小田原はブリ祭で、大騒ぎ
お祭り騒ぎだけど、漁師には重労働なのだ
日本各地で、ブリ大漁にわいている。
昔、本州中部以南といわれた地域で外洋に面した海域に、ブリの大きな群れが入っているのだ。
本来、4月、5月といえば高知県や愛媛県南部、九州南部でブリの大漁をみる。この時季の個体は、卵巣精巣は膨らみすぎて柔らかく、脂が少なく、身が痩せ気味というのが本来の形だ。ちなみにこの痩せたブリがまずいか? というとそんなこともない。需要もあって、これを上手に料理する人もいて、存在価値はそれなりに大きいということも忘れてはならない。
今年はその産卵群が大量に入る鹿児島県東シナ海側で漁が安定していないのである。その代わりにとれた個体に脂があり、身に張りもある。
今現在、全国的に揚がっているブはおしなべて、脂が乗っていて体層うまいということだ。
以下は小田原ブリの話にしぼるが、今回の春ブリ大量は全国的であることもお忘れなく。
相模湾で揚がっている個体は、ワラサかブリかと迷う6㎏〜8kgサイズが多いものの水揚げを見ているだけで、脂ののりが保証できそう、といったものばかりだ。
とすると、相模湾でのブリの旬で漁の最盛期は弥生、4月になってしまうが、小田原のブリはまだ生殖巣がそれほど大きくなく、5月までいけそうなのである。
6月の声をきけばオホーツクでブリが揚がり始めるだろう。これじゃ年がら年中ブリだ。
そのひとつ、神奈川県小田原のブリ水揚げもまるで祭のときのように騒がしく、漁師も買受人もどことなく浮き浮きとして楽しそうでもある。
魚は健康的なデブがいい
2024年4月19日、二宮定置に、「ほぼブリサイズなので、ブリとしておきたい個体」を1尾いただいた。卑しい話が、だれかにいただける可能性が高いと思って行った小田原で、本当にいただいて、素直に嬉しいボクなのであった。アハハのハだ。ありがとうございました。
しかも名人、Kai君に血抜きまでやっていただく。これ以上ない、ブリである。
余談になるが、19日早朝、顔見知りの買受人と、「どこからブリにしていいのか?」という話をした。このところ6㎏サイズでもブリだという人がいるらしい。ボクとしては8㎏前後からブリだと思っているけど、脂があって上物で、それなりに大きければブリでいい、と考えている。
厳密でなくていいんだぜ、ブリは、と言いたい。
今回の個体は、測ると全長86cm・7.866kgだった。非常に体に丸味がある。ブリはできるだけ肥満体がいいけど、例えば関取の体(触ったことはないけど)のように固太りしていないとダメだ。今回の個体などまるで北の湖みたいである。
背の刺身は、非常にバランスがよくたくさん食べても飽きが来ない
三枚に下ろす包丁は重く、真冬のブリほどではないが、包丁の脂を拭き取りながら下ろさないと下ろせない。筋肉は白くはなく、赤みが感じられるが、透明感がない。
味見すると“量食える”脂ののり加減である。しかも身に豊かなうま味がある。
背と腹を分けて刺身にしたが、味がまったく異なっている。
背は微かに酸味があり、ブリらしいブリの味わいで、脂がほどよく食感がほどほどにあり、しかも嫌みがない。
これならいくらでも、腹に収まる味だ。
腹の刺身は、1つかたまりの味が強く、そして大きい
腹の身は硬く締まっていて、食感が強い。
歯に強い抵抗を感じるほどだが、噛むと豊かな脂とうま味が一緒になって口中に広がる。
小田原のブリ祭はいつまで続くのだろう?
気まぐれな魚なので断定は出来ないが、5月になってもおいしさはそんなに変わらないと思っている。
これで5月になっても漁があれば言うことなし。
ちなみに、ブリだ、脂だ、と大騒ぎする向きがあるが、氷見の青箱のいちばん高い時季を食べているが、もうボクには1切れしか食えない。
いかな青春真っ只中の若者でも3切れくらいでいいはずだ。
ボクにとっていちばんうまいブリは今眼の前にある、といいたい。