202311/11掲載

11月初旬、気仙沼の小ムツは旬を迎えている

気仙沼はムツ属の交差点


宮城県気仙沼市、菅原宏志さんから小ムツ(若い個体で、体長19〜22cm ・140g前後)を送って頂く。気仙沼の小型の小ムツは非常に興味深く、気になる点がいっぱいある。まずは気仙沼小ムツ探求の第一歩である。返す返すも菅原宏志さんと定置網のみなさんに感謝します。
重要な部分の計測をして、写真をとったら、博物館ではない我が家は、速やかに食べる。だいたい見るからにうまそうな個体たちである。
ムツという魚の特徴は骨があまり硬くなく、しかもスズキ亜目という進化した魚類なので小骨がない。小さくても脂があり、筋肉に水分が少ない。
若い固体では、アジ科のマアジに似た市場価値を持っているが、漁獲量は遙かに少なく、ある意味、レア(嫌いな言葉だが)である。
ちなみに宮城県ではロクノウオという。これは江戸時代に伊達家代々が陸奥守(陸奥国で陸奥守というのは中世・近代史では非常に重要なのだ)であったことから憚かり、ムツ(六)とは呼ばず、六の魚としたためだという。明らかに作り話だが、作者は非常に優秀である。
さて、小ムツだが、小ムツとしては大きめである。ムツは東シナ海あたりで産卵し、稚魚は海流にのって北上、日本各地で稚魚期・若魚期を送る。気仙沼周辺にいる小ムツはじょじょに深場に移動するはずだが、何処に行くのだろう。相模湾あたりまで南下するのだろうか?

舌に乗せた途端脂が溶け出してくる


なんて考えながら、2尾は水洗いしずぼ抜きにして振り塩をして冷蔵保存する。
あとの2尾は深夜酒の友にする。
三枚に下ろして、腹骨・血合い骨を取り。皮目をあぶる。
このまま冷蔵庫で寝かせる。
あぶってすぐに刺身状に切ると皮がめくれて哀れなものになる。
驚くほど脂が乗っていることは冷たくなった状態なのに舌の上で、あくまでも感覚的に3分の1くらいが溶けてしまうことでもわかる。
ほぼ禁酒中なので5勺の酒で舌を洗い流しながら食うと、まさに極楽気分となる。

定番中の定番だけど何度食べてもうまい


小ムツにも旬はあると思っている。相模湾は冬だけど、気仙沼はそれよりも早いのかも知れない。
翌朝の塩焼きもご飯がすすんでこまる味であった。
なによりも表面に溶け出して皮を揚げ物めいた状態にした脂が、反凝固状体になり、不思議な風味を醸し出しているのがいい。
気仙沼の小ムツは値千金なのである。

このコラムに関係する種

ムツのサムネイル写真
ムツGnomefish 牛眼鯥、牛眼鯥、牛目仔、牛眼青鯥海水魚。水深200〜700メートルの岩場。北海道〜九州南岸の太平洋沿岸、北海道〜九州南岸の日本海・東シナ海、鳥島。九州・・・・
詳細ページへ

関連記事 ▽




呼び名検索

方言を含む全ての名(標準和名,方言,呼び名,外国名,学名)から水産物を検索します。

閉じる