ムツ
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珍魚度・珍しさ | ★ いつでも手に入る |
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魚貝の物知り度 | ★★★★ 知っていたら達人級 |
食べ物としての重要度 | ★★★ 一般的(流通量は普通) |
味の評価度 | ★★★★★ 究極の美味 |
分類 | 顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目ムツ科ムツ属
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外国名 | Gnomefish 牛眼鯥、牛眼鯥、牛目仔、牛眼青鯥
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学名 | Scombrops boops (Houttuyn, 1782)
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漢字・学名由来 | 漢字 鯥 Mutu Houttuyn Maarten Houttuyn (Martinus Houttuijn マールテン・ホッタイン 1720-1798年)。オランダの医師、博物学者。リンネの継承者。ドクダミなどを記載。 |
地方名・市場名 |
概要
生息域
海水魚。水深200〜700メートルの岩場。
北海道〜九州南岸の太平洋沿岸、北海道〜九州南岸の日本海・東シナ海、鳥島。九州〜パラオ海嶺、東シナ海大陸棚縁辺域、台湾。
[山形県鼠ヶ関]
生態
■ 産卵期は10月から3月。
■ 稚魚、幼魚は磯場や浅い湾内にいる。
■ 成魚は水深200メートルから700メートル。
ツノクチ 口が尖って、頭が小さく軆に平みがあって丸い。ツノクチとメダカは同様に黒色であるがツノクチの方が稍や大きく、数も多い。此両者(ツノクチ、メダカ)はほゞ同一場所に生息しているが、メダカの方がやや深所に生息する。
メダカ 口が圓く、頭大きく、軆は細長く、目が大きい。ツノクチとメダカは同様に黒色であるがツノクチの方が稍や大きく、数も多い。此両者(ツノクチ、メダカ)はほゞ同一場所に生息しているが、メダカの方がやや深所に生息する。
キンムツ 軆形メダカに似て、色は白みがかった銀色を帯び、味は良好で且つ最も浅所に生息するが、数量は多くない。
『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)
『魚類の形態と検索』(松原喜代松 岩崎書店 1955)
基本情報
北海道から九州の日本各地で水揚げのある深海魚である。深海にいる成魚は今や高級魚、もしくは超高級魚だ。浅い岩礁域にいるので「オンシラズ」などと呼ばれる若い個体(小型)も人気が高くそこそこの値がつく。また、流通上は本種も「クロムツ」、「黒ムツ」として流通することが多いが、もちろんムツであってクロムツではない。
関東では古くより煮つけ用の魚として人気が高かった。ちょっと贅沢ではあるが一般家庭でも手の届くものだったが、近年高値で縁遠い魚となっている。余談になるがそこで登場したのが国内でも揚がるが主にアメリカやロシアから輸入しているギンダラや、「銀ムツ」と呼ばれていたメロ(マゼランアイナメ)、カーディナルフィッシュだ。
むつっこい(脂っこい)魚であるというのが語源となっているように、脂の強い身は非常に美味である。またそれ以上に珍重されるのが「むつ子」、すなわち卵巣である。
古くは煮つけ用の魚とされていたが、鮮度管理ができるようになって刺身用としての需要も高くなっている。
珍魚度 普通の食用魚。若い個体は消費地でもときどき見かける。大型は高価だが手に入れるのはたやすい。
水産基本情報
市場での評価 関東では人気が高いので定番的な高級魚。大型は超高級魚。小型はやや高い。小さくても安くはない。
漁法 釣り、定置網
産地 鹿児島県、長崎県、高知県、東京都、神奈川県、静岡県など
選び方・食べ方・その他
選び方
触って張りのあるもの。鰓が赤いもので、身にボリューム感のあるもの。
味わい
旬は晩春から冬。産卵後の冬から春の短い間以外は味があまり落ちない。小さくても脂がのっている。
鱗は薄くて取りやすい。皮はやや厚くて硬め。骨は柔らかい。
透明感のある白身だが、脂がのると白濁する。熱を通しても硬く縮まない。
栄養
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危険性など
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食べ方・料理法・作り方
脂分は筋肉の層の間で溶けてしまうが、ちゃんと皮周辺に残っている。身からも染み出してくるが口に入れると、実にうま味豊かな液体と化す。パン粉のさくさく感と、この筋肉の層から来る甘味とあいまって頗る付きにうまい。うまさ名状しがたい。
刺身にすると非常に柔らかい。ただ嚙むと抵抗感を感じるくらいの食感がある。皮下も身にも均質に脂が混在しているのか口溶け感からくる甘味がすごい。背の部分6切れで十二分という重たい味ながら、決して後味が重いわけではない。
好んで食べる地域・名物料理
加工品・名産品
釣り情報
■ 防波堤など陸からは稚魚や幼魚をねらう。これは夜釣りで、電気浮きのサビキ釣り。面白いことに都会からの釣り師よりも海沿いに住む地元の人たちにファンが多い。
■ 成魚は水深200〜300メートルを胴つき仕掛けか天秤しかけ、餌はイカの短冊でねらう。
歴史・ことわざなど
魚鑑の「ろくのうを」 〈仙台にろくのうをという、中略、紫黒(さいひろ)にして頭眼大いなり、尾に岐(また)なく、脂多しといえとも、味ひ淡し、春月多し以下略〉とある。「ろくのうを(ろくのうお)」は、仙台に居城を置く、伊達氏が14代、伊達稙宗以来、陸奥守護(陸奥の守)であったために、「むつ」を避けて「ろく」としたとされている。
泥むつ 鹿児島県にあがる非常に脂ののった大形のムツ。非常に高価だが、魚類中味は最高峰。
地方名・市場名
サイズ / 時期若魚 参考山下正晶さん、聞取 場所兵庫県但馬柴山・香住
備考〈仙臺でロクノウオと云うのは藩主伊達家が陸奥守であったので、是を遠慮したと傳えられてゐる〉田中茂穂。 参考文献、『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年) 場所宮城県仙台
場所富山県黒部市
サイズ / 時期若魚 備考浅場で定置網にはいる小型のもの。 参考長尾桂一郎さん 場所徳島県海部郡海陽町宍喰
参考文献、『種子島の釣魚図鑑』(鏑木紘一 たましだ舎 2016年) 場所東京都、神奈川県江ノ島、山口県下関、鹿児島県種子島
参考『種子島の釣魚図鑑』(鏑木紘一 たましだ舎 2016年) 場所鹿児島県種子島
その他特に脂ののったもの。 場所鹿児島県鹿児島市
備考子供は浅い場所に、親は深い場所に、ともに暮らさないので「オンシラズ」。 参考文献 場所神奈川県横浜
備考特に脂ののったもの。 場所鹿児島県鹿児島市
場所徳島県海部郡海陽町『宍喰漁業協同組合』、高知県東洋町甲浦・宿毛市田ノ浦すくも湾漁協
参考文献より。