202310/28掲載

すけそ子、今季初買い

最近丸のままが少なくなったスケトウダラ

スケトウダラ

スケトウダラは知らなくても「たら子」は知っています、は当たり前なのである。これぞ親不知子不知そのものだけど、丸のままのスケトウダラを見たことがある人は非常に少ないのが現状だろう。
タラは国民的な魚といってもいいくらい重要であるが、そもそもタラにスケトウダラとマダラの2種いることすら多くの人が知らないと思う。スケトウダラは冷凍食品の「タラのフライ」の材料でもあるし、竹輪や蒲鉾など練り製品の原料でもある。「塩ダラ」とか鍋ものの「たらちり」とかに使うのがマダラである。少しは魚を知る人に限って、単にタラというとマダラを思い浮かべる人が多いので「たら子」をマダラの子と思っている人がいるのも事実である。
スケトウダラの卵巣は卵粒(一つ一つの卵の大きさ)が小さくしっとりして味があるので、「塩たら子」や「明太子」などで抜群に人気が高い。対するにマダラの卵巣は卵粒が大きくて、少しパサつく上に1つの卵巣が非常に巨大なのでめったに小売店に並ぶことがない。念のために「たら子」はスケトウダラの子なのだ。
タラ科の魚であるスケトウダラは普段は深海にいて、冬の産卵期になると浅場にやってくる。これをもともと日本海新潟県などでもたくさんとっていて、関東に送り出してきていた。これが徐々に北海道産がメインになる。また頭部を落とし、青森県産の真子と白子を抱いたドレスも最近あまり見かけないが、今年は来て欲しいものである。
関東でもほんの20年くらい前まで、秋も深まると市場に小山をなすほどのスケソウダラ本体が見られた。当然、本来は副産物であった「たら子(すけ子)」なども消費地である東京で、普通に食べられていたはずだと思っていた。
ところが関東の資料を読むと、やっと大正時代末(1920年代)くらいに「たら子」が登場してくる。比較的北国との繋がりが深い関東、特に東京でも「たら子」が身近になるのは昭和になってからかも知れない。
スケトウダラ本体と「たら子」の逆転現象が起きた時代は不明である。想像でしかないが、スケトウダラのすり身加工が確立した高度成長(1955-73)期くらいからだと考えている。ちなみに高度成長期終盤に開催された大阪万博で国内の伝統的、かつ貴重な文化的財産が大大的に破壊、破却される。ばかやろう! 万博なのだ。

基本的にパック詰めされている


さて、「たら子」というと「塩たら子」や「めんたい子」が思い浮かぶのではないか? 関東のスーパーでもこの加工品は常に置かれているものの、「生たら子」はめったに見かけることはない。
「最近はたらこを煮つける主婦がいなくなった」とボクの周りの魚屋が嘆くが、昔の主婦(主婦と限ると差別的だけど)は寒くなると生たら子を、今よりも比較的普通に自分の家で煮ていたのかも知れない。
ちなみに東京都・神奈川県のスーパーや小売店の惣菜売り場でも「生たら子」を煮たものは決して珍しくはない。

「生たら子」は大小を分けてよく洗う


さて、10月26日が「生たら子」の今季初買いだった。
「生たら子」が市場に並ぶ光景ほど秋の深まりを感じるものはないだろう。北海道産で今年は比較的安い。
上京して初めて「煮たら子」を江戸川区小岩の食堂で食べたときの感動は忘れられない。たぶんこれがボクの初たら子だと思っている。初食いであったためもあってか、いたく気に入り、少々お高いのに「煮たら子」の皿をとっていたことが思い出される。
以後、毎年、「生たら子」をたいている。
ちなみにここ数年醤油っ気も塩っ気すらもあまり強いのは苦手になっている。最近のボクの傾向は甘め&塩分控えめである。
「生たら子」はパックに入っているので大小を分ける。
「煮たら子」には小さめ、同時に作る「塩たら子」は大きめを使う。

煮つめるのではなく漬け込む

鱈子煮の漬け込み

塩水の中で血管や胆汁などの汚れを洗い、ザルに上げて水分を切る。意外にこの一手間が重要だと思っている。
鍋に酒・みりん・砂糖・醤油を煮立ててできるだけそのまなの「生たら子」を放り込む。二等分したり、細かくするほど調味料が強く入り込む。
驚いたことに年をとってから、この濃厚に醤油が染みこんだ味が苦手になっているのだ。
最近の味つけはみりん・砂糖多めの甘甘である。
これを煮汁ごと寝かせて、随時食べる。

最近の傾向は煮染めすぎないあっさり味

鱈子煮

自宅で煮ると佃煮のごとく醤油煮染めしものでも、あっさり醤油気の少ないものでも作り分けられるのがいい。
禁酒中なのでこれで飯の友とするが、これほどOryzaに合うものはない。
Oryza sativaとGadus chalcogrammusとの出合いって素晴らしい!

このコラムに関係する種

スケトウダラのサムネイル写真
スケトウダラPollack海水魚。水深0-2000mの表層・中層域。北海道全沿岸、青森県〜和歌山県白浜の太平洋沿岸、青森県〜山口県の日本海沿岸。・・・・
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