202402/12掲載

あまりにも当たり前の料理だけど、サワラの西京焼きは、ずばりウマスギ!


八王子総合卸売センター、福泉で買い求めた全長72cm・2kg弱のサワラの多くの部分を「西京漬け」にした。焼くと「西京焼き」である。
「西京漬け(西京焼き)」という言語は京都で生まれたものではなく、関東で生まれたものだと、京都中央市場関連棟で会った人に教わった。
考えてみると、当たり前である。京以外に京などあるわけがない、と思っている人の多い京都で「西の京」なんて、奈良市の地名のような言語の料理名を作るわけがない。
昔、西陣のうどん屋で、「東京に向かうのは下りです」と言われたことがあるが、それこそが京都人の京都人らしさだと思う。
株式会社『西京味噌』の社名も別に東京を意識してつけたとは思えない(そうかもしれないけど)、たぶん宮城の西、室町一条に本店があったためではないか。
東京に進出した最初の京の、白みその会社が、西京味噌で、東京ではこれを使って漬け魚を作ったので、いつの間にか、「西京漬け」という言語が東京で生まれたのだ、というのはまだ正しいかどうかわからないということも、明記しておきたい。
この米麹みそで、麹分がやたらに多く、塩分濃度が低い上に発酵があまり進んでいない、賞味期限がやたらに短いものを「白みそ」といい、京都大阪などで作られている。なぜか香川にも非常にうまい「白みそ」があるが、やはり旧畿内に量的には勝てない。
漬け魚などに使う「白みそ」のあら味噌(粗く濾したもの、もしくは濾さないもの)で関東で比較的簡単に手に入り、また通販で買いやすいのも株式会社『西京味噌』のものだ。とてもよくできたみそで味がいいので、我が家の定番漬けみそとなっている。
余談になるが京都市内でいちばんよく買う、白みそは『山利』のもので、湯に溶いただけで頗る付きにうまい。でも東京では一部の小売店でしか手に入らない上に濾したみそしか売っていない。
もともと『西京味噌』から「西京漬け」という言語が生まれたとしたら、我が家で作っている白みそ漬けこそがまさに「西京漬け」と言っていいだろう。
作るのは簡単である。
サワラは切り身にして振り塩をする(振り塩をしない魚もある)。
1時間ほど待ち(今回は脂が乗っていたので。脂がないものは短時間でいい)、西京味噌をみりんでゆるめた地に1日以上漬け込む。このとき柚子や実山椒を加える人がいるが、個人的には好きではない。
地の劣化が早くなるからだ。地は使い方によっては4、5回使える。香りづけは焼き上がりで十分だと考えている。
焼いて食べてみて、ちょうどいい加減のときに取り出して冷凍保存しておく。
5切れ作っておいた西京漬けが昨夜でなくなった。
自然解凍して、慌てずにじっくり焦がさないように焼き上げ、夕食のおかずにしたけれど、箸が止まらなくなるというか、ご飯がすすむ味なのである。
優しい味なのに、ご飯に合う。
至って平凡だと思える味こそが普遍的な味だ、と痛感する一瞬でもある。

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サワラのサムネイル写真
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