202502/27掲載

絶滅危惧、鹿児島の、つけ揚げ

老齢化もあるが、「つけ揚げ」のおいしさが知られていない


さて、未利用魚、未利用魚と騒がしいが、未利用魚がわかっている人いるんだろうか。ということで、未利用魚の基礎知識を始める。ちなみに未利用魚の問題点は巨大なデータを見て初めてわかるが、国内を見渡す限り、どこにもそんなものはなく、あえて言えば我がサイトが一番大きい。
当然国内各地で聞取をする必要があるが、例えば漁業者に聞いてもいいが、買受人(大卸・仲卸)、小売業の話も重要であり、消費者も重要だということを忘れている人がいる。むしろいちばん未利用魚がわからないのは行政、そして漁業者かも知れないという現実も知るべきだ。
最近、未利用魚にマイナー魚を加えるなど、驚くほどのバカ丸出しなことをいうヤカラまでいる。
また、魚価を知らなければ、未利用魚はわからない、が、そのためには、日常的に魚を買っていないとダメだが、そんな人間見た事がない。


今回の主役はサメである。また未利用魚は漁業者だけの話ではなく、そのバックヤード、魚の利用者(加工業者)の話だということを語っておきたい。
写真の物体を間違っても「薩摩揚げ」などと言ってはならない。
最近、「薩摩揚げ」と呼ばれているすり身を揚げたものは、もともとは東南アジアから台湾、そして沖縄から鹿児島(薩摩)にやってきたのだと考えている。
東京には鹿児島から伝わった、それで東京では「薩摩揚げ」と呼ぶ。それを愚かにも一般用語化してしまったのだ。
最低限、鹿児島県人にだけは「つけ揚げ」と言って欲しい。

さて、昔、このすり身を揚げたり蒸したりする業界が至って元気だった。産地での水揚げされた多種類の魚の最後の引き受け手だった。全国津々浦々にこの「くずしもの」と呼ばれる揚げ蒲鉾や蒸し蒲鉾、ゆで蒲鉾を作る店があった。
鹿児島市内にも多くの業者があったことは、向田邦子(1929-1981)のエッセイにもある。
今、大問題なのが、この「くずしもの」を作る業者が急激になくなっていることだ。
生き残っている業者に共通点がある。地元の材料を使わないことだ。
鹿児島県の「つけ揚げ」の材料として挙げられるものは、サメ類、ブリ、シイラなどである。安いものはなんでもよかったのかも知れない。
これらなんでもかんでもすり身にして「つけ揚げ」にする業者が急激に消えて行っている。

問題になるのは昔は引く手数多だったサメ類、シイラなどが未利用魚になることだ。
そしていちばんの問題点はサメ類だとも言える。
イタチザメ科のイタチザメ、メジロザメ科のスミツキザメ、ネズミザメ科のアオザメ、オナガザメ科のシロシュモクザメ、アカシュモクザメ、などなどだ。
これら練り製品の衰退で生まれるものを「伝統的食文化衰退による未利用魚」としたい。

色黒、野暮ったいけど味は最高の「つけ揚げ」


サメ類の「つけ揚げ」は非常に味わい深い。
タラ(スケトウダラ)やイトヒキダラを主とした「薩摩揚げ」にはない、深いうま味がある。
問題は黒っぽい色だけだろう。
今どきのタラ類を使った見た目のいいものと比べると、野卑で木訥としているが、味は今どきのものよりもうまい。
しかも自然に優しい。
この見た目はよいがエネルギー消費の多い自然に優しくない「薩摩揚げ」ではなく、漁港の水揚げを無駄なく使い自然に優しい「つけ揚げ」を選んで欲しいものである。
ただその本物のの「つけ揚げ」の店が瀕死の状態にある。
鹿児島県の「つけ揚げ」を救いたいがなんとかならないか?

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