久しぶり、ぽんだらで「鱈鍋」
今季初めて肌寒の夜に、ぽんだらの「鱈鍋」

「ぽんだら」の鍋は関東では郷土料理に近いものではないかと思っている。江戸川区の魚屋などでも秋も深まると、鍋用に調理されて並べられていたものだ。
安くてそれでいながら満足度が高い、「ぽんだら」はいの一番に鍋がいい。
ということで埼玉で買った「ぽんだら」をさっそく水洗いして適当に切る。もちろんこの時季の個体で、このサイズなので真子も白子もない。肝だけを取り分けておく。
湯通しして冷水に落としてぬめりや残った鱗を流す。水分をよく切る。
これを昆布だしに酒・塩の味つけで煮ながら食べる。
野菜などはお好みで。
今回は山東菜を使ったが、最近安くなってきたロケット菜(ルッコラ)、レタスなどもいい。
きのこは欲しいけど、これもなんでもいい。
栽培ものの種類が増えたのもあり、特にこの時季、きのこ買いが楽しくて仕方がない。
あとは豆腐でもいいし白滝でもいい。
鍋は無法でなければならない。
それにしても今季初鱈鍋はやたらにうまいものだな、と思う。
あっさりとして柔らかく、ほろほろと舌の上で脆弱にくずれる。
上品ななかにも味があるところもいい。
マダラは小さくてもおいしい魚なのである。
最近、魚界にも強烈な色物が増えて、このスタンダードなおいしい魚にスポットライトが当たらなくなっている。取り分け魚に無知な人に限って、普通の日常的な魚を知らないのはなぜだろう?
水産生物はできる限り多種多様に食べて欲しいが、至って日常的な地味でおいしい魚も忘れてはならぬ。
今年もみそ仕立て、韓国風とひとり鍋をつつくのだろうなー。
安くておいしくて、いろんな料理に使えて

埼玉県鴻巣市・北本市のスーパーめぐりをしていて鳥取県産(境港競りだろう)「ぽんだら」を発見した。「ぽんだら」はマダラの若い固体、重さ500g前後のことで東京をはじめ関東周辺の市場や魚屋などでの呼び名だと思う。
マダラは長い年月、塩蔵品、もしくは乾製品での流通が主であった。東京は古くは常磐から、東北本線が明治時代に開通してからは仙台などからマダラが来ていた。鉄道が開通してもまだ塩蔵品が主流だったのだと思っている。
それが敗戦後になって無塩もの(完全に生のもの)がやってくるようになる。東京都周辺で、今でも無塩もののマダラを喜ぶ魚屋が多いのも、この無塩ものが増えた時代を知っている人間がいるからだ。
マダラは大きい固体の方が高い。そんななか安い「ぽんだら」のファンは多く、2000年から2010年前後まで大量に入荷してきていた。
最近、その「ぽんだら」の影がやけに薄い。値も下げているように思える。「ぽんだら」を食べる食文化がなくなりつつあるのだ、と思っているがいかがだろう。
築地でも八王子でも「ぽんだら」の山を、何度も何度も見ているので、「ぽんだら」が懐かしい。