202005/20掲載

栃木県宇都宮市今里、梵天祭の料理

梵天が山頂の神社をめがけ駆け上る


栃木県宇都宮市今里にある羽黒山神社の創建は平安時代康平年間(1060年頃)とされている。
ここでで秋、11月の第3土曜日に行われるのが梵天祭だ。
江戸時代の中頃に収穫を感謝して始まったもので、350年以上の歴史がある。
15メートルほどの2本の長い竿竹の先に梵天という房状の飾りをつけたものを、今里の町を揃いの半纏をまとった若者が練り歩く。
その後、一気に山上の神社まで運び上げ、境内に立て奉納する。

祭の日には親戚・家族が集まる

羽黒山神社境内に梵天を立てる。

今里内のお宅では親戚が集まり、けんちんや、里芋の入ったけんちんうどん、里芋など素朴な料理が並ぶ。
そこに欠かせなかったのが「さがんぼうの煮つけ」と「あゆのくされずし」である。

梵天祭のとき出される「さがんぼうの煮つけ」


また社務所で出される膳には「さがんぼの煮つけ」がのる。
この地区では梵天祭だけではなく、寒い時季には盛んに「さがんぼ」を食べる。
祭や正月などにも欠かせないものである。
「さがんぼう」は栃木県全域、茨城県の山間部、海から通り地域での呼び名だ。
江戸時代の『物類称呼』(越谷吾山著 安永4/1775 解説/杉本つとむ 八坂書房 1976)に〈下野国宇都宮辺にて「さがぼう」と云う〉がある。
語源は「つらら」の形が本種の皮を剥いた状態、剥きザメに似ているので、「つらら=すが」からだとの説がある。
明らかに供給地であったであろう、福島県や茨城県の海辺では「あぶらさが」という。
この「あぶら」がとれて、「さが」が残り、愛称などに使う「ぼう」がついたのかも。
剥き身にして運べ、煮つけにしてとても味がいいので、海のない栃木県で重宝されたのがわかる。
写真は羽黒山神社の社務所で振る舞われていた「さがんぼの煮つけ」。

梵天祭の日に出来上がる「あゆのくされずし」


梵天祭に合わせて、今里地区の方々が作るのが「あゆのくされずし」である。
夏、7月にとったアユは開いて塩漬けにしておく。
羽黒山神社の梵天祭の一週間程前に塩漬けしたアユを水洗いして、もどした切り干し大根、ご飯と漬け込む。
伝統的な製法そのままに作っている笹沼春子さんが作ったものだ。
比較的発酵臭が少なく、本なれずしではなく、ご飯とともに食べる「なまなれ」である。

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