202502/09掲載
冬枯れどきのワラサ刺身を梅酢で
ワラサでも買うしかないか、と思うのはなぜだろう?

日本全国市場は冬枯れだと思っている。去年もそうだったし、一昨年もこの時季は枯れていた。
せっかく八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産に行ったので、何か買って帰りたいと思ったとき、何気なく目についたのが、ワラサである。
体長68cm・4.4kg、触った感じからして決してよい、とは思えない代物である。
でも、安い。
「半身でいいかな?」
ということで半身買いする。
歩留まりを考えると、最近安値安定しているマイワシよりも安い。
それにしてもこんなに安くて、いろんな料理に使えるのに、なぜワラサは売れないのだろう。
10年ものの梅酢には想い出がある

さて、10年近く前、関東周辺を彷徨っていた。畑仕事をしていたバアチャンに「コイを食べていたか?」とか聞いたら、長話となり、半日つぶれたことがある。
茶の間から葉が出始めた白加賀の林を見ながら、ほうじ茶に干し柿でいろんな話を聞かせて頂いた。
1943年、若い身空で(20歳)で中島飛行機の部品作りに行かされた、とか、政府は交通の便などなにも考えてくれなかったので、工場に行くのだって大変だった、とか。
まるで伊志井寛の劇のような話とか、横道にそれにそれた話を日が傾くまで聞いたのも、今思えばいい想い出である。
そのとき土産にもらったのが塩辛い漬物と梅酢である。
1升瓶2本もらったので、ほぼ10年経っても小さな瓶ひとつになって残っている。
澱をなんどか濾しただけなのに全然悪くなっていない。
この小瓶の梅酢をそろそろ使い切りたいと思っていた。