ハマグリ
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標準和名ハマグリの話郷土料理
江戸の深川飯について
珍魚度・珍しさ | ★★★ がんばって探せば手に入る |
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魚貝の物知り度 | ★★★★ 知っていたら達人級 |
食べ物としての重要度 | ★★ 地域的、嗜好品的なもの |
味の評価度 | ★★★★ 非常に美味 |
概要
生息域
内湾性。淡水の流入するところで干潟から水深12m前後まで。
北海道南部から九州。
生態
産卵期は5月から10月。
孵化した卵はベリジャー幼生というプランクトン期を経て稚貝になる。
水管根元分の粘液線から多量の粘液を出し、これが1メートル〜3メートルの紐状になり。
潮流(潮の流れや、波など)を受けて海底上30センチ〜1.5メートル浮き上がり移動することができる。
珪藻類、有機物などを漉し取って食べている。
基本情報
北海道南部から九州までの干潟や内湾に生息する比較的大形の二枚貝だ。
国内ではひな祭りや節句、祝い事に欠かせないもの。食用だけではなく「貝合」などの玩具に、また「ぐれる」などの語源いなるなど様々な分野に登場している。
江戸時代江戸の町には深川、上総などから貝売りがやってきていた。中でももっとも上等のものが江戸湾で揚がるハマグリだった。現江東区には「深川蛤町」まであって、江東区が二枚貝の集積で江戸時代には重要な地であったのがわかる。今現在も東京湾でハマグリがとれているものの量的には少ない。
国内で激減している二枚貝で、青森県陸奥湾、東京湾東京都・千葉県、三河湾、伊勢湾、京都府宮津、大分県、熊本県などが産地。
市場で見る限り、一般的に売られているハマグリは九十九里などの地はま(チョウセンハマグリ)、台湾・中国などからのシナハマグリ、東南アジアからのミスハマグリにとって代わられている。
本種は手に入れにくい二枚貝となっている。
珍しさ度 消費地ではめったに見かけることがない。珍しい貝とまではいかないが、入手困難な二枚貝である。
水産基本情報
市場での評価 三重県、熊本県、大分県などから少ないながら入荷してくる。国産、輸入ものを問わず、ハマグリは大きさによって値段がつく。本種は比較的小振りであるために値段は安すい。
漁法 じょれん曳
産地 青森県、千葉県、東京都、三重県、大分県、熊本県、京都府
選び方・食べ方・その他
選び方
原則的に生きているもの。貝殻の表面がぬめぬめ、光沢のあるもの。滑りがなく、さらさらしている、色合いがさめて白っぽいものは古い。
味わい
旨みが強く、火を通してもあまり硬くならない。
栄養
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危険性など
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食べ方・料理法・作り方
ザルなどに入れて流水で洗う。水分をよく切っておく。これを昆布だし・酒・塩のなかで温めながら食べる。鍋に入れて口が開いたら食べ頃である。
好んで食べる地域・名物料理
■三重県桑名では「焼きはまぐり」が名物。囃子文句に「その手は桑名の焼きはまぐり」。
加工品・名産品
■ 三重県桑名では「時雨煮(しぐれに)」、「時雨蛤(しぐれはまぐり)」が名物。これは伊勢名物の溜まり醤油でハマグリを煮たもの。囃子文句に「桑名の殿さん時雨で茶々漬け」。おむすびにも入れる。
釣り情報
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歴史・ことわざなど
伝説 「すずめ蛤となる」:『夢蛤 電子版』(大阪市自然史博物館)
伝説 「爵(すずめ)大水に入り蛤となる」と礼記にある。
伝説 「蛤蜃気楼をはく」。夏に環境が悪くなるとゼラチン状の粘液(ひも)を出し、海流に漂わせて、その浮力で移動する。蜃気楼とはこの粘液のこと。
伝説 「蛤蜃気虹をはく」とも。
夫婦和合 殻のかみ合わせは、対になっているもの以外は合わないので夫婦和合の徴(しるし)とされ、結婚の祝い事に使われる。
祝い膳 八代将軍徳川吉宗が、結婚の祝い膳にハマグリの吸い物を出すことを発案した。
旬と祭事 ひな祭りには「ハマグリのお吸い物」という。現在でも雛祭の3月3日以前、1週間前後がもっともハマグリ類の出るとき。
貝桶・貝合わせ 娘が輿入れするときに貝桶を持たせる。これはハマグリの貝殻360個に源氏物語などの絵をかいたもの。
貝桶・貝合わせ 殻のかみ合わせは、対になっているもの以外は合わないので左右の貝を合わせ当てる遊技「貝合(かいあわせ)」、「貝覆(かいおおい)」が生まれた。右貝を「地貝(じかい)」、左貝を「出貝(でがい)」とする。「地貝」を並べ、出貝を一個ずつ出して合うのを当てる。
貝桶・貝合わせ 殻合は中世以降になると、便宜のため左右の貝に絵または歌を書いた。
グリハマ ハマグリのことを「グレハマ」と呼んだ。ハマグリを逆さまに呼んで「グリハマ」としたものがなまって「グリハマ」になったもの。ここから話が食い違うこと、わけのわからぬ者のことを「グリハマ」とも言う。
ぐれる 「ぐれる」とは予想通りにいかないこと、また非行に走ることをいうが。これも「グレハマ」すなわちハマグリの貝殻を逆さまにしても合わないことから来る。
夏のはまぐり 魚河岸の符丁に「夏のはまぐり」。意味は「身(見)くさり、貝(買い)くさらずで、ひやかし客のこと。
初午の蛤 初午にハマグリを食べると鬼気に犯されない。
胡粉 人形の顔などを白く塗る胡粉(ごふん)の材料。
俗語 「うち蛤のそと蜆ッ貝」、「内の中の蛤貝、外へでると蜆っ貝(しじめっかい)」『明治東京風俗語事典』(正岡容 有光堂 1957)/「うーちのなあかの蛤ッ貝、外へ出ちゃ蜆ッ貝」『幼少時代』(谷崎潤一郎 岩波文庫 初版は文藝春秋社1957)
外弁慶に同じで内では積極的で外では恐がりで引っ込み思案であること。
池波正太郎 「(少年の頃)……深川へ行くたのしみは、道の何処にでもある飯屋へ入って、新鮮な蛤を味噌で煮て飯へかけた深川飯を食べられることだった」『江戸切絵図散歩』(池波正太郎 新潮文庫)
深川蛤町 現江東区永代・門前仲町の一部。江戸時代から昭和初期まで市場があったところ。ハマグリの活け越しなどが行われていたのだろうか。