イシダイの中落ちで茶漬けをちゃちゃちゃ
旬のイシダイの中落ちは上身以上に味がある
神奈川県小田原魚市場、二宮定置にイシダイをわけていただく。ありがとう!
イシダイは時季になると食べ頃サイズ、1.5kgから2㎏の同級生が大きな群れを作って定置網に入ってくる。イシダイは、今まさに、漁の盛期を迎えている。
春はイシダイの食い頃、かつ旬なのである。
小田原の市場人曰く、3月くらいが味のピークで、じょじょに味は下降気味になるという。個人的には5月くらいまで旬は続くと思っているが、毎日イシダイを見て触っている人間にはもっと微妙な、旬(10日間)の味の違いがわかるのだろう。
さて、脂が乗っているので、三枚に下ろす、その包丁が非常に重い。一気に包丁を引けないので、ときどきべったりついた脂をぬぐっては引く。
そのせいとばかりは言えないが、中骨にたっぷり身がついている。
ついている身を見ながら、不器用も悪くないと独り言つ。
中骨についた身をスプーンでかき出しながらにやけてくる。
ボウルの中でちゃちゃちゃーと味つけするだけ
この付着した筋肉はこのままわさび醤油で食べてもいいが、この頃はご飯の友とすることが多い。
悲しいことに、昼にコップ酒をやりながら肴をつまむ、そんな時代はもう帰ってこないに違いない。
その分、飯がうまいのだから差し引きゼロである。
かき出した身はネギ、しょうがの搾り汁、ごま、醤油・少量のみりんと和えて置く。
中落ちに醤油味をつけただけで、まごうことなき佳肴となる
イシダイの中落ちの漬け丼はめったに食べられないご馳走なのだ
魚料理なのに朝日のように爽やかな茶漬け
漬け丼に熱々のほうじ茶(本当は奈良県十津川などで作られている番茶がいいのだけれど)を注ぐと茶漬けだ。
福岡県宗像市では刺身があまったら、とにもかくにも漬けにして、翌日朝ご飯にのせ、茶をかけて食べる。だから魚の漬けを、「茶漬け」という。
考えてみると「茶漬け」は庶民が作り出した最高の料理なのだ。
漬けのおいしさは、すこぶるつきにうまいかき出し身という最強軍団に、なお援軍を送るようなものである。
そこに糖質であるご飯とほうじ茶で波状攻撃してくるのだからたまらない。
バッハのクラヴィーア曲ではなく、マーラーの交響曲第8番を聞くような雄大さがある。
美味が口中に満ちる。
ちなみに魚を下ろすのがヘタな人なら茶漬けを2杯、上手な人なら1杯すら作れない。
魚おろしはヘタに限る。