202403/08掲載

ウナギの旅(仮題)編集日記 鄙には希な南会津のウナギ屋

ぜんぜん期待しないでのれんをくぐった

ウナギ屋

普通人のための極初歩的なウナギ本を作ろうとしている。いざやりはじめるとあくまでも、一般常識的なことだけで終始したいと思っている割りに時間がかかっている。画期的な書籍にしたいからだ。
10年ほど前から日本全国ウナギの旅というのをやっていて、47都道府県もあと2、3県残すだけになった。
基本的にネット情報は使わず、市場人(市場の従業員だけではなく、仕入れに来ている人達も)の情報で、ということで終始している。ようするにおいしいウナギ屋巡りにはしたくないのだ。ところがどっこい市場人に教わるウナギ屋はみなうまい。
「会津若松においしいウナギ屋があり、南会津にもある」というのは宇都宮市の市場で会った方に聞いた話で、実を言うと、会津若松市の公設市場の方に念のために聞くと、「会津若松にはあるけど、南会津はないでしょう」と言われている。
今回、会津に別の魚のことで行くついでにネットで調べたら、専門店ではなく、ウナギが主役だけど丼ものも出すという店があった。
せっかく通り過ぎるのだからと、のれんをくぐってみたら、蒸し器から湯気が立っている。とすると関東風となる。
ちなみに東日本では、東京などで修行して生まれ故郷に店を出すというのが基本であり、そのあと無効分散(1代で終わる)か繁殖できるか(代々続くか)などと考えるのがとても楽しいのだ。

みごとなうな重が目の前にきて我を忘れる


この南会津のウナギ屋は丼ものもあるが、ほぼウナギ専門店であり、東京風の蒲焼きを出す。
しかもしかも非常においしいではないか?
ウナギ専門店に限っての話だが、蒲焼きのよしあしは約4割が焼き方、2割がご飯、2割がタレの味、後の2割がウナギの質で決まると思っている。このどれもが平均点以上である。
会津若松で修行して、田島に店をかまえて60年になるという。
この店なら東京という、まるで「ウナギにとっての干潟」のような競争の激しい場所にあっても生き延びていけそうである。
あまりにもうまかったので、吸物をお願いし忘れた。
さて、南会津町は人口2万人足らずなのに非常に広い。大きな市街地があるのが会津田島地域のみと言ってもいい。
この田島になぜ、こんなにうまいウナギ屋があるのか? たぶん酒蔵が多いためだと思っている。
会津には猪苗代湖という大きな湖がありウナギ漁も古くから行われているが、天然ウナギがとれるだけではウナギ屋はできない。
同じ会津地方の会津若松には明治創業の老舗があり、こちらも素晴らしいウナギを出す。当たり前だけど会津若松も酒蔵だらけなのだ。もっと話を広げると、会津への入り口、郡山市は、ウナギ屋があるなんてものではなく、国内屈指のウナギどころなのだ。
酒どころ、ウナギどころと言えば、例えば高知県はウナギの産地なのに、ウナギ通に言わせると、出色のウナギ屋は一軒しかない。その一軒は大きな酒蔵のある町にあるという。(まだ行っていないけど。まだ健在なんだろうか)。
さて、早くウナギ初心者のための本、ウナギの旅、早く作らなければならぬ。


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