202402/06掲載

サワラ未満だけど、とてもうましで、尾は超うまし

サワラ未満で、値段も3㎏上よりも安い


毎年、1、2月は慌ただしく、うっかりミスがやたらに多い。八王子総合卸売センター、福泉で全長72cm・2kg弱のサワラを買ったが、産地を確かめ忘れた。鮮度抜群で見た目的にも美しいので、思わず手が出てしまう、といった個体である。2㎏を超えると高級魚なのだけど、今回のは2㎏ぎりぎりで、しかも2月なので、比較的安く買えた。
サワラは回遊魚で、夏から冬にかけて外洋にいて、春になると産卵に内湾に入る。典型的な肉食魚である。
本来、駿河湾西部・瀬戸内海以西で揚がっていたサワラが2004年前後に、山陰で突如とれはじめた。それからそのまま瞬く間に、能登半島でも揚がり始め、相模湾、東京湾が産地になり、東北で揚がるようになり、今や本州以南が産地になっている。
津軽海峡をこえて北海道南部でも見られるようになり始めているので、まさかとは思うがサワラがブリと同様に北海道で大量に揚がる可能性が出て来ている。
2010年くらいまでサワラは西日本のものだったが、最近では東京湾でも盛んに水揚げされていることもあり、全国的な魚と化している。
古くからサワラの旬は冬なのだけど、残念なことに漁の最盛期は春だった。サワラをとてもたくさん食卓に乗せる岡山県でも、高値をつけるのは「冬サワラ」である。このわかりやすかった旬が最近、あやふやになっている気がする。
秋はともかくとして夏ですら味のいいサワラが揚がるのである。もちろん全国的にみると味の安定期である冬ですらたっぷり揚がっているのだから、温暖化のせいで不気味だが、とにかく喜んでいいだろう。

尾の部分の刺身は見た目は悪いが味は最高にいい


さて、あまりにもいい、サワラだったのでまずは、中(中心部分)を焼霜造りに、尾の部分を刺身にしてみた。
最近、細長い魚の「尾」の味に注目をしている。どうやら細長い魚の尾は押し並べて味がいい、という法則がなりたつのではないかと思っているのだ。最低眼、2㎏を超える大型の細長い魚の尾は間違いなくうまい。
当然、サワラの尾は細長い魚の中でも取り分けうまいに決まっていると考えた。
早速、刺身にしてみたら頭部に近い方が脂はあるものの、尾の方に深い味わいがある。
魚の味は脂だけではないという典型であるが、尾はすこぶるつきにうまいことを痛感する。

あまりにも平凡な料理と化した焼霜造り


中ほどは定番中の定番である、焼霜造りにする。これなど最近、外食でも普通となっているが、それほどわかりやすいうまさだ、ということだ。
今回の大きさでは、それほど脂が強くない。ボクの年齢でもたっぷり食べて、腹に重くないのがいい。
サワラの水揚げは明らかに増えていると思っている。北に生息域が広がっているからだ。考えてみると震災を受けた石川県はサワラの名産地なのである。
未利用魚というあまりにもヘタくそな言語は使いたくないが、確かに知名度が低くて大量にとれる魚を食べるのも重要ではある。ただ、たくさんとれる知名度の高い魚を食べるのことも重要だと思っている。
能登のサワラを食べることは震災復興にもなるし、他の地域のサワラを食べることでも地域振興にもなる。

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サワラのサムネイル写真
サワラJapanese spanish mackerel海水魚。沿岸表層性。北海道南部〜九州南岸の日本海・東シナ海・太平洋沿岸、瀬戸内海、沖縄本島。東シナ海大陸棚域、朝鮮半・・・・
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