イシダイのかぶと煮、2通りの煮方
イシダイは本体は刺身などで食い、頭部は煮つけにする

神奈川県小田原魚市場、二宮定置にイシダイをわけていただく。ありがとう!
イシダイは時季になると食べ頃サイズ、1.5kgから2㎏の同級生が大きな群れを作って定置網に入ってくる。イシダイは漁の盛期を迎える。
春はイシダイの食い頃、かつ旬なのである。
とまでは何度も述べている。3月半ばのイシダイ料理の続きだ。
市場での立ち話、「最近、カレイ(他の魚でも煮つけ用は)が人気がないのは煮つけを家庭で作らないからだ。店で出すと売れるのに……」から煮つけ方には2通りあるという話をば。
なぜ、煮つけを家庭で作らないんだろう?
失敗しにくい料理だし、歩留まりよく食べられるのに不思議でならない。
たぶん、料理雑誌や料理本がいけないんじゃないかな? 難しそうに書きすぎている。
要は魚など魚介類を液体で熱を通すだけなのだ。
煮汁は非常に少なく、煮つけた身色は白い

さて、イシダイの頭を左右に割る。
左は失敗しやすい、煮汁を煮つめるやり方で造り、右は煮汁たっぷりでほとんど失敗しないやり方で煮る。
まずは鍋選びから少し深めで、煮つける切り身などの2倍程度の平面面積のあるもの。落とし蓋はなんでもいい。
左右両方とも湯通しして、表面のぬめりと細かい鱗をこそげ落とす。
左は鍋に酒・みりん・醤油控えめ、水を煮立たせる。
火を一端止めて兜、しょうがを入れて火をつける。
煮汁は煮つけるものに対してひたひたに。
強火にする。
兜が沸き上がった泡で覆い尽くすように煮る。
煮汁の味加減をして醤油やみりんを加減する。
煮汁が少なくなったら出来上がり。
短時間で出来るが、鍋につきっきりでいなければならない。
兜の中まで煮染まっておらず、皮下は真っ白のまま。
付着した皮や身を煮汁に浸しながら食べる。
食べ終わると煮汁が残らないので、煮凝りは楽しめない。
画像では見にくいが、煮汁は皿に入れた2倍以上

右は鍋に酒・みりん・醤油・水をたっぷり沸かして、一度火を止めて兜を入れる。
兜の2倍以上の煮汁で煮始める。
煮汁が多めなので鍋から離れ、ときどき気にするくらいでいい。
8分通りに煮汁が兜に煮染まるくらいに煮て鍋止めする。
鍋止めしている間に煮汁が浸透していく。
煮汁だけでも、付着している皮や身だけでもおいしい。
このまま冷やすと見事な煮凝りができる。
左の方が身本来の味が楽しめ、煮汁と絡めることで、自分で味を加減できる。
右は比較的控えめな味わいではあるが、嫌みがなく日常的に食べても食べ飽きない。
左は煮すぎると、すぐに焦げつくし、煮汁の残し方が難しい。
右は時間がかかるものの、多少煮過ぎても煮詰まりにくい。
少しずつ口の中に入れて溶かしながら酒を流し込む

右はとてもいい煮凝りができる。
この煮凝りだけでも値千金である。
煮凝りは辛子をつけてこのまま食べてもおいしい。
溶けきってしまわないように下に氷でも敷いて、テーブルに出せば酒の肴にもなる。