ボタンエビ(トヤマエビ)1尾いくら
ボタンエビはトヤマエビ
八王子総合卸売協同組合、マル幸は仲卸でいえば上物屋の側面をもっている。仲卸では豊洲のように箱売りを除けば、総ての店舗が上物屋で、特上物屋があるところは別として、地方の市場は安売りの店と、上物を扱う店に分かれることが多い。マル幸の魅力は地方市場でも中央市場ではなく私設の小規模な市場なので、お買い得な魚も買えるが、特上物が買えることだと思っている。
本日はそのマル幸で上物のボタンエビ(トヤマエビ)を買う。見た目、荷の仕立てから北海道増毛産とみた。
標準和名がトヤマエビなのは国内で和名をつけたときの個体が富山湾産だったためだ。ボタンエビは北海道噴火湾などでの呼び名である。ちなみに本種をトヤマエビなどというのは野暮だ。標準和名は動物分類学者には重要だが食費者はそんなに気にしなくてもいい。
日本海の島根県以北で水揚げがある。流通上の最上級品は北海道日本海側産であるが、まとまって水揚げをみない地域である、島根県以北の日本海側などの方がいいものが手に入ることも覚えておくといい。
さて、すし屋で食うと目ん玉が飛び出すくらいのボタンエビは河岸ではいくらくらいするのか? 大きいほど高いが、小さくでも高い。売値は言えないので、買った値段を挙げると、100g前後1尾2200円を3尾買ったことがある。当時築地にはそれ以上もあった、もちろん今の豊洲にもある。
それと比べると八王子ではそんなキヨミズガイ的行為をしなくてもいい。今回のものは1尾500円である。
「一尾買い」は知り合いの店でなければできない「みみっち買い」である。
すし屋で食べたら1かんが目ん玉飛びだしクラスが500円で味見できるのだから安いものだ。
近くに上物を売る魚屋がある幸せはこんなところにある。
外子ありなしは味には関係なし
トヤマエビのタラバエビ科には片腹に円い円盤状の殻がある。このあたりに外子をつけているものと、つけてないものがある。今回のものは外子がなかった。抱卵期が長いのでつけていたからといって珍しくはない。ちなみに抱卵個体と抱卵していない個体の味の差はあまりない。外子好きなら外子つきを探せばいいのだ。
帰宅してすぐに計測して食べる。たぶん大卸で仕入れてから二時間半、荷(発泡)のフタをあけて1時間弱だ。増毛産のトヤマエビはフタを開けたときにはまだ生きている個体がある。それでもフタを開けた途端に急速に鮮度が落ちるので、料理店で食べるよりもボクの食べ方の方がうまいと思う。すし屋で1かん、安く見て1500円なら、500円ですし屋以上のいい状態ってのがうれしい。
剥きたてのとろりとした(何種類かのアミノ酸がねばり、甘味を生む)のを口に含み、じっくり味わって近所の笹一、純米大吟醸酒で洗う。
わたで締めて、これにて正一合をやる。
月に3回くらいの、ぜいたくな朝の味だ。