202006/18掲載
水と塩だけの料理、長崎県雲仙市「ゆで捨て」、「ゆで魚」
魚に塩をして寝かせ、ゆでて煮汁を捨てる「ゆで捨て」
マサバのゆで捨て
「ゆで捨て」は長崎県雲仙市富津、佐藤厚さんに教わった魚の調理法である。マサバやマダイなどを適当に切り、強めの塩をして寝かせておく。塩が馴染んだところで多めの真水で均等に火が通るまでゆでて、ゆで汁は捨てる。
素材は下ごしらえで水洗いして塩さえしておけば保存性が高くなり、食べる直前にゆでるだけで出来上がる。鮮魚ではなく塩サバで作ってもおいしい。
この強い塩をしておき、食べるときにゆでるものを雲仙市の隣諫早市などでは「ゆでもの(さばのゆでもの)」ともいう。
定番素材のマサバでやってみたら非常においしい。柑橘類をかけて食べるとまた一層うまい。オリーブオイルやスパイスを利かせても、マヨネーズ、酢コチュジャンなどもいいと思う。今の暮らしにマッチした料理である。
液体(水)と塩を使って魚に火を通す料理法は日本各地に様々な調理法があり、各地に様々な名称がある。例を挙げないとわかりにくいのでいくつか挙げると。
例えば北海道などの「湯あげ」、山形県などの「湯煮」は塩水でゆっくり、魚自体のエキスが煮汁に出てしまわないように煮る。
石川県・福井県などの「浜いり」、「塩いり」、沖縄県の「まーす煮」は少量の強い塩水で短時間で煮上げるもので、もともとは保存性を高めるための調理法だ。
これらは少、あまりにも在り来たりな料理法なので料理名のない地域も多そうである。すべて日本料理の基本的なものだが、日本各地で様々な魚が使われ、その魚にあった火の通し方、塩分添加の仕方がある。
我がサイトではこれらを「水と塩だけの料理」として紹介していく。