202402/16掲載

キダイの塩焼きは殿様に食わせろ!

小さいけど旬を迎えたキダイはうまい

レンコダイ

2月12日。八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産のクマゴロウは、久しぶりの釣行に静岡県熱海市網代まで押っ取り刀で駆けつけた。
釣り師の夢はいつも大釣りであり、魚拓級を釣り上げることだ。ところがなんと不運なことに絶不調で不釣だった。
ほとんど釣れなかったようで、焼け糞になり、釣れた魚をぜーんぶボクにくれた。ありがと!
不思議と釣れないときは数も望めないし、大物も来ない。
全部比較的ミニだった。春の日の、大釣りロマンは儚く消え去ったのであった。
発泡の箱にはカイワリ、キダイ、ムシガレイが入っていた。
中でももっともミニだったのがキダイで、体長18.5cm・217gだった。
いったい何号のハリスを使っていたのかわからないが、ナマズ釣りの仕掛けにメダカ、のようではないか。
ただし触った限り、小さいのにいちばん脂が感じられたのである。

小型は基本的に塩焼きにすべし

キダイの塩焼き

この大きさでは煮つけもできず、酢で締めても、あぶっても歩留まりが悪い。
持ち帰って計測してすぐに、水洗い、ずぼ抜きにして振り塩をする。
振り塩をして1時間以上寝かせてじっくり焼き上げる。
皿に乗せると、あまりにもいい香だったので、焼き上がりをむしり食いして、凍頂烏龍茶をごくごく、またごくごく。
この香りの正体は脂である。染み出てきた脂が泡立ちながら身を焦がす。これが凍頂烏龍茶の少しだけ青臭い風味に絶妙に合う。

かき菜の混ぜご飯は春の味

かき菜のまぜずし

お昼ご飯は畑菜(かき菜)の塩漬け(塩で揉んで殺し、23時間おき、流水で揉み洗いしながらあくを抜いたもの)を刻んだものを、戻したご飯に混ぜ込み、ミツカンすし酢と橙で即席のすしにする。

海山を合わせるのが日本料理の基本なのである

キダイとかき菜の混ぜずし

これに冷えたキダイの塩焼きを混ぜ込み、キダイの皮の部分を少し天盛りにする。
小島政二郎ばりの表現をすると、塩焼きは冷えた方がうまい。
ほの赤いキダイの色合いが花のようだ。
この塩焼きとかき菜漬けの塩気が絶妙なのだ。

塩焼きは殿さんに食わせた方が後が楽し

キダイの塩焼き

ちなみにボクは明らかに、少しだけだけど学習障害・発達障害的なところがある。好きなことにしか集中できない。
魚の塩焼きをきれいに食べるのが大の苦手だ。外ではがんばって食べるが、内では無残に食べる。
ちなみにボクのような人間に、几帳面に丸で骨格標本のごとく、きれいに食べろ、と言っても無駄である。
ボクの魚食いは殿様食いなのである。
お茶の友とし、混ぜずしの具とした後の残なども実に汚い。

骨湯にするときれいさっぱり食べ尽くすことができる

キダイの骨湯

でもでもここに裏技がある。骨湯である。
持てないくらいに温めた器に残を放り込み、熱湯をかけて蓋をして、三分待つのだよ、といいながら待ち、フタを開けると出来上がりだ。
手をびじゃびじゃにしながら、鰭などはむしゃむしゃと食べ、汁をすすり、骨や鰭際の身は歯でしごいて食べる。
眼の周りが非常にうまいなといつも思うが、この日などいつも以上にうまいなと思う。
ちなみにネギやセリなどの薬味は無用だと思う。
相模湾、川奈沖のキダイって夢のようにうまいなー。

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