202402/05掲載

今季、明石のノリはいいノリだ

明石海峡ノリ景色


兵庫県明石市の「あかし」の由来語源は、ボクが勝手に考えたことだけど、朝日で「赤く染まる」場所という意味だと思っている。由来をあれこれ考えても切りがないが、明石に行けば誰だって、こう思うはずである。
明石の町は明石海峡から上る朝日のせいでほんまに朝っぱらから赤い。しかもこの朝日のせいかどうかはわからないが、明石海峡から播磨灘でとれるものはみな美味、である。
明石鯛(マダイ)、明石鮹(マダコ)、イカナゴ、などなど挙げていくときりがない。これをして、ボクが明石に対して考えたのが「赤」という色と「おいしいあかし(美味しい明石という意味と、美味しい証という意味がある)」というコピーである。
さて、明石海峡から上った太陽が、播磨灘に陽光をそそいで、育つのが、「明石のり」である。

日常的にも、祝儀やハレの日にも食べて欲しい


少しノリの説明をすると、この至って日常的な食品である「のり」の原料はスサビノリという植物である。分類するとウシケノリ科アマノリ属スサビノリで、赤い色素を持つ紅藻の仲間である。
千葉県立博物館の菊地則雄さんの説明がわかりやすい。「(植物の)ウシケノリ科には食べられないウシケノリ属と、食べておいしいアマノリ属があり、スサビノリはその食べておいしいグループの代表的なものだ」となる。
このおいしいアマノリの仲間には、日本海沿岸、特に島根県十六島で多産する標準和名のウップルイノリや、和歌山県など比較的暖かい地方でとれるツクシアマノリなどがある(ノリの名前は地域地域で変化する)。
スサビノリを秋に、網に種つけをし、海に張ると寒くなるに従い、大きく育つ。ちなみに、養殖とはいえ別に海でエサをやるわけではなく、海の栄養分を藻体が取り込み、光合成しているだけでしかない。ブリなどの自然への負荷が大きい養殖とは分けて考えないとだめだ。
植物なので出来不出来がある。これなど陸上植物(野菜)と同じである。
久しぶりに明石市にある明石浦漁協から「のり」をいただいた。
明石浦漁業協同組合のノリのパッケージが赤いのは、明石で赤いからだけではなく、栄養分豊かなノリを、不祝儀で送るのではなく、祝いのときに使い、プレゼントし、また食べて欲しいからだ。

ご飯の上で踊る「味付のり」


せっかくなので、炊きたてご飯で「味付のり」をいただき、二はい飯を食らい、餅を買ってきて「焼きのり」で巻いて食べてわかったことだけど、今年の「明石のり」は実に出来がよい
ちなみに板ノリのよしあしを見て触って、嗅いでわかるのは諏訪(長野県諏訪)の人達に任せるとして、普通はご飯に乗せたり、餅を巻いたりして、わずかに湿らせて温めないとわからない。
炊きたてご飯の上でじんわり湿り気を帯びて、「味付のり」はいい香りを発散する。兵庫県の「味付のり」全般にいえることだが、上品でありながら、ほどよく野暮という味つけがすこぶるつきにいい。

一瞬さっくっと音がして、香ばしくて、うま味が豊かで


「焼きのり」で餅は、我が家の定番である。
焼きたての餅で食らう。焼けたばかりの餅の熱と、これまた湿気で初めてノリは香る。
ほどよく口溶けしてくれるところなども今季のノリのよさだ。
明石の今季の初づみは無類である。この分では当分うまいノリが収穫できそうに思える。
ノリ網をくぐる「もぐり船」も大活躍の年となりそうである。

このコラムに関係する種

スサビノリのサムネイル写真
スサビノリNori海水生。潮間帯上の岩上、海藻につく、杭の上など。北海道西部、南岸、太平洋岸、瀬戸内海、九州。・・・・
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