202306/04掲載

相模湾で鮹さん大釣り、大トリは小キダイ

キダイをあなどるな

キダイ

ご近所の鮹さん(岩崎薫さん)が相模湾宇佐美沖で釣り上げた中に、オマケのように浮いていたのが小キダイである。全長21cm ・220gなので成魚ではあるが、成人式を終えて間もないといった個体である。
キダイは琉球列島や小笠原諸島を除く、日本列島で揚がるタイ科のタイで、国内でもっとも重要なタイ3種のひとつだ。日本海の底曳き網などで大量に水揚げされるなどで非常に安い。関東の釣り人がよく使う言葉、マッチ箱サイズなどは未利用魚となりかねない。余談だが、このマッチ箱などを使った蒲鉾が島根県石見地方にあるが、非常にうまい。見つけたら買って欲しいものである。
要するになんとかしないといけない問題魚のひとつなのだ。
いただいた日は若い個体でもちゃんと「鼻折れ」しているのを撮影して、水洗いして保鮮紙に包んで冷蔵庫に入れておいた。久しぶりに塩焼きもいいかな、といった感じである。
ついでに、江戸時代の書籍に「鼻折鯛」で出てくるのは、間違いなく本種のことだと明言しておきたい。

素直に刺身でよかったかも

キダイの霜皮造り、刺身

さて翌日の夕方、冷蔵庫から取り出して、塩でも振ろうかと手に取ると、手に脂が感じらるではないか。しかも身に厚みがある。見事なタイ(チダイ)の刺身を食べて翌日もタイ(キダイ)の刺身かよ、と思いながら三枚に下ろす。丸一日経っているのに身に張りがあり、切りつけた包丁に脂がへばりついてくる。
キダイの産卵は相模湾では春と秋の2回だと思っている。下ろした限りでは生殖巣は膨らんでいない。産卵期だけでは旬は測りがたい。とすると、キダイの旬は明確ではなく、周年うまい個体があることを再確認する。
片身は霜皮造りにする。
三枚に下ろして腹骨と血合い骨を取る。軽く振り塩をする。
30分ほどおき、表面に出て来た水分を拭き取り、沸騰状態に水をさして温度を下げた湯をかけて氷水に落とし、水分をよくきる。
しばらく冷蔵庫で皮目を落ち着かせる。
皮目が落ち着いたら刺身状にきる。
刺身は皮を引いて、刺身にする。
キダイなので皮を生かした霜皮だろうと思ったら大間違いだった。刺身がうますぎた。皮周辺のうま味と皮自体の食感とうま味で、うまいには違いないものの、皮のうま味が邪魔なのだ。タイ科のタイなのに舌の上で微かに溶ける脂に甘味がある。うま味が口中に広がって長々と続きダレない。
こんなにわかりやすいうまさはない。だれが食ってもうまい味。
落語なら大トリ、古今亭志ん生でありまする、な。
宇佐美沖で大釣りした鮹さんに大感謝!

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キダイのサムネイル写真
キダイEellowback sea-bream海水魚。大陸棚縁辺域。青森県出来島(つがる市)、山形県〜九州南岸の日本海・東シナ海沿岸、福島県(主に房総半島)〜九州南・・・・
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