夏が来れば食べたくなる、鯉濃
日日食べるものだけど、夏の鯉濃は後になるほどうまい
鯉濃(こいこく)は煮れば煮るほど、みそとコイが一体化し、液体というよりも味は違うけどドミグラスソースのようなものに変化してくる。この過程が面白い。
鯉濃はみそ汁でもなくみそ煮でもない。
作った翌日が、一日目で、ことことと煮て、冷まして温めたものは骨が気になるやら、みその味が馴染んでいないやらで、おいしくはない。
2、3日目はまだコイの存在感が強く感じられる
寒い時期のコイは早く身も骨もすぐに柔らかくなり、味が馴染むが夏の鯉濃はよく煮ないとおいしくない。
2日、3日目になってやっと鯉濃が完成する。
まだコイの存在感が強く、汁と一体化していないが、この状態を好む人が多いようだ。
コイの骨は魚類中もっとも危険なものだが、その骨すらも舌の上で脆弱に崩れてしまうほど柔らかくなる。
残念なのは内臓が痩せていることである。生殖巣がないのは仕方がないが、いちばんおいしい部分が少ないのって悲しいものである。
汁とコイが一体化して初めて鯉濃は完成する
4日目になると汁と身とわたが反液化しているので、箸よりもスプーンで食べたくなる。
八丁味噌は酸味の尖った部分があるが、それがとれているので、パンにつけてもおいしい。フルボディの赤ワインに合う。
ここに完成をみるが、同時に最後の一碗でもある。
コイは買いに行かなければ手に入らない
毎年、旧盆前に必ず長野県か千葉県にコイを買いに行く。
いちばんおいしい部分である内臓が痩せて、当たり前だけど生殖巣もなく、あまりおいしいとは言えぬ時季だけど、猛暑に疲れるとやたらに鯉濃が食べたくなるからだ。
昔は長野県までコイを買いに行っていたが、最近、『スーパーマーケット ツルヤ』が群馬にも進出し、佐久鯉が買えるので、群馬で買うことが多くなってきた。
それにしても群馬県の地スーパーはつまらなかった。地物を大切にするという傾向がなかったのである。
さて、長野県だけではなく最近、千葉県でもコイの切り身は鱗を取ってある。できれば鱗つきの方が好ましく思うけど、煮方が変わってきているのかも知れない。
鯉濃は作った翌日から食べ始める。
煮ては冷まし、煮て冷ます。
長野県佐久市では一度に大量に作り、1週間くらい食べ続けていったらしい。
今回は4切れしか買ってきていないので4日間で総てなくなる。
これだけは大家族でコイを何本も使って作る方がいいようだ。
ちなみに鯉濃はご飯が合う。
作り方は難しくはない。
切り身は湯引きする。(佐久ではこの工程はやらないみたいだ)
氷水に落として表面のぬめりを流す。
鍋に水と酒、コイの切り身、しょうがを入れてことことと煮る。
切り身が柔らかくなってきたらみりんと八丁味噌を加える。
今回は八丁味噌だけにしたが、京都の白みそを合わせた方が早くコイが柔らかくなる。
みそを入れて3時間ほど煮て火を止める。
仕上げに醤油を少し加えて味を調える。
翌日、もう一度1時間ほど煮る。
寒い時期はこんなに煮なくてもいい。
これを数日繰り返す。