スケトウダラ
代表的な呼び名スケソウダラ
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珍魚度・珍しさ | ★★ 少し努力すれば手に入る |
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魚貝の物知り度 | ★★ これは常識 |
食べ物としての重要度 | ★★★★ 重要 |
味の評価度 | ★★★★ 非常に美味 |
分類 | 顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区側棘鰭上目タラ目タラ科マダラ属
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外国名 | Pollack
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学名 | Gadus chalcogrammus Pallas 1814
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漢字・学名由来 | 漢字 佐渡鱈、須介党、介党鱈、鯳、助宗鱈 Standard Japanese name / Suketoudara 由来・語源 スケトウタラとも。〈須介党(すけとう) 鱈に似ていて小さく、色は黒に白を帯びている。味はよくない〉。『和漢三才図会』(寺島良安 東洋文庫 平凡社 正徳2年 1712) 標準和名はスケトウダラだが、実はあまり使われていない。一般的にはスケソ、スケソウ。ハングルでメンタイ。 古くは、Theragra chalcogramma (Pallas, 1814)。 助宗 『干もの塩もの』(石黒正吉 毎日新聞社 1975)に〈「鯳」か「助宗」と表示されていて、私ら消費地業者は延ばさずに「すけそ」と言ったり、「すけそだら」と、……〉とある。 助っ人鱈 漁に人手がかかるので「助っ人鱈」の意味。 魚鑑 〈鱈……痩小なるものを、しつこけだら又すけとうだらという、味佳からずといえども、佐渡(すけと)金山に間近き、所にて、漁るものは佳し、よりて「すけとう」という〉。『魚鑑』(武井周作) 助党 〈佐渡では「スケト」と呼んでいる。佐渡の字が「スケト」と読めるからだというが、佐渡では家計を助けるから「助戸」だともいっている。そのほか、タラの漁期は忙しく、港に大勢のスケット(助党)が来るからだ〉『新潟料理 ふるさとの味』(桜井薫 新潟日報事業社) 佐渡島 佐渡金山周辺で多産するので「佐渡(すけと)」の鱈の意味。 Pallas Peter Simon Pallas (ペーター・ジーモン・パラス 1741年〜1811年)。ドイツの動物・植物学者で、サンクトペテルブルク科学アカデミーの教授になり主にロシアで研究する。主に冷水域の魚を記載した。ホッケ類、アイナメ類など国内海域にいる多くの魚類を記載。 |
地方名・市場名 |
概要
生息域
海水魚。水深0-2000mの表層・中層域。
北海道全沿岸、青森県〜和歌山県白浜の太平洋沿岸、青森県〜山口県の日本海沿岸。
韓国釜山〜沿海州、日本海北部〜サハリンをへてオホーツク海・千島列島・カムチャツカ半島、ベーリング海、アラスカ湾〜カリフォルニア中部沿岸。
生態
日本海群、太平洋群、オホーツク海西部群に分かれる。オホーツク海西部群は大型である。
産卵期は12月から5月。北にいくほど遅くなる。
成熟はメスで32-35cm、お酢で30-35cm、4、5歳で成熟する。成熟個体は雌の方が雄よりも多い。
抱卵数は20〜200万粒。
産卵後1歳13cm、2歳で13cm、3歳で30cm、4歳で35cm、4歳で35m、5歳で40cm前後になる。
オキアミや小型の魚類、軟体類をエサとする。
参考/『魚類学 下』(落合明、田中克 恒星社厚生閣)
基本情報
北太平洋でもっとも資源量が多い。
国内では山口県・和歌山県以北に生息している。北太平洋に広く生息域を持ち、アメリカ西海岸でも水揚げがある。
豊漁が続いていたが、年々減少傾向にある。また日本海に多かったが、近年減少していて、水揚げが多いのは北海道となっている。
古くは新潟県以西で「たら」というと本種のことで、冬の味覚の代表的なものだった。山形県・東京都以北ではマダラが主でスケトウダラは鮮度落ちが早いこともありあまり食べていなかったようだ。
また北海道などでたくさんとれても、冷凍できないために、ほとんどが干もの(素干し・塩干し)などに加工されていた。
鮮魚や冷凍ものは古くから評価の低い、安いものだった。これが第二次世界大戦後の配給によってさらに評価が下がったようだ。『干もの塩もの』(石黒正吉 毎日新聞社 1975)
これを船上ですり身にし、冷凍する技術が確立されて、一躍脚光を浴びることに。以来、安いすり身として日本の練り製品業界を牽引してきていたが高騰気味だという。現在でも多くの蒲鉾、薩摩揚げが本種のすり身で作られる。
鮮魚、ドレスなどでの流通量も少なくない。東京都は東北、新潟県などから移り住んだ人が多く、食文化の点でも多大な影響を受けている。そのせいかスケトウダラも鮮魚でも干ものなどもよく食べている。
珍魚度 一般的な食用魚。ただし丸のままの状態に出合うのは簡単ではない。小売店などでも探すしかない。
水産基本情報
漁法 底曳網、刺し網、延縄、一本釣り
主な産地 北海道が圧倒的に多い、以下青森県、岩手県、宮城県
輸入はアメリカ(アラスカ)、ロシア
かつては漁獲量では魚貝類中ナンバーワン、400万トンもあったものが、領海200海里時代をへて1993年のベーリング海公海での漁獲が中止されたがために水揚げ量は激減している。
韓国などには輸出もしている。
選び方・食べ方・その他
選び方
切り身で売られることが多い。水分が出ていないもの。身に張りがあって、微かに透明感のあるもの。
味わい
鱗は小さく薄く弱くて取りやすい。皮は比較的しっかりしているが熱に弱い。骨は硬くない。
白身で、繊維質ではなくボロボロしている。クセはなく、熱を通しても硬く締まらない。
肝、白子は非常に美味。一般的な「たらこ」とは本種の卵巣のこと。卵粒が細かく生でねっとりしており、煮ても焼いても味がいい。
栄養
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危険性など
アニサキス(袋形動物門線形動物綱回虫目ヘテロケイルス科アニサキス亜科)が寄生する。アニサキス症には緩和症と激症型がある。胃や腸の筋肉を穿ち入り、痛みや吐き気をもようす。激症型は一度感染して、再度感染した場合、抗体が過剰反応して起こる。
食べ方・料理法・作り方
好んで食べる地域・名物料理
干したらの煮しめ 漁獲の少ない夏場に有明海周辺で作られている。もどした干したらと野菜、昆布を砂糖、しょうゆ、みりんの味つけで煮たもの。
生たらの棒だら煮風 生のスケトウダラを軽く干してから煮たものか? おもしろい味。[滋賀県長浜市]
ムツの卵の代わりに 〈今は少なくなった「むつ」の卵の代用となる〉『干もの塩もの』(石黒正吉 毎日新聞社 1975)
加工品・名産品
すき身スケトウダラ 〈釧路の佐藤仁亮氏が郷里静岡県のサメのたれ(塩干し)の製法に準じてスケトウダラで作った(昭和3〜4年/1928〜1929)〉『水産加工品総覧』(三輪勝利監修 光琳 1983)
つまみたら 「すき身すけとうだら」をほぐしたものが最初かも。現在は塩分濃度を下げ、甘味を添加している。会津地方の「塩たらの山菜漬け」はこれで作る。
釣り情報
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歴史・ことわざなど
湯豆腐と鱈子 昭和14年〜15年。「(浅草)言問通りにあるメシ屋で……湯豆腐と鱈子を肴に酒を飲んだ」。『如何なる星の下に』(高見順 講談社文芸文庫)
軍隊とタラコ 「大正の初め、軍隊で直接カラフトからタラコを樽で取り寄せ、煮つけて出したところ、兵士たちは初めて見たのとその味になじめないので、食わずきらいであったらしい」『あかばね昔語り』(石川倫 近代文藝社 1988)
たら汁と雪道はあとほどよい 雪道は人が歩いた後を歩く方が楽だし、「たら汁」はよく煮込んだ後の方がうまいという意味。『新潟料理 ふるさとの味』(桜井薫 新潟日報事業社)
煮つけ魚 〈比目魚、鰈、鮎並、鰺、鱈、鯡、鮫、生節等は皆煮つけで、焼くのは蒸し鰈、魴鮄、鰯、飛び魚くらいであたが、煮肴は私は嫌いであった〉『幼少時代』(谷崎潤一郎 岩波文庫 初版は文藝春秋社1957)
配給 第二次世界大戦下、スケトウダラが配給されていた。『魚のシュン暦』(金田尚志 石崎書店 1959)
地方名・市場名
参考文献 場所北海道厚岸、秋田県男鹿
参考文献 場所富山県四方
参考文献 場所富山県富山
参考文献 場所富山県富山・氷見・新湊・東岩瀬・魚津、石川県大聖寺
参考文献 場所島根県今市(現出雲市内)
参考文献 場所新潟県岩船郡大川村
備考新潟県新潟市周辺ではマダラよりもスケトウダラの方がタラ類としては一般的。 参考文献、聞取20240228 場所新潟県新潟市
参考文献 場所秋田県象潟、石川県羽咋、鳥取
参考文献 場所青森県、石川県羽咋、富山県、新潟県佐渡島
部位白子 参考20191218むつ市 場所青森県むつ市
備考内臓に大量の寄生虫がいるため。 場所石川県金沢市金沢中央市場
備考助宗などと漢字を当てる。スケトウダラ以上に一般的に使われている。 場所青森県鮫、新潟県佐渡・新潟市・阿賀野市、市場などでは
参考文献より。 場所新潟(越後)
部位卵巣