バイ
代表的な呼び名バイガイ
珍魚度・珍しさ | ★★ 少し努力すれば手に入る |
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魚貝の物知り度 | ★★★ 知っていたら通人級 |
食べ物としての重要度 | ★★★ 一般的(流通量は普通) |
味の評価度 | ★★★ 美味 |
分類 | 軟体動物門腹足綱前鰓亜綱新腹足目アクキガイ超科バイ科バイ属
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外国名 | Japanese ivory-shell
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学名 | Babylonia japonica (Reeve,1842)
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漢字・学名由来 | 漢字 貝、蛽 Standard Japanese name / Bai 目八譜 1843(天保14)、武蔵石寿(武蔵孫左衛門)が編んだ貝の図譜のひとつ。図は服部雪斎が描く。武蔵石寿は貝類を形態的に類別。1064種を掲載する。現在使われている標準和名の多くが本書からのもの。貝類学的に非常に重要。 Reeve Lovell Augustus Reeve (ロベル・オーガスタス・リーブ 1814-1865)、イギリス。貝類学者。 |
地方名・市場名 |
概要
生息域
海水生。水深2メートル〜20メートルの泥地。
北海道南部から九州、朝鮮半島。
生態
雌雄異体で交尾を行う。
産卵期は6月から8月。
浅い泥の上などで腐肉、死んだ魚などを食べている。
基本情報
日本各地の浅い海にいるもっとも一般的な食用貝である。
土地土地での呼び名も多く、国内でもっとも馴染みのあるものであった。
食用としてだけではなく、貝殻を細工物に使われた。代表的なものはとがっている部分を切り、鉛を流し込んで独楽とした。これがベイゴマの語源である。
この食用巻き貝の代表だったバイが激減したことがある。
1960年代から船底や漁網に付着生物が着くのをふさぐために使われはじめたトリブチルスズ(TBT)、トリフェニルスズ(TPT)が海に拡散して、本種やイボニシなどをインポセックス(雌の雄化)に。漁獲量が激減して流通上とても少なくなる。
本種に取って代わったのが北海道などで揚がるエゾバイやや、インド、東南アジアなどからの輸入もの。加工品(煮貝)として出回るほとんど総てはインド産セイロンバイ、アラビア海のソマリアバイなどからの輸入ものだ。
2020年現在、徐々に日本海などからの入荷量が増えてきている。
珍しさ度 一般的な食用貝ではあるが、最近ではやや特殊なものとなっている。少し探すしかない。
水産基本情報
市場での評価 入荷量は少ない。値段は高値安定。
漁法 カゴ漁
産地 日本海側からの入荷が多い。
選び方・食べ方・その他
選び方
原則的に生きているもの。貝殻につやのあるもの。
味わい
旬は春〜初夏。
貝殻は薄く歩留まりがいい。筋肉は熱の通し方が浅いと硬い。わたに苦みやえぐみがない。
栄養
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危険性など
極めて希だが、過去に中毒例がある。自治体などの情報に従うといい。
1965年、静岡県沼津産のバイを食べて視力減退、瞳孔拡大、言語障害、口渇などの症状がでた。原因物質はネオスルガトキシン、プロスルガトキシン。
1957年には新潟県寺泊で、1980年には福井県でフグ毒として有名なテトロドトキシンによる中毒があった。
食べ方・料理法・作り方
好んで食べる地域・名物料理
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加工品・名産品
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釣り情報
巻き貝を釣るなんていうとビックリされるだろうか? これが釣れるのだ。アオイソメなどをエサにした投げ釣りでぽつりぽつりと上がってくる。釣れる条件としては夜、もしくは潮が濁っていること。
歴史・ことわざなど
トリブチルスズ化合物 船の付着物(フジツボなど)を防止するために船底に塗るトリブチルスズ化合物(TBT)のために雌が雄化する(インポセックス)により激減した。
缶詰 缶詰の材料にもなった。
年取に食べる 〈商家では、除夜や歳始にはいつもこれを必ず酒の肴として用いる。貨殖が千倍、万倍になるという祝いの意味をとって用いるのである。〉『和漢三才図会』(寺島良安 東洋文庫 平凡社 正徳2年 1712)
独楽 〈紀州熊野の産は大きくて厚い。大きなもので長さ三寸ぐらい。小児はこの殻の頭の尖りを打ち去って平均にし、細い苧縄を纏いつけ、独楽廻しのようにして舞わせて遊ぶ。〉『和漢三才図会』(寺島良安 東洋文庫 平凡社 正徳2年 1712)
遊び方は台の上にござ、厚い布などを中心をくぼませて張る。そこで2人が同時にベイゴマを回し、相手の独楽をはじき出した方が勝ち。
博打性の高い遊びだったようだ。
〈小児はこの殻の頭の尖りを打ち去って平均にし、細い苧縄を纏いつけ、独楽廻しのようにして舞わせて遊ぶ〉。『和漢三才図会』(寺島良安 東洋文庫 平凡社 正徳2年 1712)
川名興は実際に鋸南町(千葉県)の老漁師に貝のベイゴマを作ってもらっている。ただしこちらは体層部分(口の部分)を砕き作る。『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社)
地方名・市場名
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 場所三重県浜島町
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 場所三重県紀伊長島
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 場所三重県紀伊長島・尾鷲
参考文献 場所佐渡相川、有明海、玄海
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 場所佐賀県鎮西町・唐津市湊、熊本県苓北町、長崎県長崎市
参考文献 場所北陸
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 場所千葉県、神奈川県三浦・葉山、福岡県
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 場所千葉県君津市人見
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 場所千葉県君津市坂田
参考文献 場所千葉県富津市竹岡
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 場所千葉県富津市青木
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 場所千葉県富津市青木・木更津市貝淵・江川
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 場所千葉県木更津市久津間
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 場所千葉県銚子市
参考文献 場所宮崎県青島
参考文献 場所富山湾周辺・氷見・新湊
参考文献 場所山口県大島
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 場所山口県川尻・三見・玉江・奈古
参考文献 場所山口県見島
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 場所山口県豊浦町・小野田
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 場所山形県庄内
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 場所新潟県佐渡
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 場所新潟県佐渡両津
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 場所有明海
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 場所石川県かほく市高松町
参考文献 場所石川県小松市安宅町・富来町
参考荷 場所石川県金沢市・七尾市
参考文献 場所神奈川県三浦半島
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 場所福井県
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 場所福井県、有明海、玄海
参考文献 場所福岡県福津市福間町
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 場所福岡県糟屋郡古賀町(現古賀市)
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 場所福島県津屋崎
参考文献 場所秋田県男鹿半島・八森・秋田市
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 場所長崎県
参考文献 場所長崎県対馬市上県町久原
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 場所長崎県対馬市佐須奈
参考文献 場所長崎県島原半島北部
備考バイが訛って「ビャー」となったのでは。福畑敏光さん。 参考福畑敏光さん 場所長崎県平戸市度島
参考文献 場所青森県、陸中海岸、新潟県佐渡・新潟市、東海道方面
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 場所静岡県伊豆半島・白須賀海岸・舞阪
参考文献 場所静岡県静岡市
備考米子市はスーパーの表示で、白バイ(エッチュウバイ)に対しての呼び名。 参考スーパー 場所鳥取県米子市
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 場所鹿児島県指宿市
備考色合いが黒いものが多いので日本海で広くこう呼ばれていそう。 場所新潟県、島根県
参考『日本貝類方言集 民俗・分布・由来』(川名興 未来社) 場所千葉県小湊・木更津、和歌山県白浜、高知県高知市