202504/27掲載

倉橋島の魚、目の下1尺半、マダイの刺身

黒ずんではいるがまだまだ未成熟な倉橋島のマダイ


広島県呉市倉橋島、『日美丸』、平本勝美さんにいろいろ送って頂いた。
当然、中には倉橋島名物のマダイが入っていた。
倉橋島は広島市の南にある。広島側からは江田島があり、倉橋島と大きな島が連なる。
呉市に統合されてしまっているが、もともとの呉との間には音戸の瀬戸という海峡がある。
たぶん広島県の最南端に当たるのではないか。
このあたりは、広島湾から南に島と島が重なり合い、多様な貝類、エビなどが豊富で豊かな海域である。
そんな海域で、多彩な貝類やエビなどを食べて育ったのが倉橋島のマダイだ。

全長50cm・2㎏上で、吻から目の下、尾の先までが1尺半。
マダイは目の下2尺までがいちばんうまいと思っているが、まさにそのサイズである。
桜は散り、5月、6月の産卵盛期を迎えようとしている時季。
雄で体が黒ずんではいるものの、精巣(白子)はまだ硬く成熟度は低い。
『日美丸』のタイ釣りは伝統的なフカセという釣法で、いわゆる一本釣りである。
マダイはエサ(食べているもの)、漁法、扱う人によって大きな差が出る。
そのどれ一つが欠けても、うまいマダイは生まれない。

まるで宝石のような色合いの、初日の刺身


我が家に来たのが4月24日なので、釣り上げた翌日ということだろう。
まずは刺身の時間経過での味わいの変化をば楽しみたい。
当日の刺身は血合いが薄紅で、水晶のような透明感がある。
白く濁った部分があるが、この濁りの原因が脂である。
釣り上げて、下ろして、刺身にして、その時間がまだ短すぎるためか、24日当日、うまいことはうまいが、味の奥行きはあまりない。
ついでにいうと、このとき仕事でデータを受け取りにきた若い衆がいた。
なぜ料理写真を撮影しているときに、来るのかわからないけど、箸が止まらないといいながら、うまいを連発していた。

皮のうまさもあるが、身のうまさも強くなる


若い衆が帰った後に、皮霜造りにしてみた。
こちらの方が完璧な味かも知れぬ。
マダイの皮ほどおいしいものはない。
湯をかけると少し皮のアミノ酸が急激にうま味成分に変性するだろう。
皮はうま味成分の宝庫だということがわかるはずだ。
皮の直下に目には見えないが、脂の層を感じる。

刺身の味わいは、この日がいちばんだった


翌日は身色が赤みがかっており、血合いの色も濃くなっている。
切りつけながら、端っこを口に入れただけで、脳みその中が文字だらけになる。
味の表現ができない。
ただただ、うまいとしか言いようがなく、舌の上での味の印象が長々と続く。
恐るべきはこの時点でも程よい食感が楽しめたことだ。

もう刺身にする部分がない、そんな3日目が味のピーク


そして3日目。
刺身にするような部分が残り少なくなってきた。
初日にやたらに食っていった若い衆のせいだ。
味わい(うま味成分の多さ)は明らかに頂点を迎えている。
1切れのインパクトが強い。
問題は食感が弱くなっていることだが、うまいだけで十二分かも。
結局、味のピークは3日目、食感も含めて考えると、来た日から2日目がよかった。

倉橋島のマダイは1月にも送ってもらっている。
そのときの方が脂ののりはよかった。
あれから徐々に産卵体制に入り、じょじょに脂は抜けていくだろうが、まだまだイケるぞ、倉橋島の鯛(マダイ)だ。

蛇足になるが、刺身を食べながら、酒を飲むのを忘れていた。
後がけ焼きそばは知っているが、後のみ日本酒は知らない。
日美丸さんに感謝!

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マダイのサムネイル写真
マダイRed sea-bream海水魚。水深30メートル前後から200mの岩礁域、砂礫底、砂底。稚魚、幼魚はより浅場にいる。北海道全沿岸〜九州南岸の日・・・・
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