コイ
代表的な呼び名ヤマトゴイ
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珍魚度・珍しさ | ★★★ がんばって探せば手に入る |
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魚貝の物知り度 | ★ 知らなきゃ恥 |
食べ物としての重要度 | ★★ 地域的、嗜好品的なもの |
味の評価度 | ★★★★ 非常に美味 |
分類 | 顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区ニシン・骨鰾下区骨鰾上目骨鰾系コイ目コイ科コイ亜科コイ属
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外国名 | Common carp, Carp
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学名 | Cyprinus carpio Linnaeus, 1758
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漢字・学名由来 | 漢字 鯉 Standard Japanese name / Koi Linnaeus Carl von Linné(カール・フォン・リンネ 1707-1778 スウェーデン)。二名法を確立。 |
地方名・市場名 |
概要
生息域
淡水魚。河川の中・下流域、湖沼、ダム湖。
日本全国。
生態
雑食性で動物性のイトミミズやタニシ、シジミ、植物の藻や水生植物などを食べる。
産卵期は5月上旬から初夏にかけて。
基本情報
国内にはもともと日本列島に生息していたノゴイ(マゴイ)と、ユーラシア大陸からもたらされて今では普通に見られるコイ(ヤマトゴイ)の2種がいる。このヤマトゴイは明治以降に台湾や中国からもたらされたものが、一部野生化し、また養殖地域が広がったものだ。対するに在来種であるノゴイは非常に希少種で、食用とされているのはあくまでもヤマトゴイの方だ。
漢字「大和鯉」の由来は古くから淡水魚養殖が盛んな大和郡山市からきているとする説が有力であるとされている。
古くから養殖が行われ、内陸部では重要なタンパク源であった。コイはマダイとともに非常に人口に膾炙した魚だった。四条流包丁式に使われ、五月の節句の鯉のぼり、また龍門の鯉のような伝説まである。
身近な水源で飼うことが出来、雑食性で成長が早いので人気の高い魚であったものが、海水魚が手軽に手に入るようになって、関東などでは流通上特種なものである。今や関東の市場などでも注文しないと手に入らない存在になってしまっている。また食べる地域も限定的。コイの伝統料理とともにコイを食べる習慣も徐々に少なくなっている。
海水魚に負けない味のいい魚なので、食文化を残した地域においでの際にはぜひ食べてみて欲しい。
珍魚度 流通上、生きている、もしくは下ろしていないコイを手に入れるのは非常に難しい。釣りをするか、養殖業者を探して買うしかない。
水産基本情報
市場での評価 入荷量は関東では非常に少ない。値段は安い。
漁法 養殖ものがほとんど。えり(定置網)、釣り
主な産地 秋田県、山形県、福島県、群馬県、滋賀県、宮崎県、福岡県、長野県、富山県、鹿児島県
選び方・食べ方・その他
選び方
生きているもの。生きている内に調理したもの。
味わい
旬は寒くなってからで、特に冬。夏は内臓が痩せていて、生殖巣が膨らんでいない。秋になるとこの内臓、生殖巣が膨らんでくる。
鱗は薄く大きく、生食する以外は取る必要がない。よく煮込むと、身よりもおいしい。皮は厚く、煮るととろっとする。骨は頭部、中骨、筋肉に入り込んだ小骨も硬い。
血合いの赤い透明感のある白身。熱を通しても硬く締まらず、長時間の煮てもいい。ゼラチン質が多く煮凝りができる。
筋肉よりも卵巣、精巣、内臓の方が味がいい。
注意/寄生虫の肝吸虫、横川吸虫などが寄生する。食するについては自己責任で。
栄養
ー
危険性など
肝吸虫、横川吸虫などが寄生
食べ方・料理法・作り方
真子と内臓がいちばんうまいと思うが、くせのない上品な白身である身のうまさも際立つ。
好んで食べる地域・名物料理
婚礼に鯉こく 長野県長野市松代では婚礼にも「鯉こく」が出た。
鯉のさしみ 〈私が甲府の學校の時分寄宿舎に生徒と起臥を供にしていた頃は、山國の「オサシミ」は鯉ときまっていた。鯉のさしみが食膳にのぼる日は、きまって鯉こくが出た。……寄宿舎で鯉の御馳走が出るのは一年に一度クリスマスの祝宴くらいで、……(1915年前後か)〉。甲府の學校とは山梨英和女学校のこと。村岡花子。『ふるさとの料理』(村岡花子ほか 中央公論社 1955)
産後の乳の出が良くなる 長野県ほか日本各地で産後に食べるとよいとされていた。
こいと豆腐汁 新潟県福島潟周辺。針供養の1月8日(旧暦の12月8日)にコイと豆腐の汁を食べた。『聞き書 新潟の食事』(農文協)
煮つけ 子持ちのコイを筒切りにして甘辛く煮たもの。湖北水鳥ステーション(滋賀県長浜市)
いばら飯 コイを丸ごと炊き込みご飯にしたもの。どうしても撒きびし状の骨や鱗が残るのでそれを「棘(いばら)」としている。[南濃輪中地帯]『聞き書 岐阜の食事』
保存食 四国第二の高山、剣山山頂に近い木屋平(現徳島県美馬市木屋平)は山間部にあり、川まで小一時間かかる。コイは庭にある池などで飼い、食用としていた。
うす(臼)のある魚 〈産婦にはうす(臼)のある魚を食べさせるとよいといって、鯔(ぼら)などを食べさせた。また乳がよく出るようにといって鯉を食べさせるふうもある。〉。現島根県安来市広瀬町比田。『能義奥の民俗』(畑伝之助 島根県文化財愛護協会 1967)
加工品・名産品
鯉ぶかし かなり濃いめの味つけだが、骨まで軟らかく煮上げている。[丸原鯉屋 山形県寒河江市]
鯉うま煮 比較的こってりと煮たものだが、まったくイヤミがない。[蓮見商店 群馬県邑楽郡板倉町]
鯉うま煮 比較的あっさりと上品に煮上げたもの。[西友 滋賀県高島市今津]
鯉の新巻 富山県福岡町、長野県
鯉あらい 鯉を洗いにして酢みそをつけたパック。[岡水産 北海道石狩市]
釣り情報
さなぎ粉(カイコのさなぎの粉末)、サツマイモなどを使った練り餌を吸い込み仕掛け(練り餌を団子状にしたものを螺旋状の道具につけ、その周りにハリをつけたもの)でぶっ込み釣り。ひたすら待ちの釣りだ。
歴史・ことわざなど
淀の鯉(淀鯉) 〈城州(山城)淀川の産がもっともよい。武蔵浅草川、常陸箕輪田のものがこれに次ぐ。近江の琵琶湖・信濃の諏訪湖のものもまた供に佳い。奥州の北地には鮒はいるけれども鯉はまったく存在しない。〉『和漢三才図会』(寺島良安 東洋文庫 平凡社 正徳2年 1712)。この場合の淀川とは現淀城のあるあたりのことだと思われる。
野鯉 コイはユーラシア大陸のものが中国を経て移入されたものとされている。ただし、国内でも化石が発見されている、一般にコイとされている「真鯉(まごい)」よりも体高の低い、黒っぽい「野鯉(のごい)」がいることから国内原産の別種のコイの存在が浮かび上がってきている。国内に棲息するコイが2種になる可能性も大。
コイの養殖 中国で紀元前1500年頃始まるとされる。紀元前5世紀に陶朱公范蠡(はんれい)が『養魚経』というコイの飼育法を表している。范蠡は越の勾践を覇王とした臣。
包丁儀式 コイをはじめとする淡水魚を使った料理は年々廃れていっているように感じる。古く縄文時代から食用とされ、また古代には特別な意味合いを持つ魚としてマダイ以上に珍重されていた。平安時代より四条流(宮中での善部の一流派)の包丁儀式(包丁式)で使われることでも有名だ。
東京の鯉 東京下町は水路の発達したところでコイやフナ、ドジョウなどをよく食べていたという。それが戦後、高度成長期、そして最近となってほとんど残っていない。
ことわざ 中国の竜門の鯉(コイが黄河にある竜門を超えると竜になる)。ことわざの「鯉の滝登り」もここからくる。
俎板上の鯉 死を待つしかない状態、絶体絶命の状態のこと。まな板の上にのせられ、包丁でさばかれるコイに例えたもの。
鯉寺 龍宝寺(東京都台東区寿1-21-1)のこと。以下抜粋「嘉永6年(1853)3月29日、浅草新堀川龍寶寺門前付近に四尺五寸程なる大鯉浮かびいたるを見て、町の人々大騒ぎとなり之を捕えんとせしも大鯉暴れ容易に捕獲出来ず遂に船を出し血気の若者達数名川に飛び込み各自刃物竹槍等にて突き刺し漸く大鯉の弱りたるところを捕え河畔なる龍寶寺庭内大池に放ちやりしか。4月3日大鯉は遂に死せり。
然るに近隣の者、その夜大勢集まりてこれを食せしところ、にわかに高熱にななされ吐血する者も有り40日余大いに苦しみたり。特に料理せし者のうち2人は同月16日に、他の4人は同月23日相次いで悶死せり。遺族の者達この不思議なる祟りにおどろき、ゆかりの者一同と心を合わせ鯉の霊を慰めんと龍寶寺境内に供養の碑を建て篤く弔いたり。」
ぶんしろ 武蔵国にて鯉魚の小なるを「ぶんしろ」と称す。『物類称呼』(越谷吾山著 安永4/1775 解説/杉本つとむ 八坂書房 1976)
地方名・市場名
備考養殖ものではなく天然もののこと 場所一般的に
備考色がついたコイのこと。 場所一般的に日本各地
参考文献 場所佐賀県筑後川周辺
参考文献 場所岡山県岡山市
場所愛知県旧中島郡・可児郡(現稲沢市・一宮市・清須市、可児市)
備考食用ゴイを養殖するうちに突然変異で発色した個体。 参考文献 場所新潟県二十村(現長岡市山古志村・川口町)
備考養殖されたコイのこと。 参考文献 場所日本各地
参考文献 場所東京
参考日比野友亮 場所東京都、群馬県、福岡県久留米市など一般的に
参考文献 場所東日本
参考文献 場所沖縄
備考〈明治24年大和郡山産のものを放流せるもの〉 参考文献 場所滋賀県琵琶湖
参考文献 場所滋賀県琵琶湖労田川筋
サイズ / 時期600g以下 参考文献 場所福岡県久留米周辺
備考野生。 参考文献 場所福島県棚倉、愛知県犬山、琵琶湖
参考文献 場所福島県相馬地方
備考特に佐久市で養殖されたコイをさす。また単に養殖されたものという意味合いももつ。 参考長野県小売店 場所長野県
参考文献 場所長野県松本
備考養殖されたコイのこと。 参考文献より。 場所滋賀県大津市その他