ご近所はヤリイカだらけ、なので深夜酒はヤリイカで
外套長22cmは立派な親イカなのだ
水産生物とヒトとの関わりを知りたかったら、市場や漁港以上に小売店を見て歩かないとダメだ。そしてときどき買ってみる。
ヤリイカは昔、昔から関東では高級イカであって、めったに安売りのスーパーなどには並ばないはずだった。ところが最近、駅前などの大型スーパーで特売品として売られているではないか。
見た限りでは総て北海道産。外套長18cm以下の個体は元々安いものだが、今回の個体は23cm前後もある。これで税込み400円でおつりが来る。このサイズは明らかに雌だけど、それでも安い。
鮮度はぎりぎり刺身になるといったものだが、胴は刺身に、げそや卵巣は煮つけや塩ゆでにすれば御馳走である。
ヤリイカは眼が皮膜で覆われていることから閉眼類と呼ばれている。仲間にはケンサキイカやアオリイカがいるが、古来より閉眼類の多くが堂々の高級イカである。ケンサキイカが西日本に多いのに対して東日本と北海道に多い。
北海道では温かい時季にスルメイカが、寒くなるとヤリイカが揚がるので、冬イカとも呼ばれている。
温暖化でめっきり少なくなったと思ったら、市場にわんさか並んでいるなんて、イカの好不漁、種ごとの水揚げの比率は不安定だ。
外套長22cm・140gを近所のスーパーで買ってきて、深夜の酒の肴にする。
慌ただしいときなので、仕事終わりは深夜になりがちになると、消化にもよさげなイカは格好のものだと思っている。
小振りのヤリイカは総て雌だ
下ろしながらも、ワハッハと笑ってしまうのは、うまいに決まっているものを造っている自分を感じるからだ。
もちろん鮮度がよく、表面をシバクと色素胞が明滅するようなものがいいに決まっている。
ただ一般消費者には、吟味するだけの対象物が揃わないのだ。これを一般消費者のアルモノ買いという。
卵巣とげそは待機していただいて、そのまま刺身にしても食感がよくないと思ったので、「あぶり」にする。
外套膜(胴)と鰭(耳)だけにして布の間に挟んで叩く。
こうするとよく水分がとれるのだ。
裏側(内臓側)を軽くあぶり、ひっくり返して皮を強くあぶる。氷水に落として再度水分をとる。
あとは適当に切るのみ。