アブラツノザメ
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珍魚度・珍しさ | ★★★ がんばって探せば手に入る |
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魚貝の物知り度 | ★★★★ 知っていたら達人級 |
食べ物としての重要度 | ★★★ 一般的(流通量は普通) |
味の評価度 | ★★★★ 非常に美味 |
分類 | 顎口上綱軟骨魚綱板鰓亜綱サメ区ツノザメ上目ツノザメ目ツノザメ科ツノザメ属
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外国名 | Pacific spiny dogfish, North pacific spiny dogfish
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学名 | Squalus suckleyi (Girard, 1854)
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漢字・学名由来 | 漢字 油角鮫 Standard Japanese name / Aburatunozame 由来・語源 内臓・皮などから肝油(あぶら)をとっていたため。 東北ではネズミザメと比べて脂があり、煮ても硬くならないので「アブラザメ」と呼ばれていた。これにツノザメ科であることを表すために「ツノザメ」をつけたもの。という説もある。 『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)にツノザメ科ツノザメ属アブラツノザメ。 『魚』(田中茂穂 創元社 1940)に〈東京で單にアブラザメと云うが、此魚は東京でも何處でも少いものである。……仙臺や岩手縣方面でアブラツノザメというのは澤山の漁獲があって、頗る大切なものであるから、此大切なアブラザメにアブラザメ(現アブラツノザメ)の通名を、東京でのアブラザメにエドアブラザメの通名を與へる事とし……〉がある。 新潟県上越市には東北などのものが東京を経由して送られているので、同じように「棒ざめ」である。上越市・妙高市では「棒ざめ」がアブラツノザメの種名であるかのように使われている。 〈江戸にて一種○ぼうざめと云有 下野宇都宮辺にては○さがぼうとよぶもの也〉 「さがんぼ」は「棒ざめ」の形が軒先に下がるつららに似ているため。「さが」=「すが(氷)」もしくは「さが」=「つららのように軒から〝さが〟る」という意味合いもあるのだろう。本来は茨城県の呼び名で、消費地の栃木県でも「さがんぼ」になる。 Girard Charles Frédéric Girard (シャルル・フレデリック・ジラール 1822年〜1895年)。フランス生まれ。アメリカに帰化。スミソニアン博物館で魚類標本、爬虫類を研究。 |
地方名・市場名 |
概要
生息域
海水魚。大陸棚、大陸棚斜面の表層から水深900メートル。
日本海以北、太平洋側では相模湾以北。ベーリング海。全世界の寒帯から温帯域。
生態
春には餌を求めて北上、寒い時期には南下する。
卵胎生。
交尾期は冬。
妊娠期間は18ヶ月〜22ヶ月。
出産も冬。
60〜70cmになるのに10年以上、1mになるには40年近くかかる。
基本情報
北半球の寒帯から温帯域にいる中型の鮫。国内では主に北海道・東北太平洋側で水揚げされている。北海道、青森県などでは釣りなどで盛んに漁獲している。サメ類ではもっとも漁獲量が多い。
浜で皮を剥き、頭と内臓を取り去る。これを棒ザメという。
関東にもたくさん送られてきており、古くは棒ザメで作るサメの煮つけは都内でもよく食べられていた。都内では定番的大衆魚だったが、やや「お高い」といったもの。例えば「もうか(ネズミザメ)」と比べると贅沢なものであった。
また栃木県、茨城県・群馬県の一部では日常的にも、年取魚(正月用の魚)としても人気がある。新潟県上越市でもよく食べられている。
今でも根強い人気があるが、棒ザメを切身として売る店も、買う人も減少傾向にある。非常に味がよく万人向きの食材、もっと人気が出てもいい。
練り製品の原材料ともなり、すり身としては高価である。また近年高鮮度化も進められている。
珍魚度 青森県などでは漁業対象となっているので、珍しい魚ではない。ただし産地で皮を剥かれることが多いので、丸のまま手に入れるのはとても難しい。
水産基本情報
市場での評価 関東には棒ざめになって入荷してくる。福島県などの底曳ものは安いが、青森県の釣りものは、やや高値。
漁法 延縄漁
主な産地 青森県、北海道、宮城県、福島県など。東北北海道
選び方・食べ方・その他
選び方
棒ざめは身が盛り上がった、硬いもの。また血合いが赤いもの。
底曳網のものより釣りものの方が上質。
味わい
鮫肌で皮を剥いてから料理する。骨は柔らかい。
卵巣はピンポン球のようで、卵黄だけの鶏卵のよう。
やや白いが、熱を通すとサメだとわからない。
卵はクセがなく鶏卵の黄身だけのようだ。
オムレツやチヂミにしてとても美味。
栄養
肝臓にはビタミンAが豊富で肝油をとるために漁獲されていた。
危険性など
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食べ方・料理法・作り方
好んで食べる地域・名物料理
さがんぼ(さが) 福島県中通りでは「正月を中心にむき身を串に刺して、焼いたものをわらづとに刺して売りに来た」。一回に一匹、一年に三回〜四回買い、焼いたものは、「もう一度焼き直して食べる」、「砂糖としょう油で煮て食べる」。『ふくしま食の民俗』(近藤榮昭、平出美穂子 歴史春秋社)
棒ざめ 東京都など関東周辺、神奈川県北部、山梨県、新潟県上越市・妙高市など。「むきざめ」などともいう。アブラツノザメの皮と内蔵を取り去ったものの名称。切り身にして魚店などで売る。一般的に煮つけにする。
焼きざめの煮つけ 焼きざめを甘辛く煮つけたもの。[福島県会津地方、宮城県]
さめのぬた 切り身をゆでて細かく切り、大根下ろしで和えて、すみそを添える。また単にゆでて切ったものを酢みそで和える。青森県青森市、弘前市、黒石市などで作られている家庭料理。
むきさめ 福島県南会津、会津、猪苗代などではスーパーでも普通に売られている。需要がある模様。
加工品・名産品
釣り情報
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歴史・ことわざなど
ぼうざめ 〈江戸にて一種ぼうざめと云有〉『物類称呼』(越谷吾山著 安永4/1775 解説/杉本つとむ 八坂書房 1976)
青森市の市場で 青森市内の市場ではむき身だけではなく、頭部まで並んでいて、思わず立ち止まってしまう。
焼きざめ 1987年宮城県塩竃の市場で「焼きざめ」を買い求めている。これもアブラツノザメだと思われる。
ウナギ稚魚の餌 水産総合研究センターは4月8日にウナギの完全養殖に成功したと発表した。成功の一因がアブラツノザメの卵を幼生のエサに用いたためと、している。
地方名・市場名
参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 場所宮城県気仙沼、東京都
参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 場所宮城県男鹿
参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 場所富山県黒部市生地
備考昭和12年、13年頃大漁が続く。これを「焼きフカ」にして島根県・広島県県境の町村で売った。 参考『郷土石見』(石見郷土研究懇話会) 場所島根県浜田市
備考棒ザメ(剥きザメ)=アブラツノザメということ。 参考表示・聞取 場所新潟県上越市・妙高市
備考棒ザメ(剥きザメ)=アブラツノザメということ。 参考聞取、『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 場所新潟県上越市・妙高市、東京都など関東
備考棒ザメの転訛ではないか。 参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 場所東京
参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 場所東京都
参考『魚河岸の魚』(高久久 日刊食料新聞社 1975) 場所東京都東京市場
参考武井ちひろさん 場所福井県坂井市三国町
参考福島水試 場所福島県、茨城県大洗
備考標準和名。 参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 場所秋田県象潟
参考福島水試 場所茨城県那珂湊・川原子(河原子)
参考茨城県産魚観の万言について 場所茨城県鉾田市旭村
参考『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂) 場所鳥取県赤崎
備考青森県、岩手県など東北地方を中心にアブラザメ。東京ではエドアブラツノザメのこと。 場所青森県、岩手県、福島県など東北地方、栃木県宇都宮市今里町・日光市今市・真岡市
備考サガ、サガンボ。形が軒先に下がるつららに似ているため。「さが」=「すが(氷)」もしくは「さが」=「つららのように軒から〝さが〟る」という意味合いか、不明。福島県と栃木県の呼び名が同じなのは、栃木県のアブラツノザメの供給地が茨城県、福島県だったためだと思われる。また『物類称呼』(越谷吾山著 安永4/1775 解説/杉本つとむ 八坂書房 1976)に下野国宇都宮辺にて「さがぼう」と云う。 参考聞取、文献 場所福島県中通り地方、栃木県宇都宮市今里町・日光市今市・真岡市、茨城県常陸太田市
参考文献より。