202310/31掲載

今季初湯豆腐はいりこ醤油で

豆腐屋のない横丁なんてつまらない

豆腐

東京都台東区には昔、40軒の豆腐屋があったという。それが今ではなんと4軒だけに。江東区の老人は(戦前なので1945年以前でしかも戦時体制深まる前)横丁を曲がると、豆腐屋、納豆屋のどっちかがあったともいう。いずれにしても今や都内の豆腐屋は絶滅の危機に瀕している。ちなみに24区内、特に下町の納豆屋は墨田区毛利にあった四ツ目納豆が最後で、絶滅したのではないかと思っている。
さて10月27日に台東区稲荷町に『伊勢源』という豆腐屋を見つけて、木綿豆腐を買って今季初湯豆腐を食べた。
考えてみると、ほんの20年くらい前まで下町で木綿豆腐というと嫌がられたものだ。ましてや絹ごし豆腐なんて言うと、一昨日来やがれ、と怒鳴られたことすらある。下町で買うのは「豆腐」であって、木綿豆腐とさえ言わなかった。

湯豆腐には加減醤油で、今季初湯豆腐はいりこ醤油


帰宅したら、いりこ(煮干し)を解体して、昆布と一緒に醤油4・みりん1の中に放り込む。半日このままで置き、湯煎して指を入れられないくらいの温度になったら火をとめる。

加減醤油は絶対に煮立たせてはいけない


ちなみにカツオ節があるときは手早いので土佐醤油を作る。今はめじか節(マルソウダの節)の薄削りではなく、やや厚みのある削り節しかないので、面倒ではあるが、いりこ醤油を作った。たまには時間をかけて加減醤油を作るのも悪くない。

ただの醤油なのであくまでも脇役


これは単なるつけ醤油なので主役ではないが、湯豆腐に加減醤油がないでは、こまっちゃう、のである。

ゆらゆら揺れる豆腐に自分も揺れる


久保田万太郎でもあるまいし、野卑なボクだが、昆布だしのなかで、ゆらゆらゆれる豆腐を見ながら時を過ごすときは、いやが上にも自分の人生を感じてしまう。
酒が飲めないので、凍頂烏龍茶で湯豆腐とはさえないが、体はちゃんとあたたまる。
しかも台東区稲荷町、伊勢源の豆腐はよい豆腐である。

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