202402/01掲載

水産生物を調べているという病で、タイワンシジミかも? と懊悩する

定食のみそ汁の中身について考えてしまう性のようなもの


千葉県の食堂でトンカツ定食を食べていた。自宅では魚貝類しか食べないので、外食ではついついトンな気持ちになる。
水産生物とヒトとの関わりを調べていると、その膨大な情報量と、広大無辺な世界に圧倒されて常に疲労感に浸かっているわけで、時々溺れそうになる。要するに息抜きの獣肉食いというやつだ。
ところが今回、みそ汁を飲んだら、明らかにシジミの味がする。そう言えば神保町の『いもや』もシジミのみそ汁なのだから、トンカツにシジミはつきものなのかも知れない。
汁を飲み干し出て来たのは、見た目的に微妙な個体だった。ただし味はシジミ科のなかでも、ヤマトシジミ(もっとも一般的なシジミ)そのものの味である。

表を見ると幼いヤマトシジミであることがわかる


せっかくの息抜きなののだから、こんなこと考えるの止めようとは思うが、脳みそが勝手にシジミ科の味と形態の検索を始める。
成長脈(同心円的な畝)が密であることからすると典型的なヤマトシジミの幼貝だし、ほぼ99%、疑う余地はないものの、殻長にかけてのトンガリ具合が気になる。
淡水性のマシジミと、移入種で淡水性のタイワンシジミは混血してハイブリッド化しかねないが、ヤマトシジミはそんなことはない。

裏を見ても明らかにヤマトシジミ


念のために持ち帰り、撮影して過去のデータと照らし合わせて、ヤマトシジミと考えて保存する。
水産生物を調べると言うことは、まるで考現学のようだし、歴史学、考古学のようでもある。
トンカツを食うときくらいは水産生物を考えるのをやめろよ、トンカツを食ったという満足感が半減するじゃないか、と思うものの、水産生物を調べるという重篤な病に罹っているので仕方がない。

このコラムに関係する種

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