アオギス

Scientific Name / Sillago parvisquamis Gill, 1861

アオギスの形態写真

50cm SL を超える。シロギスに非常によく似ている。全体に細く、青味がかる。第二背鰭に黒いごま状の斑紋が散らばることで区別がつく。
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50cm SL を超える。シロギスに非常によく似ている。全体に細く、青味がかる。第二背鰭に黒いごま状の斑紋が散らばることで区別がつく。50cm SL を超える。シロギスに非常によく似ている。全体に細く、青味がかる。第二背鰭に黒いごま状の斑紋が散らばることで区別がつく。
    • 珍魚度・珍しさ

      ★★★★
      めったに出合えない
    • 魚貝の物知り度

      ★★★★★
      知っていたら学者級
    • 食べ物としての重要度

      ★★
      地域的、嗜好品的なもの
    • 味の評価度

      ★★
      まずくはない

    分類

    顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目キス科キス属

    外国名

    学名

    Sillago parvisquamis Gill, 1861

    漢字・学名由来

    漢字 青鱚 Aogisu
    由来・語源 東京都、千葉県などでの呼び名で、キスであって体色が青いという意味合い。
    河ぎす 津軽采女(1667〜1743)の『何羨録』にカワギズ(蒼きす)、皮ギス(河ぎす)。
    川幾須 〈江から河に上るもので、状はほぼ扁く(ひらたく)小さく、色は微碧(ややみどり)を帯びている〉『和漢三才図会』(寺島良安 東洋文庫 平凡社 正徳2年 1712)
    川ぎす、青ぎすは同種なり 〈河海の二種あり……シロギスの説明に続き……又川ぎす、青ぎすは同種なり、形も円くふとりて、吻尖り尾にいたりてはほそれり〉『魚鑑』(武井周作 天保辛卯 1831)
    標準和名の変遷
    1938年の魚類検索では現在の学名と標準和名とはまったく違っている。Sillago parvisquamis はヤギスとなっていて、現シロギスの学名、Sillago japonica には、アヲギスが当てられている。本種の標準和名はもともとはヤギスであった。これは魚類検索、1955年まで続く。アオギスとヤギスは別種としていた。
    〈東京で普通大のものをアオギス、小さいのをヤギスと云う〉。また出生魚で大きさによって呼び名が代わるとも。〈遊魚者仲間では此魚の年齢に應じて三年ヒネ、四年ヒネ(又はボラギス)と云う〉『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)
    現在の標準和名と同じになるのは、『日本産魚類大図鑑』(益田一、荒賀忠一、尼岡邦夫、上野輝弥彌、吉野哲夫 東海大学出版会 1984)からで、このとき、アオギス(ヤギス)となっている。
    ちなみにシロギスは江戸時代など上物として富裕層の贈答や見舞いなどに使われた。その場合は単に「きす」である。明らかに本種は「きす」ではなく、「やぎす」であって江戸時代の食用魚としては下流が食べるもの、もしくは安くてあまりおいしくないものと考えられていた可能性が高い。
    鱚(キス)について
    地方名に多い「きすご」が本来の呼び名・表記であるという。一般に「きす」というのは最後の「ご」を省略したもの。
    「約500年ほど前の御湯殿の上の日記に初めて“きすご”として記録」。
    「和漢三才図絵(寺島良安 1712年)にも「幾須吾(きすご)大なるものを吉豆乃(こずの)といい」。
    語源は「生直(きす)」=性質が素直で飾り気のない」に魚名語尾(魚を表す)「ご」がついた。

    地方名・市場名

    生息域

    汽水域、内湾。
    古くは東京湾以南、伊勢湾、和歌山県和歌浦、徳島県吉野川河口だったが各地した可能性が高い
    大分県豊前海・別府湾、鹿児島県吹上浜。
    朝鮮半島南岸(麗水)、台湾。

    生態

    ■ 河口、干潟などの内湾に棲息。
    ■ 寒い時期は湾口部の深みにいて、暖かくなると汽水域に移動してくる。
    ■ 産卵期は6月前後。

    基本情報

    一般的なキス、シロギスと比べると巨大な魚である。徳島県などで唐傘というが、それほど大きな個体がいたのかも知れない。
    九州などでは生存しているが、あえていうと漁業対象ではなく、むしろ漁獲しない対策を取るべきだ。絶滅危惧種でもあるので、漁で揚がったものは仕方がないにせよ、積極的に採取するなどは避けるべきだ。
    古くは東京湾以南にいたって普通で非常に大型になり、釣り味(引き)があるので釣りの対象魚として人気が高い。
    江戸時代から高度成長期前くらいまで続い東京湾の伝統釣法、脚立釣りの対象としても非常に知名度の高い魚だった。釣りでは人気があったが、シロギスと比べると味が落ちるので、食用として漁獲されることもなく、また魚屋で売られることもなかったようだ。
    シロギスよりも汽水域に近い自然の海岸線のある地域に生息するので、多くの地域で絶滅してしまったのだと考えている。
    珍魚度 珍しい魚だが、あえて手に入れようと思ってはいけない。写真はすでに漁獲されてしまったものを手に入れたものだ。

    水産基本情報

    市場での評価/流通しない。
    漁法/
    産地/

    選び方

    体に張りのあるもの。

    味わい

    旬は春から初夏。
    鱗は小さくやや硬く取りにくい。皮は厚みがあって強い。骨は柔らかい。
    血合いの弱い身で熱を通しても強く縮まない。

    栄養

    危険性など

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    アオギスの料理・レシピ・食べ方/揚げる(天ぷら)、煮る(煮つけ)
    アオギスの天ぷら シロギスと比べると皮目の香りに淡水魚ににたものを、微かだが感じる。ただこの皮目に味がある。
    水洗いして三枚下ろしにする。腹骨・血合い骨を取り、水分をよくきり、小麦粉をまぶす。衣をつけて高温で揚げる。
    サクッとした中に白身らしい甘味が感じられ、皮目に独特の風味がある。

    アオギスの煮つけ 産地では希に煮つけにするという。水洗いして適当に切り、湯通しする。冷水に落として残った鱗とぬめりを流す。これを酒・砂糖・醤油・水で煮る。煮ると調味料の味が勝ち、魚自体の味はあまり豊かではない。少し皮が硬い。

    好んで食べる地域・名物料理

    加工品・名産品

    釣り情報

    脚立釣り 江戸時代から昭和40年前後まで、東京湾で行われていたのがアオギスの脚立釣り(きゃたつづり)。アオギスは警戒心が強く、船の影を嫌うことから脚立を立てて、それに乗って釣った。シロギスよりも断然大型になり、引きも強いということで人気があった。釣期は春から夏。長竿にエサはスナメ。この東京湾ならではの釣りもアオギスが姿を消すとともに昭和30年代後半には徐々に姿を消し、昭和40年代に完全に終わってしまった。

    歴史・ことわざ・雑学など

    絶滅危惧種 今では絶滅の危機が叫ばれている。
    東京湾 東京湾では釣りの対象魚として人気があったが、すでに絶滅したと思われている。

    東京湾の脚立釣り 東京湾ならではの脚立釣りは江戸時代より続く伝統釣法である。昭和38年7月(1963)、海苔、貝の漁場である十万坪でのアオギス脚立釣りの光景。港から脚立と釣り人を乗せて次々に釣り場を巡り、脚立を設置して、釣り人を下ろしていく。昼になると船宿から弁当を取り寄せるなど、長々と海の上での釣りを楽しんでいた。(写真は浦安市郷土博物館 所蔵のものをお借りした)
    ■詳しくはコラムへ。

    参考文献・協力

    『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)
    『魚類学 下』(落合明、田中克 恒星社厚生閣)、『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)、『江戸の釣り』(長辻象平 平凡新書)、『海トンボ自伝』(吉野熊吉 論創社)、『魚』(田中茂穂 創元社)

    地方名・市場名

    ドウショウギス
    場所広島(備後) 参考文献 
    サンネンビエ[三年びえ] ロクネンヒエ[六年ひえ] ゴネンビエ[五年びえ] ヤギス
    場所東京湾 備考釣り人の間での呼び名。 参考文献 
    アオギス アヲギス
    場所東京湾、福岡県門司瀬戸内海側 備考東京湾では釣り人の間での呼び名。 参考文献 
    ヤギス
    場所東京湾周辺 サイズ / 時期小型 
    ギス
    場所大分県中津市 
    カワギズ[蒼きす 皮ギス 皮ギス 河ぎす]
    場所東京湾(江戸湾) 参考津軽采女(1667~1743)の『何羨録』 
    ロウソク ナカネ カラカサ[唐傘]
    場所徳島県 備考20cm前後をロウソク、30cmほどをナカネ、40cm前後をカラカサ(唐傘)。 
    ボラギス
    場所東京、東京湾 参考文献より。 
  • 主食材として「アオギス」を使用したレシピ一覧

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