キダイの塩焼きは殿様に食わせろ!
小さいけど旬を迎えたキダイはうまい
レンコダイ
2月12日。八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産のクマゴロウは、久しぶりの釣行に静岡県熱海市網代まで押っ取り刀で駆けつけた。
釣り師の夢はいつも大釣りであり、魚拓級を釣り上げることだ。ところがなんと不運なことに絶不調で不釣だった。
ほとんど釣れなかったようで、焼け糞になり、釣れた魚をぜーんぶボクにくれた。ありがと!
不思議と釣れないときは数も望めないし、大物も来ない。
全部比較的ミニだった。春の日の、大釣りロマンは儚く消え去ったのであった。
発泡の箱にはカイワリ、キダイ、ムシガレイが入っていた。
中でももっともミニだったのがキダイで、体長18.5cm・217gだった。
いったい何号のハリスを使っていたのかわからないが、ナマズ釣りの仕掛けにメダカ、のようではないか。
ただし触った限り、小さいのにいちばん脂が感じられたのである。
小型は基本的に塩焼きにすべし
キダイの塩焼き
この大きさでは煮つけもできず、酢で締めても、あぶっても歩留まりが悪い。
持ち帰って計測してすぐに、水洗い、ずぼ抜きにして振り塩をする。
振り塩をして1時間以上寝かせてじっくり焼き上げる。
皿に乗せると、あまりにもいい香だったので、焼き上がりをむしり食いして、凍頂烏龍茶をごくごく、またごくごく。
この香りの正体は脂である。染み出てきた脂が泡立ちながら身を焦がす。これが凍頂烏龍茶の少しだけ青臭い風味に絶妙に合う。
かき菜の混ぜご飯は春の味
かき菜のまぜずし
お昼ご飯は畑菜(かき菜)の塩漬け(塩で揉んで殺し、23時間おき、流水で揉み洗いしながらあくを抜いたもの)を刻んだものを、戻したご飯に混ぜ込み、ミツカンすし酢と橙で即席のすしにする。
海山を合わせるのが日本料理の基本なのである
キダイとかき菜の混ぜずし
これに冷えたキダイの塩焼きを混ぜ込み、キダイの皮の部分を少し天盛りにする。
小島政二郎ばりの表現をすると、塩焼きは冷えた方がうまい。
ほの赤いキダイの色合いが花のようだ。
この塩焼きとかき菜漬けの塩気が絶妙なのだ。
塩焼きは殿さんに食わせた方が後が楽し
キダイの塩焼き
ちなみにボクは明らかに、少しだけだけど学習障害・発達障害的なところがある。好きなことにしか集中できない。
魚の塩焼きをきれいに食べるのが大の苦手だ。外ではがんばって食べるが、内では無残に食べる。
ちなみにボクのような人間に、几帳面に丸で骨格標本のごとく、きれいに食べろ、と言っても無駄である。
ボクの魚食いは殿様食いなのである。
お茶の友とし、混ぜずしの具とした後の残なども実に汚い。