倉橋島、目の下1尺半、マダイとごぼうをたく
至って平凡なこの国の家庭料理だけど

4月から続けている、マダイ丸々1尾手に入れると、ものすごくたくさんの料理が作れるという話だけれど、全部紹介できないで終わりそうである。
かなり昔の話になってしまうので、これが最後の1品とする。
マダイ料理で今、いちばん好きなのは煮つけだ。
ただ、ボクの場合、好みがころころ何度も変わるので、ほんまのところ今だけの話かも知れぬ。
ちなみに好みが一生変わらないなんて人間は信用できない。
そんな人間は不幸としかいいようがない。
善悪と関係ない部分は、好みだけではなく、ころころ変わってこその楽しい人生だと思っている。
マダイのかまは塩焼きに、潮煮にした。
頭部の吻から鰓蓋までの部分をゴボウとたく。
ゴボウは適当に切って、ことこと柔らかくなるまで下煮して水に放ち粗熱を取り、ザルに上げておく。
頭部は適当に切り、湯通しして冷水に落とし残った鱗やぬめりを流す。
水分をよく切る。
これを酒・砂糖・醤油・水の中で煮る。
ゴボウのときにはショウガは入らない。
もちろんどうしても入れたかったら入れればいい。
目の周辺や口周りに、こんなに食べられる部分の多いことに、いきなりビックリ仰天するはずである。
この複雑な頭部の骨周辺にある身(筋肉)と皮が非常に味わい深い。
内臓でもないのに味の濃度が高い。
当然、合いの手に食べるゴボウも、そんじょそこらには転がっているはずのないお宝的おいしさである。
この複雑な骨周りの煮つけは食べる時間が長いのもいい。
食べるという事は時間なので、こんな煮つけこそ価値が高い。
蛇足だけど、できればゴボウは食べない方がいい。
全部別の器に移し、残して置いて、ご飯のおかずにする方がいい、のである。
めし泥棒、これにありという一品になる。