いろいろ使える、小サバの釜揚げ
魚価以上の労働が必要なもの、それが未利用魚
神奈川県小田原市、小田原魚市場、二宮定置でダンベ(大型水槽)行きの小魚を分けてもらってきた。
これを“このまま食べる”ことが未来を明るくする。もちろん絶対ではないが目の前に魚不足というか食糧不足が待ち構えていると思っている。養殖魚の魚粉以外の餌の開発が急務となっているのはその証拠である。
すでに魚を大量消費する時代は終わり、とった魚を大切に食べる時代が来ているのだ。
小さすぎるので昔は干ものになったり、煮干しになっていたが
西日本にあって東日本にないものがある。煮干しを作る技術と習慣である。徳島県、高知県でもカタクチイワシ、マイワシ、小サバ類、ネンブツダイ、キンメモドキなどがとれたら、雑多なまま引き取り、煮干しを作っている。
同じような光景を長崎県でも見ているが、ひょっとしたら煮干しにする魚種は長崎県がいちばん多いかも知れない。
香川県観音寺市の魚市場であった方は自宅でも作ることがあるという。もちろん煮干しの状態まで作るのではなく、塩ゆでし放冷(扇風機などで表面を乾かす)しただけのものだ。煮干しの加工場でいた方で子供のとき、茹で上がったカタクチイワシをおやつに食べていたらしい。
以後、教わった通りに様々な小魚を塩ゆでにしている。今回はいちばんやりやすい小サバ(ほぼゴマサバ)で作った。
尾叉長14cmから19cmで関東ではまったく売り物にならないサイズだ。家畜の餌になるところをひとすくい二宮定置の方々に分けてもらってきた。
小田原から帰宅して、まず最初に小サバ類の同定をした。マサバは非常に少なく6個体、あとは数え切れないほどのゴマサバである。マサバとゴマサバは一緒に群れているわけではなく、時間差で定置網に入るのだろう。
ゴマサバだけにして、ざっと洗う。
本当は頭部と内臓を取りたいと思ったが小田原行はほぼ徹夜なので、大量の小魚類の測定をすると疲労困憊する。
仕方なく流水で洗っただけとした。
ちなみに頭と内臓を取った方が食べやすいし、火の通り方も均等である。
たっぷりの湯の中でしっかり日を通す
水分をよくきり塩分濃度たぶん4%の湯でゆでる。
本当は沸騰させるのは一瞬だけで中火にする。
今回は疲れすぎで、中火にし忘れた。身割れしているのはそのせいだ。
ゆで時間は大きさにもよるが、沸騰した湯に入れて、ふたたび沸いてきたら3から4分くらいだ。
必ず完全に火を通す。
干すほど保存性が高くなるが、乾かし加減は自分好みで
几帳面に食べないで野性的に食べて欲しい
できるだけ殿様食べして欲しい。
頭など食べなくていいし、むしり取りやすいところだけ食べるといい。
ついでに骨まで食べられるけど食べたい人だけ食べればいい。
人生融通無碍なのだ。
これが実にうまい。
高知県の漁師さんで同じようにゆで上がりを食べていたというジイサマに会っているが、食べ始めると止まらなくなると言った。
まさに止まらなくなる。
強いうま味なのに魚臭味がなく。後味がいいのでついつい手が出る。
言い忘れたが手で食べても欲しい。
気分はネアンデルタール人である。
このゆでただけを食べていたので、年寄りになっても風邪も引かないし、ちょいちょい走ることもできると言った人もいた。
これで大酒さえ飲まなければ、間違いなく、健康にもいいと思う。