202401/29掲載

久しぶりのマツブがやけにウマシ

成長脈が鰭状に立ち上がるのがマツブの特徴だ

貝殻が特徴的なエゾボラ

東京豊洲市場で、巻き貝、ツブのキロ単価が1万円以上になっているのを見て目を疑った。「1万どころじゃねー、大きいのは2万てのもある」という。基本的に巻き貝はそんなに高くはない。貝殻の重さがあるし、仕込みがめんどうだからだ。
その、Aツブが高いのは諦めるとしても、Bツブも値上がりしているのだから、ツブ全般に手が出ない。
仲卸は「謎の中国人が買い占めているからだ」というが本当だろうか?
この豊洲市場でのAツブはマツブとも呼ばれるエゾボラのことで、Bツブはアツエゾボラもしくはクリイロエゾボラなど、エゾボラ以外のツブである。
流通上はエゾバイ科のエゾボラ(属)の仲間をツブといい、エゾバイ(属)をバイという。
余談だが、単にバイは標準和名のバイ科のバイであった。本州以南で普通にたくさんとれたバイが有機スズによる生殖不能で市場に来なくなり、代わって登場したのがエゾバイ科のバイである。
今や生食用の巻き貝の主流はエゾボラの仲間であり、都内では煮て食べるバイの主流は、山陰などでとれるエッチュウバイなどエゾバイの仲間のバイとなっている。
よほどの貝を知っている人でなければわからないと思うけど、この生食用のエゾボラの仲間を高い順に挙げると、Aツブであるエゾボラ、エゾボラモドキ、チヂミエゾボラ(最近エゾボラモドキに含まれているが、日本海側の大型は明らかにチヂミエゾボラだと思っている)、非常に希にしか来ないけどヒレエゾボラの順で、Bツブとされるアツエゾボラ、クリイロエゾボラ、ドウナガエゾボラ、フジイロエゾボラなどは安い。
さて、急激に値を上げたAツブであるエゾボラが、殻長16cm・140gととてもミニな個体ではあるが、八王子総合卸売協同組合、舵丸水産にやっと戻ってきてくれた。あまりにも久しぶりだったので、ミニなのにも関わらず法外な値段で買った。ちなみに八王子だからこの値段で買えるのであって、豊洲ではもっとすると思う。
ばらしてあったので産地不明だが、基本的にエゾボラの産地は北海道噴火湾伊東の太平洋側なので、今回のものも噴火湾産だと思っている。

食べる直前に貝殻から外し下ごしらえをする

エゾボラの仕込み

エゾボラなど巻き貝の仕込みは食べる直前にやるのが基本である。
アイスピックを使って貝殻から外す。
足とワタの間に消化器官があるのでとって、ワタだけにして、これを塩ゆでにして冷水に落とす。水分をきり、適当に切る。
足というのは巻き貝の筋肉部分であり、中央部分に唾液腺がある。半割にすると唾液腺が出てくるので取り去り、最初はなにもつけずに揉み、少しぬめぬめが出なくなったところで塩を加えて仕上げ揉みする。
冷たい水でていねいに洗い、薄くへぎ切る。

貝殻は飾りだけど、ないととても淋しい

マツブの刺身

貝殻の中にゆでたワタを入れて、手前に刺身を盛る。
あとは塩、もしくはわさび醤油で食べる。
最近のお気に入りは岩塩と柑橘類で、だが、あまりにも久しぶりだったので、涙ぽろりとなるくらいにうまい。
もともと巻き貝好きだけどAツブはワタも含めてやはりうまい。
貝らしい食感が程よく、最初は甘味、次は貝の風味がどばっと口の中に広がる。
ミニなのであっと言う間に皿から消えなくなるのがやけに惜しい。
これで千葉県山武市、梅一輪の純米酒をやる。初めて飲む、5勺はまあまあ、イケている。
毎週、思う事だけど、週いちばんのウマスギは、平凡なものが多い。もっと奇をてらったり、高級なものをとも思うが、マジな思いなので致し方なし。平凡ウマシ。

このコラムに関係する種

エゾボラのサムネイル写真
エゾボラEzo-neptune, Whelk, Winckle海水生。水深10m〜1220m。北海道以北に棲息しているが道東に多いと思われる。・・・・
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