202403/31掲載

食文化を探す旅 十日町らしさを探して十日町市を歩いた果ての大食い

商店街の飲食店は減る一方で淋しい


十日町市の「十日」は十のつく日に市が開かれていたためだ。今でも新潟県では巻町や三条など各地で日にちごとの市が開かれている。残念ながら十日町市では市が開かれていない。北魚沼で、2月末なのに雪がないというのも予想外だった。
新潟県十日町市の商店街は長い。雪国ならではの雁木はアーケードに変わり、シャッターを下ろした店が目立つ。
江戸時代には越後上布、越後縮の産地(江戸時代から昭和になっても織物は一大産業だった)であって、ある意味、北越雪譜に描かれているとおりのところだったのだろう。織物産業があって商業も盛ん。繁栄した町であった名残がそこここに見られる。
加うるに、十日町市は信濃川に沿ってある。この町はコイをよく食べる地域だったという。考えて見ると新潟県は阿賀野川があり、信濃川、また旧蒲原郡に多い潟(平地の湿地帯の中の湖、池のこと)があるなど、淡水魚が重要なたんぱく源であったはずだ。
十日町市にはウナギとコイの店があるが、この日は定休日だった。まあ今回の十日町は下見と思えば惜しくはない。
商店街を十日町らしいものを探して歩くがなにもない。雁木は露地に少しだけ残っているだけだ。だいたい歩いている人が少なすぎる。
時刻は1時過ぎ、せめて十日町市で昼飯をと、ふたたび商店街を歩く。
新しい店には入りたくない。『小嶋屋』という長岡市にもあるのと同じ屋号のそば店があって、「へぎそば」も同じである。「へぎそば」はフノリをつなぎに使ったもので、ときどき食べたくなるが、この日は長時間労働のあとなのだ。
余談になるが市場の旅は、だいたい午前2時くらいに始まり、魚(水産生物)の並ぶ競り場でみて、午前8時くらいに終了する。市場にいること今回は6時間。しかも新潟市はそのとき冷凍庫の中のようだった。
とてもそばという気にはなれない。どんなに飢えてもチェーン店では食べないのがモットー、しかもネットは見ないので、ずんずん歩くしかない。
向こうに洗いざらした紺色ののれんを見つけたときには涙がちょろりとした。

サンプルのある店というだけで吸い込まれそうになる


のれんの横にメニューサンプルがあるのが素晴らしい。
サンプルを見てカツカレーしかない、と心に決めて店内に入ると、思ったよりも広いし、清潔である。
改装したばかりらしく、テーブルや腰板などが新しい。
ご夫婦だけの店らしく、お客は1組しかいない。

テーブルは新しいけど箸立てなどが気になる


お勧めを聞くと、半チャンラーメンで、あっさり味のラーメンが人気だという。ここでカツカレーを頼んでは男が廃る。お勧めのままにお願いして、ぎょうざが380円の日だったので追加する。
食いすぎだとは思うけど、もう遅い。
この店も福島県西会津町、『同気食堂』と同じく、箸立てが高い。ようく見ると箸も長い。真新しく見えるのはていねいに使っているためで、実際には古いものではないか? 楊子入れはたぶん1970年代に生まれた「モダンデザイン」のものだと思われる。この店も高度成長期くらいは繁盛していたのだろう。
音があまりないので意識が一瞬消えたのはほぼ睡眠ゼロのせいだ。この昔ながらの食堂の店内にただよう料理の香り、けだるさ、居心地よいところがいい。ご夫婦の存在感があまり感じられないのも長年食堂をやっているからだ。

料理3店が同時に来る、これこそが老舗食堂のよさなのだ


ラーメンとミニチャーハンが来て、ちゃんとぎょうざも来た。ぎょうざが遅すぎると泣きたくなる。

ラーメンスープは澄み、味もあっさりして食べやすい


やってきたラーメンどんぶり、チャーハンの器は市販のものだが、ぎょうざの皿には「みのや」の文字が入っている。
ラーメンどんぶりは正確な時期は不明だが、全国的に5分(直径1,5cm)くらい大きくなった。これは1人前の麺の量が増えたためで、この麺増量の理由が判然としない。大食になったためか、もしくはおやつ感覚や小腹を満たすためのラーメンが食事化したためかも知れない。

ぎょうざも焼き加減がよくとても普通にうまし


あっさりしたラーメンは食堂ならではのもので、思った以上にチャーハンがおいしい。ぎょうざが皿から消えて、ラーメンの汁まで飲み干して食い切る。
実に懐かしい普通の食堂の味わいである。また来たくなる味でもあるし、お店の雰囲気でもある。


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