202411/15掲載
今季初白子で独りぬくぬくと白子鍋
白子が昆布だしの中でゆれるのを見ながら酒を飲む

11月14日、八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産で買った、北海道釧路産が今季初白子(マダラの精巣)だった。
白子はまだ蒸し暑い時季から市場に並ぶが、赤みがとれるまで待つ。
釧路産の白子は触っただけで上々であることがわかる。
食べ頃を外すとろくな事がないのが白子なのだ。
不思議なことに、ここ数日、昼間は元気いっぱいなのに夜になると熱が出る。
滋賀の旅の後始末と、連れ帰ってきた風小僧のせいで、気力は半分以下、疲れは夜になると蘇る。
白子を見た途端、深夜の不調を鑑みて、今日は手間いらずの「白子鍋」を作るのだ、と決めたのもある。
鱈の白子は冬の季語、なのに世間は紅葉、紅葉

冷蔵庫をのぞくと子供のグーくらいの大根があるのを確認して、塩水の中で白子をさっと洗って水分を切る。
養殖ラウスコンブを敷いた鍋に火をつけて時間をかけて温める。
ここに白子を全部入れて火を最小限にして食べる。
酒は滋賀県木ノ本の「鳰自慢 上撰」。
ボクだけかも知れないが、通常ロックで飲むこの酒を、今回は風小僧のせいで燗をつける。
ゆらゆらゆれる白子をつまみ出しては、大根おろし、かぼす、しょうゆを絡めて食べる。
悲しいことに胃の腑が変なので紅葉下ろしはなし。
口の中でとろっと半溶けして甘い白子に、冬の始まりを感じる。
なのにテレビでは紅葉のニュースが流れている。
ちぐはぐな現ではあるが、乳白色になった白子ってウマズギである。
思わず踊り出したくなるが、微熱ありなので、ぐっとこらえて燗酒を飲む。
揺れる白子に「いのちのはて」は思わないが、もう二度と冬川の水は飲まぬ、と思う。
■舵丸水産は、一般客に優しく、水洗い・下ろしなどをやってくれるので、ぜひ近くにお住まいの方は一度お寄り頂きたい。