202312/09掲載

今季初ヤナギは常磐、茨城県日立産

非常に醜い魚なのにうまそうだと思ってしまう

ヤナギムシガレイ

近年、季節感を感じる魚は極めて少なくなっている。この弓形の列島に住み、できるだけ季節を感じて暮らしていきたいと思っている身には淋しい限りである。
そこにヤナギムシガレイがやってきて、思わず手が伸びた。
ヤナギムシガレイの凄いところは非常に醜いのに、うまそうだと感じさせることだと思う。
下氷(発泡スチロールの箱に氷を敷き、上に魚を乗せる)の上のヤナギムシガレイはまるで古草履のようなのだ。
八王子総合卸売センター、福泉にあったのは茨城県日立産である。
福島県、茨城県の水産物を関東では常磐物という。
昔、築地場内を歩いていたとき、「常磐物だよ」は、耳にタコができるくらいの聞かされたものだ。名古屋で三河とか伊勢、とか、大阪で紀州とか、山口で旧国名ではないが北浦とか。北九州で豊前浜とか、言う。この旧国名、地域名遣いは大切に残したい。
今年も常磐からヤナギムシが来て、冬本番だな、と思うこの一瞬がいいのである。
思わず、値段も見ずに買ったが、この時季はそんなに高くない。12月も中旬を過ぎたら、特に豊洲などで買うときは重々値段を気にして買わねば危険である。
ちなみにヤナギムシガレイは最低でも250g以上がいい。ただし300gを超えると値段がガビョーンと上がることも忘れてはいけない。今回の270g前後は買い頃の大きさでもある。

一般家庭には一般家庭のやり方がある


持ち帰ったらまず金タワシでていねいに鱗をぬめりを取る。我が家はあくまでも一般家庭なので頭部と尾鰭(尾鰭は必ずしも落とさなくてもいい)はちょんとは落とす。一般家庭では見た目よりも合理性こそ重んじろ、なのだ。
水分をていねいにていねいに拭き取る。
これを渋味を感じるくらいの塩水に10分つける。気温が高いので10分だけど、気温や大きさによって加減する。
またまた水分をよくきり、丸一日外干しする。強く干したかったので干し加減をみながら干したが、風があったので24時間くらいでカンピンタン(島根県ではシンシビ)に干し上がった。その日の天候によってはもっと時間がかかる。また生干しが好きなら12時間くらいでもいい。
ただし、短すぎると塩焼きになってしまう。

皮を上に向けて皿に盛った方がうまそうに見える


干し上がったら中央と鰭際に切れ目を入れて、焼き上げる。
我が家はガス台の真ん中のグリルなので火力と、位置をこまめに変えながら焼き上げる。
あとはご飯の友にしてもいいし、酒の肴にしてもいいが、決して上品に食べてはいけない。
本種が高い理由のひとつが身離れがいいことだろう。食べてきれいである。
むしゃむしゃやるとご飯を食べ忘れたり、酒を飲み忘れたりする。
焼き上がった香りを鼻に吸い込んだ途端、ヤナギムシガレイの世界に取り込まれたといった感じがする。
身の甘さもある。
しかも大トリに真子が控えているのだからすごい。
時季的に真子はそんなに膨らんでいないが、ウニの生殖巣を食べているときに感じる硫黄のような玄妙な風味と、濃厚な甘味とこくが一斉にやってくる。
あっと言う間に討ち死にしそうな味に討ち死にしてしまった、初食いであった。

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ヤナギムシガレイのサムネイル写真
ヤナギムシガレイWillowy flounder海水魚。水深100-200m。北海道積丹半島〜九州北西部の日本海沿岸、北海道噴火湾〜千葉県銚子市の太平洋沿岸、相模湾、・・・・
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