202402/18掲載

三陸南部沖のマイワシを柔らかーく煮る

三陸南部沖のマイワシは脂がのっていた


八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産に三陸南部沖のマイワシがきていた。明らかに巻き網もので、漁場は宮城県沖から犬吠埼沖なので、産地(水揚げ港)は岩手県か、宮城県か、茨城県か、千葉県か、かはわからない。
この海域の巻き網の漁場はそんなに近くない。例えば北海道や大阪湾などの2㎏の荷のマイワシと比べると鮮度が落ちる。
刺身にして食べられなくはないが、どちらかというと焼きもの、煮もの用の魚である。マアジでもサバ類でもカレイ類でもそうだが、これを市場では「並もの」という。世の中こぞって、高鮮度化を進め高価格を目指しているせいか、最近では「並」の方が貴重なのである。
ときどき、魚は鮮度が命というヤカラがいるが無知蒙昧、愚か者である。1個千円のイチゴでジャムが作れないのと同じように、使い方によって鮮度の度合い、魚の値段が違っていないとダメだ。上物ばかりでは水産の世界は成り立たない。
マイワシは沖縄などを除く日本全国にいて、好不漁の波があるものの、まとまってとれ、味がいいので、非常に重要な魚である。DHA(ドコサヘキサエン酸)を多く含むなど健康維持にも欠かせない。
鮮度落ちが早いので、古くは下魚とされた時代もあった。貴族階級の和泉式部、紫式部が隠れてこっそり食べないと食べられない魚で、武家でも殿さんや将軍などの膳には決して上らなかった。だから、例えば徳川将軍の一族、将軍自身が病気がちで短命だったのだ。
さて、久しぶりのマイワシは荒天のためにそんなに安くはなかった。この安定しないところも天然ものの魅力である。個人的にはだけど魚介類がナショナルブランドのチョコレートのように、質と値段が一定になっては世も末だと思っている。

最初は酢と水だけで煮こぼす


さて、水氷の中の個体をじっくり触ってみると、昔の並イワシと比べると段違いに鮮度がいい。
持ち帰ったら計測して撮影して、おもむろに頭部を落とす。
ワタを出し、水分をよくきり、魚のかさの2倍くらいの酢と水半々の中で20分前後下煮する。
煮汁を捨てて今度は、酒と水半々、魚の4倍くらいの水加減にしてことことと煮る。
煮汁が半量になったらみりんと醤油、生姜のせん切りをたっぷり加えてまた煮る。
煮汁が少なくなったら火を止める。

見た目からして至って普通のご飯のおかず


温かい内に取り出そうとすると煮崩れるので、このまま冷めるまで鍋止めをする。この冷めるまでの鍋止めの間で調味料の味が魚に入り込む。
これは明らかに惣菜である。
神経棘(小骨)も中骨もともに食べられるほど柔らかいので、子供でも老人に食べさせても安心である。
長時間煮ているのにマイワシの、脂分の甘味と背の青い魚のうま味が満喫できる。
1尾もあれば1食のおかずになるが、ご飯がやたらにすすむ。

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マイワシのサムネイル写真
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