スマ

代表的な呼び名ヤイト

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体長1m前後になる。第1背鰭と第2背鰭は接近する。側線は1本。鱗は胸鰭の周辺域だけにある。背の部分に明るい部分があり、斜めの縞模様がある。胸鰭下に灸を思わせる黒い斑紋がある。
体長1m前後になる。第1背鰭と第2背鰭は接近する。側線は1本。鱗は胸鰭の周辺域だけにある。背の部分に明るい部分があり、斜めの縞模様がある。胸鰭下に灸を思わせる黒い斑紋がある。
胸鰭の下に黒く丸い斑紋がある。この斑紋を灸(やいと)の跡とした地方名がある。
「すま」は「縞(しま)」の転訛したものという説がある。これは背の部分に明るいグレイの部分があり斜めに走る縞(しま)があるため。

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珍魚度・珍しさ★★
少し努力すれば手に入る
魚貝の物知り度 ★★★★
知っていたら達人級
食べ物としての重要度 ★★
地域的、嗜好品的なもの
味の評価度 ★★★★★
究極の美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目サバ亜目サバ科マグロ族スマ属
外国名
Kawa kawa, Eastern little tuna, Little tunny, Wavyback skipjack, Mackerel-nuna 台湾/花煙(hua yen)、三點仔、巴鰹
学名
Euthynnus affinis (Cantor, 1849)
漢字・学名由来

漢字 縞鰹、須満、須万 Standard Japanese name / Suma
由来・語源 東京などでの呼び名を標準和名としたもの。
〈鰹の縦縞に対して「横縞鰹」の意味で「しまがつお」が「スマガツオ」に変化〉『新釈 魚名考』にある。縞模様とすれば背の部分の後半に顕著に斜めの縞がある。これが上から見ると目立つためか。
Euthynnus yaito Kishinouye, 1915(synonym) で岸上鎌吉が記載して標準和名がヤイトであったこともある。
筋がつお 〈背に黒白線三四条(くろくしろきすじさんよすじ)あるを筋がつを(すじがつお)といふ〉
〈カツヲ科スマ屬 スマ(ヤイト) Euthynnus yaito KISHINOUE〉。『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)。また同書に〈[臺灣以南の太平洋熱帯部に廣く分布する]……タイワンヤイト(新稱) Euthynnus alletteratus RAFINESQUE(現タイセイヨウヤイトのことで間違い)〉が掲載されている。

地方名・市場名

概要

生息域

海水魚。
[宮城県気仙沼]、千葉県外房、相模湾〜屋久島の太平洋沿岸、[北海道日本海側せたな町]、兵庫県浜坂日本海側〜九州南岸の日本海・東シナ海沿岸、琉球列島、小笠原諸島。
朝鮮半島南岸、済州島、インド・太平洋の温帯・熱帯域。

生態

基本情報

北海道南部以南に生息している。旧カツオ科・マグロ科の赤身魚の中では中型種。余談だが、スマの仲間は国内では1属1種だが、東太平洋にBlack skipjack[Euthynnus lineatus Kishinouye, 1920]、大西洋にはスマよりも小型のタイセイヨウヤイト[Euthynnus alletteratus (Rafinesque, 1810)/Little tunny)]がいる。
比較的温暖な海域を大きな群れを作らず回遊している。古くは西日本に多く、東日本には少なかった。
カツオと比べるととれる量は少ない。ただ2000年以前は非常にローカルな魚だったが漁獲量が増えており、流通技術の向上で関東などで見かける機会が増えている。味のよさを知る人は多く、近年、大型は明らかに高級魚である。
珍魚度 珍しい魚ではなく近年徐々に水揚げ量も増えてきている。探せば手に入る。

水産基本情報

市場での評価 入荷量が増えている。古くは安い魚だったが、今や高級魚である。
漁法 巻き網、定置網、釣り
産地 鹿児島県、三重県、和歌山県、神奈川県

選び方・食べ方・その他

選び方

触って張りのあるもの。硬いもの。

味わい

旬は春〜夏。ただし初秋から秋の産卵後以外あまり味が落ちないなど旬がはっきりしない。寒い時季にも脂がのっている個体があり、大きい方がおいしい。
また小振りの若い個体は晩秋から春にかけてもやや脂がのる程度で、大型と比べると味が落ちるが、逆に大型の味が落ちる8月後半から9月にも味はいい。
鱗は前方部分のみ、皮が薄い。骨はあまり硬くない。
血合いは大きい。脂がのると赤みが濁る。熱を通してもあまり縮まない。
あらなどからいいだしが出る。

栄養

危険性など

食べ方・料理法・作り方

スマの料理法・レシピ・食べ方/生食(刺身、たたき、なめろう)、汁(潮汁、みそ汁)、揚げる(天ぷら、唐揚げ)、煮る(ゆでる、煮つけ、なまり節)、炊き込みご飯、焼く(粕漬け、腹も焼き)
スマの刺身 古くはカツオやクロマグロと同じ、マグロ族(カツオ族)の魚であった。当然、カツオやマグロ同様にいの一番に刺身で食べたくなる魚なのである。
鹿児島県産の梅雨時、2㎏上、卵巣が膨らんでいた固体。下ろしているときから脂を感じる。三枚に下ろして血合いをのぞき、少し厚めに切りつける。身はしっとりと柔らかく、口に含むと脂が溶け出して、甘い。酸味は少なく、魚らしいうま味がとても豊か。絶品としかいいようがない。

スマのにんにく醤油和えタイム風味 やや厚めに切り、にんにく醤油で和えてタイム(コモンタイム)の風味をつける。タイムがこんなに生の魚に合うとは思ってもいなかった。また醤油とタイムとの相性もいい。嫌みがなく、魚の臭味も皆無で、飽きの来ない味である。
スマの焼霜造り 宮崎県日南市産の産卵期前の、脂ののったスマの皮目をあぶって刺身状に切ったもの。口に入れるととろっとして舌の上に微かな酸味とうま味が強く感じられる。ほどよい食感も楽しめて美味。ここではしょうがとにんにくを添たが、わさびでもいい。
スマの小振りの刺身 小振りの脂のないものを三枚に下ろる。腹骨をすき、腹の部分を皮つきのまま刺身にしたもの。シコッとした食感がとても心地よく、身にほんのりした酸味とうま味が楽しめる。しょうが、わさびなどお好みの薬味で。
スマの刺身土佐新子風 小振りのスマをやや小振りの刺身に切る。皿などに盛り、柑橘類(高知県の仏手柑、和歌山県の酢みかん、かぼすなど)を搾りかけて、皮をすりかける。仕上げにしょうゆをまわしかける。しょうゆは上質の甘味の少ないものが合う。しょうゆを使っているのに白ワインにも冷やした若い赤ワインにも合う。
スマの血合いのみそたたき 刺身にしたときに残った血合いの部分を骨付きのまま細かく包丁でたたいたもの。細かく切り、みそ、しょうが、ねぎ(みょうが、玉ねぎ、青じそなどなんでもいい)を合わせてよく切れる包丁で少し粘けが出るまでたたく。日本酒にとても相性のいい肴である。
スマの潮汁 刺身などを作ったときに出た中落ち、頭部などの部分を適宜に切り、強めの振り塩をして置き、湯通しして冷水に落として水分をよくきる。昆布だし(水でも可)から煮出して酒、塩で味つけした。実にうま味がつよく滋味豊かな汁になる。中骨についた身もとてもうまい。青みや野菜は好みのものを使うといい。
スマのみそ汁 あらや肝、胃袋などを集めて強めの塩をしておく、最低でも1時間以上寝かせて、湯通しして、冷水に落とす。血液やぬめりを取り、水分をよく切る。これを水から煮出してみそをとく。みその爽やかな塩味とスマの強いうま味が相まって実にうまい汁になる。癒やされる味でもある。
スマの天ぷら 典型的な赤身の魚であるが、天種としてもとても優れている。皮と身の独特の風味を生かすために、三枚に下ろして、腹側を薄切りにする。水分をよくきり、軽く振り塩をする。水分がでてきたら拭き取り、小麦粉をまぶして衣をつけて高温で揚げる。
スマの竜田揚げ(唐揚げ) 鰭下の身や切り落としを、みりん、酒、しょうゆ、にんにくの地につけ込む。水分を丁寧に拭き取り、片栗粉をまぶしてじっくりと揚げる。表面は香ばしく、しょうゆなど調味料のうま味とスマのうま味があいまってとてもうまい。
スマとじゃがいもの煮つけ 煮ると、赤身魚で非常にうま味豊かなだしが出る。これを野菜であるじゃがいも、里芋、大根など根菜類とたき合わせる。ここではじゃがいもと一緒に煮てみた。スマは適当に切り、湯通しして冷水に落とす。水・醤油・酒・みりんを煮立てた中で適当に切ったじゃがいもと煮つける。途中、みりんや醤油で味加減する。砂糖を使ってもうまい。
スマの角煮 水洗いして三枚に下ろし、大きめのサイコロ状に切る。酒・みりん・砂糖・醤油・しょうがに半日以上漬け込んで下味をつける。煮汁ごと煮ていくが酒・みりんなどで加減をし、醤油などを好みで加える。砂糖を加えて甘味をつけるとご飯に合う。煮え加減はお好みで完全に水分を飛ばすと保存性が高くなる。
スマのあら煮 カマ下・血合い周辺などのあらを集めて置く。酒・みりん・砂糖・醤油・しょうがなどで下味をつける。甘めが好きなら砂糖をい加えてもいい。1時間以上寝かせて煮汁に水を加えて煮立たせ、醤油・酒・砂糖などを加えて加減する。ここで下味をつけたあらを煮る。
スマのなまり節 スマを塩ゆでにして軽くほしたもの。これを再度焼いてマヨネーズで食べる。そのまま食べてもうまいが、焼くとサバ科特有の風味が立つ。冷凍しても劣化が少ないので保存食にもなる。これを煮つけなどに使ってもいい。水洗いして三枚に下ろす。これを強めの塩水でゆであげて放冷する。
スマのなまり節とじゃがいもの煮もの 単に生を煮つけにしてもうまいが、ここではゆでて水分を飛ばして少し干し上げた「なまり節」を使うとより味わい深い。夏はなすやトマト、またじゃがいもやにんじん、だいこんなど好みの野菜と合わせるといい。
スマの塩煮 水洗いして鍋に入る大きさに切る。頭部などを使うといちばんいい。肝、胃袋などとともに湯にくぐらせて、冷水に取る。血液や鱗、ぬめりを洗い流してよく水分をきる。これをやや強めの塩水で短時間で煮る。薬味は黒コショウが合う。
スマの炊き込みご飯 水洗いして中落ちの身や刺身などの余分な部分を集めて置く。適当に切り、生醤油に漬け込んでおく。炊飯の支度をして醤油の汁気を切ったスマの身を入れ、生姜のせん切りと、少量の酒・醤油とともに炊く。炊き上がりに甘長唐辛子とみょうがのせん切りを混ぜ込む。
スマの西京漬け(みそ漬け) 三枚に下ろして切り身にする。振り塩をして少し置き、出て来た水分をよく切る。これをみそ(ここでは西京味噌のつけ味噌)とみりんを合わせた地に漬け込む。丸一日くらいつけると食べられるようになる。焦げやすいのでじっくり焦がさないように弱火で焼き上げる。
スマの腹も塩焼き 腹も(内臓を包んでいる薄い筋肉の部分)の部分に塩をして少し置く。表面の水分をよく拭き取り、じっくりと焼き上げたもの。いちばん脂ののった部分で甘味とうま味が豊かである。
スマの粕漬け 赤身ではあるが漬け魚にもなる。ここでは酒粕につけ込んでみた。三枚に下ろして切り身にする。振り塩をして少し寝かせてでてきた水分を拭き取る。これをみりんで錬った酒粕につけ込む。2、3日すると食べられる。焦げやすいのでじっくり弱火で焼き上げる。

好んで食べる地域・名物料理


ヒライの焼き切り 「焼き切り」はあくまでも徳島県海陽町での料理名である。他の地域にも同様のものがあると思われる。脂ののったスマを使うと舌の口溶け感があり、甘いと感じる。
水洗いして三枚に下ろし、背と腹を分け血合い部分を切り取る。表面をあぶり、刺身状に切り、塩を振り柚子酢をふってたたく。上に玉ねぎのせん切りを飾る。[徳島県海部郡海陽町宍喰]

加工品・名産品

釣り情報

歴史・ことわざなど

地方名・市場名

ヤハラ
参考三重県『東紀州のお魚リスト』 場所三重県東紀州 
ソマ
参考文献 場所三重県鳥羽市 
ワタナベ
場所千葉県外房、神奈川県相模湾周辺 
イトガツオ ヤマト
参考島根県水産技術センター 場所島根県東部 
トトロ
参考島根県水産技術センター 場所島根県西部 
ヒライ
場所徳島県海部郡海陽町宍喰 
エッパ ヘッパ
場所徳島県海陽町海部 
スマゴ
参考文献 場所愛媛県宇和島 
スマガツオ
参考文献 場所東京 
スマ
参考文献 場所東京、高知、愛媛県宇和島 
オキガツオ
参考『伊豆・小笠原諸島の魚たち 改訂2版』(東京都水産試験場 2004) 場所東京都 
ミツボシ
場所東京都三宅島 
ヤイッパラ
場所東京都伊豆諸島など 
ヒラソウダ ホシ
参考『伊豆・小笠原諸島の魚たち 改訂2版』(東京都水産試験場 2004) 場所東京都伊豆諸島・小笠原など 
ヤインパラ
参考『伊豆・小笠原諸島の魚たち 改訂2版』(東京都水産試験場 2004) 場所東京都伊豆諸島周辺域 
キュウテン
参考『伊豆・小笠原諸島の魚たち 改訂2版』(東京都水産試験場 2004) 場所東京都八丈島 
ウズラガツオ(ウズラ)
参考『伊豆・小笠原諸島の魚たち 改訂2版』(東京都水産試験場 2004) 場所東京都八丈島(c) 
アイッパラ
参考『伊豆・小笠原諸島の魚たち 改訂2版』(東京都水産試験場 2004) 場所東京都八丈島・八丈島 
ソウダ
場所東京都八丈島(b) 
マルッポ
参考『伊豆・小笠原諸島の魚たち 改訂2版』(東京都水産試験場 2004) 場所東京都諸島部 
ウブシュー
参考『魚名からみる自然認識:沖縄・伊良部島の素潜り漁師の事例から』(高橋そよ 2014年03) 場所沖縄県伊良部島 
ヤイトガツオ
場所熊本 
ホシエッパ[星エッパ]
参考井上正一郎さん 場所熊本県天草市 
エイシ
場所神奈川県相模湾周辺 
エイッパラ
場所神奈川県相模湾周辺b 
メチカ
参考長浜鮮魚市場20181122 場所福岡県福岡市 
エイト
参考静岡県水産・海洋技術研究所・伊豆分場 場所静岡県伊豆富戸 
エイトッパラ
参考静岡県水産・海洋技術研究所・伊豆分場 場所静岡県伊豆稲取 
ウブス
参考奄美漁業協同組合 場所鹿児島県奄美大島 
ヤートー セガツオ シェガツオ
参考『種子島の釣魚図鑑』(鏑木紘一 たましだ舎 2016年) 場所鹿児島県種子島 
ホシタロウ[星太郎]
参考鹿児島市田中水産 場所鹿児島県鹿児島市 
ホシガツオ ホシカツオ[星カツオ]
備考鹿児島魚市場など。 参考『種子島の釣魚図鑑』(鏑木紘一 たましだ舎 2016年) 場所鹿児島県鹿児島市・種子島 
オボソ
参考伊藤佳代さん、『種子島の釣魚図鑑』(鏑木紘一 たましだ舎 2016年) 場所高知県宿毛市田ノ浦すくも湾漁協、鹿児島県南さつま市笠沙・屋久島・種子島 
エイトンボ(エートンボ)
場所神奈川県真鶴 
ジューガジラー
備考「ジュー(しっぽ)」が「ガジれてる(細くくびれてる)」という意味。 参考『美ら海市場図鑑 知念市場の魚たち』(三浦信男 ぬにふぁ星 2012)、河村雄太さん(石垣市)、河村雄太さん 場所沖縄県南城市知念・石垣島 
ホクロ ホクロガツオ
参考聞取、三重県『東紀州のお魚リスト』 場所三重県東紀州・熊野市 
マーガチュー
場所沖縄 
モンスマ(モンズマ)
場所徳島県海部郡美波町日和佐・美波町牟岐・海陽町『宍喰漁業協同組合』 
モンガツオ[紋鰹] モンカツオ[紋鰹]
場所宮崎県日南市油津 
ヤイト[灸]
参考島根県水産技術センター、『美ら海市場図鑑 知念市場の魚たち』(三浦信男 ぬにふぁ星 2012)、河村雄太さん(石垣市) 場所東京都伊豆諸島、三重県志摩市大王町・熊野市遊木漁港、和歌山県串本町、島根県東部・西部、山口県日本海側、徳島県美波町由岐、沖縄県南城市知念 
エーシ ヤハラ
参考文献より。