イセエビ

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体長30センチを超える。国内でとれるエビの中でも大型のもの。赤褐色の硬い殻を持ち、触角は長く棒状で硬い。
体長30センチを超える。国内でとれるエビの中でも大型のもの。赤褐色の硬い殻を持ち、触角は長く棒状で硬い。
魚貝の物知り度
知らなきゃ恥
食べ物としての重要度 ★★★★
重要
味の評価度 ★★★★
非常に美味
分類
節足動物門甲殻上綱軟甲綱(エビ綱)真軟綱亜綱(エビ亜綱)エビ上目イセエビ下目イセエビ科イセエビ属
外国名
Japanese spiny lobster
学名
Panulirus japonicus (von.Seibold,1824)
漢字・学名由来

漢字 伊勢蝦、伊勢海老 Iseebi
由来・語源 伊勢湾でたくさんとれたため。

「えび」について
漢字 海老、蝦、蛯、魚へんに暇の右。
語源
■ 体色がエビ(葡萄。ブドウもしくはエビヅル)に似ているから。〈エビとは其色の葡萄に似たるを〉[東雅 新井白石]
■ 『吉髭(えひげ)』の約転。
■ 「枝髭(えだひげ)」、「枝髭(えひげ)」の意味で鬚が枝状になっているという意味。
■ 「柄鬚」で鬚が柄のようになっているため。〈エビの訓義は柄鬚なり胞(え)とも江(え)とも云う〉[日本山海名産図絵(1799)]
■ 「海老」と当て字をするのは腰が曲がり、髭を生やした老人に似るため。長寿という意味合いから正月などの飾りにも用いられる。
■「伊勢海蝦」、「志摩海蝦」、「鎌倉海蝦」。〈俗称伊勢海蝦(いせえび)と云是伊勢より京師(京都)へ送る故え云なり又鎌倉より江戸に送る故えに鎌倉蝦と云う又志摩より尾張へ送る故え尾張にては「志摩蝦」と云う〉[日本山海名産図絵(1799)]

von.Siebold
フィリップ・フランツ・バルタザール・フォン・シーボルト(Philipp Franz Balthasar von Siebold ドイツ生まれ。1796〜1866年)。医師、博物学者。1824〜1828年まで長崎市出島に滞在。江戸参府も経験。鳴滝塾を開き、日本の医学に貢献するとともに、膨大な動植物を採取し、持ち帰る。
地方名・市場名

概要

生息域

海水生。
茨城以南の太平洋側、韓国、台湾などにも棲息している。

生態

■ 浅い岩礁に棲む。
■ 産卵期は初夏から秋。
■ 孵化したものがフィロゾーマ幼生で1年ほどプランクトン(浮遊)生活を送る。
■ プエルルス幼生となって着底する。
■ 第二触角には薄い殻と根元には畝状に盛り上がりノコギリ状になっている発音器があり、触角を動かすとともにこすり合わせてギーギーと音を立てる(鳴く)。

基本情報

エビの語源ともなった国内でとれる大型種。伊勢でたくさんあがったのでこの名がついたとされるが、相模湾も産地のひとつだったようで「鎌倉エビ」の別名もある。
〈祖神伊勢神宮の神威にあやかるものとされ、さらに、老人の腰の曲がったさまになぞらえて長寿を祝し、威勢のよさを悦び、目玉の飛び出していることからめでたいとし、海の老(おきな)と書く文字からも縁起が良いとされている〉『ものと人間の文化史54 海老』(酒向昇 法政大学出版局)など縁起物として正月飾り、結婚式など祝儀などに使われる。
養殖が確立されていないので、総てが天然もの。
エビの中でももっとも高価なものだ。他には驚くとギーギーと鳴くことでも有名だ。

水産基本情報

市場での評価 入荷は頻繁にある。値段は高値安定していて、安くならない。
漁法 刺し網
主な産地 三重県、千葉県、和歌山県、静岡県、長崎県、鹿児島県、宮崎県
養殖はまだ成功していない。

選び方・食べ方・その他

選び方

原則的に生きているもので持って重いもの。冷凍品は生を冷凍したもの。

味わい

旬は秋から冬
身にはグリシンが多く甘みがあり、ほどよく繊維質で口の中でほぐれる。
ミソにはまったくクセがなく、旨みが強い。

栄養

危険性など

食べ方・料理法・作り方

イセエビの料理法・調理法・食べ方/揚げる(天ぷら、フライ、唐揚げ)、煮る(具足煮、塩ゆで)、ソテー(ムニエル)、汁(みそ汁)、焼く(鬼殻焼き)、生食(刺身)、パスタ
イセエビの天ぷら 殻をむき、背わたをとる。腹の方の筋肉に切れ目を入れる。小麦粉をまぶして衣をからめて高温で揚げる。揚げたてを一口大に切り皿に盛る。クルマエビなどにない強い食感とエビらしい風味が楽しめる。


イセエビのフライ 生きているものを殻をむき、塩コショウして小麦粉をまぶし、衣(卵・小麦粉・水)をからめてパン粉をつけて高温で揚げる。歩留まりが悪く高くつくがクルマエビよりも食感が強く、エビらしい甘味も楽しめる。
脱皮イセエビの唐揚げ 脱皮したてでまだ殻の軟らかい固体で作る。流水で洗い、水分をよく拭き取っておく。ここでは半割にして片栗粉をまぶしてじっくり二度揚げしてみた。殻の香ばしさに身の強い甘さが相まって非常に美味。
イセエビの具足煮 伝統料理の具足煮は、丁寧に作ってみれば、長年作り続けられてきたわけがわかる。生きているものを適当にきる。鍋に水・しょうゆ・みりん・酒を煮立たせて短時間煮汁をからめるように煮上げる。仕上げにしょうがをふる。エビらしい甘味が調味料で際立ち、身の食感も好ましい。
イセエビの塩ゆで 流水などできれいに洗い。やや強めの塩水でゆでたもの。もっとも簡単な料理法ではあるが、本種ならではの味がもっとも堪能できる。身は非常に弾力に富み、みそにうま味がある。身とみそを合わせながら食べてもうまい。
イセエビのムニエル 生きているものを下ろして尾の部分を半割にする。頭部のみそはスプーンなどでかき出しておく。尾に塩コショウする。小麦粉をまぶして油とバターを合わせたものでじっくりソテーする。火が通ったら尾を取りだし、フライパンにみそとバターを加えてデグラッセする。
イセエビのみそ汁 漁師さんは刺し網で傷ついたものをみそ汁にすることが多い。これが実に贅沢・豪奢な味。イセエビを丸ごと余すことなく味わえる。生きているものを適当に切る。これを水から煮出してみそをとくだけ。
イセエビの鬼殻焼き 伝統料理の鬼殻焼きは焼いてしょうゆ味のタレを塗り、仕上げ焼きをしたもの。焼きたてはとてもうまい。生きているものを半割にする。これを七部通り火を通して地(しょうゆ・酒・みりんを少し煮つめたもの)を塗りながら仕上げる。
イセエビの刺身 刺身だけを造ると歩留まりが悪い。残った頭部などは適当に切り、みそ汁にする。生きているものを剥き、氷で冷たくした塩水の中で洗う。水分をよく拭き取り食べやすい大きさに切る。面白い食感でほんのりと甘い。
イセエビのカッペリーニ(パスタ) 頭部と尾の部分を外し、筋肉を取り出す。オリーブオイル・にんにくを熱した鍋のなかで頭部と殻をつぶしながらソテーする。少量のクールブイヨン・白ワインを加えてなおつぶしながらソテーしたものを濾しておく。ここに生クリームを加える。身をオリーブオイルでソテー、一度取り出して、ここでソースを温めて茹で上がったカッペリーニと身を加えて和える。野菜はお好みで加える。

好んで食べる地域・名物料理

加工品・名産品


イセエビの干もの 千葉県外房、伊豆半島などで作られているもの。体を半割にして塩をして干している。焼いて食べると、強いエビの風味と食感が楽しめる。少々贅沢だけど、産地ならではの味である。

釣り情報

防波堤や磯などの夜釣りのうれしい外道。

歴史・ことわざなど

季語・歳時記は冬。
シーボルト シーボルト(1796〜1866)が自ら集め、オランダに持ち帰り、新種記載したもの。
祝儀 祝儀など晴の日に欠かせないもの。
正月 正月飾りに使われる。
鎌倉海老 関東では「鎌倉えび(かまくらえび)」と呼ばれていた。
武士の縁起担ぎ 甲羅が硬く鎧(具足)をつけた武士のように見えるので、縁起物として使われる。
エビフライ 『たいめいけんよもやま噺』に昔、エビフライはイセエビで作ったとの記述がある。今では考えられないことだが、実際にやってみたら、非常においしい。強い食感にナイフで切りながら食すといったもの。でも1尾1800円したものなので、今、料理店で食べたらいくらになるだろう。
えび色 「海老茶(えびちゃ)」というのはイセエビに似た濃い赤紫に黒みをおびたもの。明治大正期に女学生の袴の色として流行した。
はしかの薬 殻は風疹、はしかの特効薬との説もある。
エビ 「エビ」という言葉は分類学的には十脚目以外の甲殻類にも使われる。科学的な原語ではない。