが、やたらに食べ物のことが好きで興味があった。覚えていることも食べ物のことが多い。要するにボクの町の貞光小学校に通っていた家では、ほぼ「いんじゃこ」だったと思っている。今でもやたらに日常的に「いんじゃこ」を使っているので、ボクの体のかなりの部分が「いんじゃこ」で出来上がっていそうだ。去年暮れ、愛知県豊橋市で節類を大量買いしている。愛知県は「めじか節(マルソウダ)」の種類(節自体の大きさと削り節なので厚み)が多く、混合節にも「めじか節」比率が高い気がする。基本的に削り節は100g単位に分けて冷凍保存する。保存法としてはベストではないがあまり劣化しないと考えている。愛知県で買った「めじか節」と混合節をそろそろ使い切らないと、と思っていたら、今度は大阪市木津の市場で買ってきてもらった、和歌山県産(?)だという「いりこ」が底をついていた。「いりこ」がないと生きていけないので、八王子総合卸売センター、総市商事部で探したら、いちばん在り来たりな愛媛県伊予市の『ヤマキ』のものがあった。産地不明ながら、ボク好みの普通の煮干しで実際に使ってみたら、上々以上にいい感じだった。ちなみに「いりこ(煮干し)」は新鮮なものを、新鮮な内に鮮度管理も完璧な状態で作られたものの方がいい、という人が多いが例外も少なくない。かなり問題がある外見なのに素晴らしいものもあるし、見た目がいいのにダメなものもある。要するに買ってみないとわからない。例えば、千葉県産を悪く言う人に会ったことがあるが、なんて愚かなと思ったものだ。大きくて黒いけれど、だしの取り方によっては非常にうまいではないか。また、「いりこ(煮干し)」は大産地で大量生産するものももちろんいいが、むしろ狭い地域地域で地元で揚がったもの、自分の住まう地域の近くで作られているものを使うべきだと思っている。その地元産が切れたときに大産地で補えばいい。またこの地元の製造業者が消滅しているケースも多いだろう。今、国内の水産業において最大の問題は、地域地域で定置網などで揚がった魚を無駄なく使うシステムが崩壊しつつあることだ。干もの・乾物類だけではなく練り製品、缶詰など様々な水産加工業が漁港周辺になければならない。
漁業の町は漁師さんが魚をとる。当たり前だけどそれが核になるが、ただこれだけでは町は成り立たない。漁獲したもので鮮魚で出荷できるものは出荷する。それ以上に加工しないとダメなものを最適な方法で加工する。カマス類は九州から北海道まで、日本各地で漁獲され、量的にも多く重要なものとなっている。沿岸域で産卵するので稚魚から漁獲されている。稚魚はシラス漁に混ざると、多くが廃棄される。ただこれは産地での努力で出荷はできる。問題は鮮魚でも出荷できず、干ものなどにも加工できないサイズである。四国や九州ではこれを煮干しにする。やや強めの塩水で煮て放冷して干し上げたもの。この塩水で煮て放冷、干し上げて保存するというのは日本全国で行われていたのだと思う。ただこの煮干しの多様性がなくなりつつある。この煮干し加工のあるなしは、漁業の町を構築する上でも重要なポイントだと思う。
小型のアカムツを島根県西部で「めきん」などと言う。干ものにするにも小さすぎるので、煮干し加工が盛んな大田市などで、煮干しに加工されている。 白身魚の煮干しは山口県でもそうだが、里芋と相性がいい。 昆布と「のどぐろ煮干し」を半日漬け込んで火をつけてゆっくり沸騰させ、沸騰する直前で手前で火を止める。 これをこして、煮干しはそのままで酒・しょうゆ味で煮る。[山根商店 島根県大田市仁摩町]
塩ゆでにすると硬く締まり、どうしても鱗が気になる。カタクチイワシや小アジのようにゆでたてをおやつに、酒の肴にとはいかない。 ただしじっくり硬く干し上げて、だしをとるととてもうま味豊かである。酸味がほとんどなく、苦みと感じない程度の苦みがあるのはマアジ、カタクチイワシなどと同じ。同じ方向性の味わいである。 煮るならサトイモや青菜、麺ならそばではなく小麦粉を使ったものに威力を発揮する。
煮て干すので煮干しだ。ボクの田舎、徳島県では「いりこ」という。魚はできるだけ小さいものがいい。全長5cm前後がいちばん上等。でも15cmくらいまでは作れる。本当はマアジだけが好ましいが、神奈川県小田原市 小田原魚市場二宮定置の水揚げから拾い出したものなので、モロとメアジが混じっている。混じり物は一切気にしないでいい。メアジだけ、モロだけでもいい煮干しが作れる。今回は全長13cmだから少し大きすぎる。これをよく流水で洗って、表面についた血液やとれた鱗を流す。水分をよくきり、4%〜5%の塩水で10分前後ゆでる。ザルに上げ、シャワーにして水をかけてざっと粗熱をとる。うちわであおぎながら表面の水分を乾かす。これを寒い時季なら日が当たらない屋外で、暖かい時期には冷蔵庫で干す。
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